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青の銀竜-ドラグニア-  作者: 弓削タツミ
━旅立ち篇━
13/55

『勇者』の邂逅



 ──港町『スプリングゲート』同日同時刻──



 勇者ベアトリーチェ・シュナウザーは、町の人達に聞き込みをしていた。

 目的はつい先程、大陸の中心部からこの町に辿り着いたと言う『勇者』に会う事だった。

 幸いにも漁師の男性らしき人物は快く『勇者』の情報を提供してくれたのだった。


 「あぁ、『勇者』様なら町の宿に泊まってるよ。」

 「ありがとうございます。これは情報料…と言う訳では無いのですが、旅に使う薬の一部です。良かったらお受け取り下さい…。」

 「いやぁ、そんな高価な物…受け取れねぇよ!大体、あっちの『勇者』様の居場所くらい、誰だって知ってるぜ?」

 「いいえ、これで奥様が良くなるなら是非とも受け取ってほしいのです。」


 どうやら漁師の男の奥様が、何やら病気を患ってるらしい。それを聞いたベアトリーチェは、丁度病気に効く薬が手元に有った事を思い出してこの男に受け取らせたのだ。

 それは優しさから────等では決してなく、打算からでもなかった。…かと言って勇者としての使命感や義侠心からかと言えばそうではなく。


 『勇者たるもの常に人々の模範たれ。』『勇者たるもの困ってる人が居れば手を差し伸べよ。』───と言った強迫観念と、自己満足感から来る物であった。


 こうして薬を受け取らせ、満足したベアトリーチェはその足で例の『勇者』の下へと向かったのだ。



 ───所変わって『勇者』が泊まる宿屋。

 例の爆発で焦げた服を洗濯する少年が居た。彼の見た目は茶色がかった髪はツンツン立っていて、瞳は黒く地球で言う所の日本人の顔立ちをしている。服はファンタジーらしい布の服に赤いケープ。ベッドのへりには日本刀がぶら下がっている。どうやら見た目は初心者冒険者と言った所だろうか。


 その少年の仲間らしき女性が三人居た。

 一人目は人間種で、190cm程の大柄。燃える様に赤い髪、後ろで腰まで結んだ三つ編み。腰には鞘に納まった長剣を差し、巨大な戦斧を武器として担ぐ勇猛女傑アマゾネスと言った容貌の筋肉の鎧と高身長の美女だった。頭には髪を纏めるバンダナを巻き、はち切れん程の巨乳は、申し訳程度のビキニアーマーに隠され、砂塵避けの外套マントを羽織っていた。

 その女性は静かに柱にもたれ掛かり、腕を組んで目を閉じている。どうやら歴戦の戦士らしい。


 二人目は金色の髪をお団子にして、目が赤く肌が青い。まるで中華で言う所の僵尸きょうしの様な容貌だ。胸は無いらしくペタンコで、両手の袖は長く太い。しかし見た目は幼い少女の様で16歳前後の150cmも有るかどうかの背の高さだ。

 ただし、本物と違うのは自意識が有り、御札等で制御されてない点だろうか。普通に喋っている。後、両足を揃えてピョンピョン跳ねない。


 そして最後に三人目は、どうやら古木の杖を持っている様子から察するに、魔法使いの様だった。身長は160cm前後だろうか。

 見た目は肌が白く、髪は薄紫色で髪の一部が赤く、両目は金色だった。耳はエルフの様に尖っていてそのままエルフを連想させる。………のだが、額からは一本の捻れた漆黒の角が生えていた。

 服装は頭にキャスケット帽子を被り、そこそこ膨らんだ胸はサラシを巻いて隠され、その上から裾の短いボレロの様な物を着込み、正面は全開に開いている。ショートパンツに白いニーソックスを穿いている姿は、現代日本人の趣味に近いだろうか。

 そして背中には黒い鳥の羽根が生えていた。おしりから鱗の付いた尻尾が生えているようだ。もしかするとキメラなのだろうか?


