おまけ:教会の秘密は暗殺と死の街
※ マリーとヴィルマの何でも講座 ※
「はーい。私はマリー!」
看護士と修道女が混じった様な格好をした明るそうな少女がいる。
「私はヴィルマ!」
同じ格好をした意思の強そうな少女がいる。
「「二人は『マリー隊』よ!」」
「二人とも四日目から出演するわよ」
「待っててね。因みに作者が一番好きなキャラはヴィルマよ」
「あら、光栄ね」
「もー、もっと喜びなさい。ふふふ、では、まずはコチラをご覧下さい」
「世界の敵のミクトーランが最初に観測されたエピソードよ」
◇◇◇ 帝国暦 百七十八年 パスカーレ近郊
「私の功績を横取りした上で破滅させようとするとは粋な事を考える」
屋敷の外では怒声が響いている。
「教会が粗暴な傭兵と契約とは……」
呆れた様な物言いだが、薄ら笑みを浮かべてはいる。ゆったりと窓を開けて外を見る。
「いたぞ! あの部屋だ!」
「三名を小隊として進め、罠に気をつけろ」
装備がそれなりにしっかりしている二十名ほどの男達が屋敷に乗り込んで来る。手練れの傭兵部隊なのだろう。
「行け、朝までに片付けろ、急げ!」
護衛数名と隊長らしい者以外は屋敷に入った。
あいつが傭兵どもの親玉か。顔を覚える。
「裏を固めろ! 逃すなよ」
思ったより指示も的確だ。
「全く趣が無い。悪役なら悪役としての矜持を忘れては困る」
今度は心から不機嫌そうな顔になった。
「もっと罵声を叫ぶとか、顔に傷があるとか、酷い臭いをさせるとか、有るだろう……」
窓を静かに閉める。ブツブツと独り言を呟きながら扉を開けて廊下に出る。
「さぁ、私の破滅を望む者には、相応の対応をしないとな」
下の階は騒がしい。
気にせず廊下を進み階段を降りる。降りた頃には辺りは静まり返っていた。
静寂に包まれた廊下を進みまた階段を降りる。一階まで来ると一直線に表の扉へ向かった。
そして扉を開けながら、ご機嫌の声色で挨拶をする。
「やあやあ、御機嫌いかがかね。名乗らなくても名前は知っているだろうから良いかな」
屋敷内の喧騒が止み、任務終了かと思ったがあまりの静かさに不安になり、三人でどうするかを話していたところだった。
そこに襲撃の対象が現れたのだ。
「部下はどうした! 何故お前がここに居る‼︎」
柔和な雰囲気を崩さず返答する。
「屋敷に無断で入ってきた男達のことか? 全員床に倒れていたよ。まぁ、死んでいるとは思うがね」
男に邪悪な笑みが浮かぶ。
「貴様! 戯言を語るなっ!」
両隣の護衛二人が剣を抜き襲い掛かる。
「落ち着きが無いな、全く……」
慌てるそぶりもなく僧服の埃を手で払いながら話しかける。
「土埃が多いな。そうは思わないか?」
二人が剣を振りかぶったところで動きがパタっと止まり、そのまま地面に倒れ込んだ。
悲鳴一つない。
「雨がもう少し降らないと埃が舞うので実験に気を使うのだよ」
「貴様ぁ……宣教師のふりをした悪魔め!」
最後の一人となった男が剣を抜く。
「部下の仇だ。刺し違えても倒す!」
しかし足を一歩進めた所で体が全く動かなくなる。
「な、何だ、動かぬ!」
「君には首謀者を教えて貰わないとな。誰の指示だ?」
穏やかに問い掛ける。
「い、言うと思うか、悪魔め!」
小瓶を懐から出し封を開ける。
「言うよ。お前の魂に直接聞くからな」
小瓶を男の鼻先に持って行く。
「な、何をす…がっがぁぁー、やめろっ何をしたー!」
男がガタガタと震え始める。
「もう一度聞く。首謀者は誰だ?」
「がぁぁー、ぐっぐがぁー、し、知らないっ! 聞かされていない! 止めろ、止めてくれー!」
男の鼻と目から血が噴き出す。無視して質問を続ける。
「もう一度聞く。誰が首謀者だ」
「ぐげっ、や、止めてくれ、知らないんだ…」
少し考えていたが、ぽんっと手を打った。
「やはり、あの教皇二人か。全く……恩を仇で返されるとは屈辱だな。ふふふっ」
くるっと振り返り屋敷の方に歩き始める。隊長格の男は血が噴き出している目を向けて叫ぶ。
「お、俺は喋っていない、何故だー!」
振り返らず「魂に聞くと言った」とだけ言って屋敷に入って行った。そこかしこに血まみれの死体があるが、自室に戻り地図を見る。