 この三人は、日本人らしき少年にアレコレと好き勝手言っていた。


 「ほらほらショーリ!さっさと洗ってご飯に行きますよ!もうボクはお腹ぺこぺこなんですよぉ!」


 ショーリと呼ばれた少年の腕を、名乗る角の生えたキメラの少女がグイグイ引っ張る。


 「うるせええええええ!リーラ!お前があんな所で口からレーザーを撃つから巻き込まれた俺が苦労してんだよ!もうお前が洗えよ!」


 ショーリの怒りの言葉にリーラと呼ばれたキメラの少女は怯む。

 しかし、その光景を赤髪の女傑が許さない。


 「普段から巻き込まれない様に鍛えろといつも言ってるだろう、素人。そんなに元気が有るなら今から鍛えてやろうか?」

 「いや、いい。タリアだけでやってくれ。いや!いや!やめてえええ!!」


 どうやら強制連行の様だった。タリアと呼ばれた女傑は少年ショーリに刀を持たせたまま連れて行ってしまった。


 「全く、ショーリハいつも嫌ナ事カラ逃げるカラこうなル。」

 「じゃあ、ボク達だけで行く?」

 「リーラノ奢りなラ、マオマオハ構わなイ。」


 マオマオと名乗る僵尸の少女は、掠れた声で喉から声を出していた。そしてドヤ顔で光の宿らない赤い瞳をキランと光らせた。

 リーラは半泣きでお財布の心配をするのだった。



 ───そんなショーリ達の日常に、招かざる客がやって来たのだ。



 「失礼ながら、貴方がたが中央からやって来た『勇者』様ご一行様………でしょうか?」


 軽装の旅人服に身を包んでは居る物の、スカート状のクロースアーマーを身に纏う姿からは、何処か気品を感じさせる少女がショーリ達に声を掛けた。

 見た目は17歳か18歳程だろうか?身長は160cm前後の様に見える。美しいフワサラな金髪に高貴さを感じさせる碧眼の瞳。顔立ちは美しく美少女と言って差し支えない。因みに胸は大きい。タリア程では無いが、今後が期待できる大きさだったりする。

 正統派美少女である貴族の娘の様な少女が、『勇者』を訪ねて来たのだから、タリアにしごかれ、地面にめり込んでいたショーリはすぐに立ち上がり、この貴族の少女へとうやうやしくお辞儀をするのだった。


 「やぁ、素敵なお嬢さん。僕が『勇者』のショーリです。僕に用が有るのでしたら是非ともそちらのお店で伺いますよ。」


 ショーリはとんでもなく気持ち悪い程に格好付けて、少女を食事に誘うのだったが…。


 「はぁ、申し訳有りませんが、わたくしも供を待たせておりますので…。失礼ながら、『勇者』様と拝見出来る証明はございますか…?」


 「ふふふ、それでしたら…。ステータス!」


 ショーリの目の前に薄透明な光のプレートの様な物が浮かび上がる。所謂、ステータス画面と言う物だった。実際に、ショーリの名前から体力、魔力、力、………等、様々なステータスが表示されていた。

 もっとも、このステータス画面に表示された言語はこの星の住民に読める物では無いのでショーリはタカを括っていたのだが………。



 「なるほど、神がもたらした虚空の板。………と呼ばれて居ますわね。」

 「ふっ、お嬢さん。申し訳ない…。この文字は神の国の文字なので、お嬢さんにお教えする事は出来ないのですが、この通りに僕が勇者としてこの世界に招かれた証明になりましたよね?………と言う事で、良ければ今日は僕にお時間を戴けないですか?」


 そう言い終わるのを待つ前に、貴族の少女はブツブツと呟いた。


 「名前:大宮おおみや 翔凛しょうり、職業:盗賊。レベル5、体力74、魔力20、力23、守17、耐14、知32、速21、運999、スキル:盗む、ナイフ投げ、ヒールI、統制II────。


  称号:『旋風の勇者』───。」



 ────瞬間、貴族の少女の眼前を巨大な斧が通り過ぎた。

 否、貴族の少女は斧の軌道を読み切り避けて居たのだった。

 更には炎のレーザーを照射され、鎖に繋がれた棘付き鉄球が少女に降り注いだのだが。


 貴族の少女はレーザーを魔法陣によって空へと逸らし、棘鉄球の鎖を踏んでめり込ませていた。 

 この眼前に迫る脅威に対して、ショーリのズボンを剣の鞘でぶら下げて退避させた赤髪の女傑は、敵意を剥き出しにして警戒をする。



 「名乗りな。アンタは魔族かい?それとも竜族のクソッタレかい?」


 女傑の問いに貴族の少女は溜め息を吐いて呆れていた。


 「そんな訳無いでしょう。わたくしは列記とした人間ですわ…。ただ、貴方がたより遥かに強いだけよ。」


 その言葉に、女傑はピキピキと全身の筋肉が強張り、魂の底から闘気の様な物を噴き出し、全身から赤い湯気が立っていた。


 「ただの人間のお嬢さんが、お前みたいな化物の筈が無いだろうが!───今名乗れば苦しまずに殺してやる!!」


 女傑の荒い闘気を受け流して、尚且つ涼し気な表情のまま、少女は名乗るのだった。


 「申し遅れました。わたくしの名前はベアトリーチェ・シュナウザー。


  ───『星の勇者』でございますわ。」




 ショーリ達『旋風の勇者』一行に、緊張が走った──。



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