「早速出向くとするか……」
旅の準備をして玄関から出る。男は立ったまま絶命していた。見もせずに、そこには最初から何も無かったかのように通り過ぎて行く。
◆◆
翌日の早朝、シュルナイテの街の大教会の教皇室にその男はいた。
「な、な、何故、お、お前がここにいる!」
まだベッドにいた老人が慄き喚いている。
「恩を仇で返すような事をされれば、温厚な私でも少しは怒りますよ」
「貴様、どうやってここに!」
男は首を横に振り語る。
「そりゃ歩いてきましたよ。あんな辺鄙なところに幽閉されたので、思ったより時間がかかりました」
少し不機嫌そうに呟いたが、急に機嫌が良くなり近付きながら続ける。
「そうそう、これからは私のことを『ミクトーラン・シワトル』と呼んでください。人の名は捨てました。まぁ、少し長いのでミクトーランでも良いですよ」
「み、ミクト……ラン……、ミクトーラン? な、何だそれは!」
ベッドにそっと近づき小声で話す。
「私は人を超越したと思いませんか? ですので異界の神の名前を頂戴する事にしました。そうそう。シュルナイテの街の衛兵は住民もろとも全て死に絶えました」
何を言っているのか理解ができない老人だったが、唐突に怯え始めた。
「なっ⁈ ま、まさか……」
「今、この街で生きているのは、あなたと私だけですよ。街で動いているのは私の不死の軍勢になって貰いました。尊い犠牲ですよ」
「き、貴様ぁ、何と言う事を……」
「では、さようなら。今回は名前を変えた事をお伝えに、と思いましてね」
「名前……それだけの為」
「そうそう。もう一つ。マリタ・ホープを借り受けました。研究に役立てられるのは私くらいでしょうから。では、さようなら」
一点の曇りも無いクリスタルを懐から出して見せつけた。
老人がハッとして慌て出す。
「待てっ! そ、それがあればこの街の人々を復活……」
「では、どうぞ」
ミクトーランと名乗る男はクリスタルを老人に差し出した。
「な、何故……」
「あなたの祈りをマリタ・ホープが受け入れるとは思えない」
「なっ……バカにするな!」
呆れた様に男は老人に告げる。
「一時間待ちます。私に奇跡を見せて下さい」
一時間後、ミクトーランは項垂れる老人を残し部屋を出た。教会を出る頃に、窓から教皇と呼ばれた老人が身を投げた。
「ふん、あと一人か……」
そして街から姿を消した。
事態を察知した教会騎士が来たのは数日後のことだった。無数のアンデッド化した街の人々を避けて教皇室に辿り着いた探索隊は机に手紙が一通置いてあるのを見つけた。
『悪魔ミクトーランが街の全員を殺した』
としか書いてなかった。
※ マリーとヴィルマの何でも講座 続き ※
「怖いわねー」
「そうね。前回のオマケ回のセルマとアルマが、もう降板って怖いわ〜」
「いや、マリー、そうじゃ無くて……」
「ふふふ、分かってるわよ。ミクトーランの説明よ。最初、ミクトーラン・シワトルと名乗ってるけど、これはアステカ神話の冥府の女王よ。死者の骨を使役すると言われてるわ」
「実は、この男は別の名前も名乗ってるのよ。話には出て来ない裏の事実よ。最初の街でミクトーランを名乗ったけど、次の街では『ネルガル』を名乗ってるの。名前を聞いた住民全てが死んだので歴史に残らなかったわ」
「他にも『イシュタム』や『ワルキューレ』も名乗ってるのよ。コロコロ名前を変えるので、教会は最初に確認された『ミクトーラン』と呼ぶ様にしたのよ」
「女神が多いわね。男の娘に憧れがあるのかしら」
「前回のオマケの時が二十歳としても五十八歳よ。LGBT的に問題あるけど……気持ち悪いわ」
「そうね。余計に怖いわ。モテないわね、絶対」
マリーが軽く咳払いをしている。
「さぁ、そろそろお時間よ。三日目は楽しいコスプレ回でした」
「ホント? リアちゃん結構なダメージ受けてたわよ」
「あら、四日目は更に重苦しいわよ。でも私達の出番だからがんばるわ。あなたも頑張って読み進めてね」
二人が仲良く手を振っている。
「「それでは、またねー!」」
★一人称バージョン 2/7★




