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第二十六話【三日目】色とりどりの縫目に彩られた③

◇◇◇ 行方不明の三日目の昼前


 下級貴族向け寄宿舎(リアSide)


「こちらで皆と生活をしてもらいます。セルマとアルマ、案内をお願いします」


 如何にもシスターといった優しそうな修道女が寄宿舎に案内してくれた。ここで案内はバトンタッチらしい。入り口の前には背の高いボーッとしている修道女と、背は低いがキリッとした修道女の二人のが立っていた。


「セルマです。こっちの大きいのがアルマよ」


 背の低い子がセルマ、高い子がアルマ、ね。

 二人に続いて安宿と同じ感じの雰囲気の建物に入ると、そこには何十人もの女の子達が居た。

 あれだな。合同合宿みたいだ。掃除をする子、お話に夢中な子、寝てる子、指示する子に指示されて不貞腐れる子。あっ幼稚園児くらいの子もいるー! わー、可愛い!

 んー、じゃあ、大体雰囲気は掴めたぞ。


「初めまして。リア……と言います」


 家の名前は言っちゃダメだよな。ギリギリ思い留まる。


「慣れない場所なので色々と教えてください。何でもお手伝いさせてください」


 両手を後ろに応援団の様に少し上を向いて、かなり大きめの声で挨拶する。最初が肝心!

 会話が止まり一瞬の静寂。で同じ位の年齢の子達に囲まれた。


「初めまして。どこから来たの」

「私はマヤよ。お友達になりましょう」

「初めまして。そのローブの光沢綺麗ね。一度着させて」

「初めまして。私はフレイヤ。帝国出身よ。あなたは?」


 一斉に話しかけられる。戸惑うがこういうのは嫌いじゃない。笑顔で一人ずつ丁寧に答える。そりゃ興味津々よねー!


 話に夢中になっているところで「そろそろお止めなさい。手仕事が止まっているわ」と注意される。


 先生……というより先輩だな。じゃあ姿勢を正して大きな声でいこう。


「すいませんでした! ご指導よろしくお願いします」


 軽く一礼する。


「……分かれば良いのです。こちらにいらっしゃい。部屋を案内します」

「あー、ずるいー。セルマ、独り占め良くないわー」


 群がっていた子達からクレームが出るが気にしない。


「では手仕事を終わらせた者からリアさんとお話しすれば良いでしょ? さぁ仕事に戻りなさい。終わらなければ昼休みは無しよ」おぉ、手厳しい。

「私はアルマ。こっちの偉そうなのがセルマよ」

「偉そうは余分よ。もうっ! これでも二人で指導員をさせて貰っているわ」


 大きい方がおっとりしているように見えて中身はキツそうだ。


「はい。アルマさん、セルマさん、よろしくお願いします」とニッコリ返す。

「はい。アルマ共々よろしく」

「それじゃあ案内を再開しましょう。セルマ、よろしく」

「じ、自分でもやりなさいよ……もぅ!」


 大きな部屋に大きなテーブルが二卓。片側で十人程度が楽に座れそう。


「食堂と作業場です。後は共同体の時間も大体ここに居るわ。各自で勉強したり、話をしたり」


 三十人は居なさそう。ぎゅうぎゅうでは無いわね。中学の時のお寺合宿より快適そう。


「就寝は幾つかの部屋に別れます。個室では無いのよ」


 セルマがため息を吐いてる。個室が良いんだろうな。


「寝るまでのひと時を一緒にお話しするのは楽しいのだけど……うるさい子だとずっと喋って寝かしてくれないのよね」


 寂しいんだろうけど、と呟く。


「セルマも寂しん坊だもんね。今でも偶に部屋で一人の時は泣いて……」

「うるさいっ。アルマ、貴女は最初はやたら高圧的だったわ。慣れない場所だから強がってたのよね〜」

「……泣き虫」

「何よ、威張りん坊」


 おぉ、一触即発だ。でも羨ましい。シャーリーとわたしにイメージが被る。少ししんみりする。


「あぁ、リアさん見苦しい所をお見せしてすみません。案内を続けましょう。アルマ、行きますよ」


 十分ほど案内は続いた。就寝時は四人部屋に三人ずつ位。毎週くじ引きで部屋を決めてるらしい。ふふ、楽しそう。

 トイレとお風呂は別棟で共同。全体で数百人の少年少女が共同で生活しているらしく、庶民、下級貴族、上級貴族と分かれているらしい。で、ここは下級貴族向け。だから設備もそれなりに整っているという事ね。庶民向けだと大部屋のベッドで雑魚寝。もっと人数も多いらしい。


 あれっ? ということはシャーリーは上級貴族なの?

 わたしもホントは上級貴族の筈だけど……まぁ良いか。ここ楽しそうだし!


「もうすぐミサがあるの。リアさんも着替えて。特別な時以外はこのローブを着るのよ」


 割と生地は良さそう。肌着も貰えるのね。


「ミサもローブで良いの?」

「午後からのお勤めは別の服だけど、昼のミサは普段着での参加よ。髪は簡単にまとめましょう」


 セルマが後ろから背伸びしてわたしの頭に白い頭巾を巻いてくれている。少ししゃがんであげることにした。


「ミサは表の大聖堂では無く別の建物で他の場所の修道士や修道女と合同で行われるわ。ここでお勤めしている者は全員出席よ」


 では、そこでシャーリーと合流できそうね……よしっ、先ずはここの生活を楽しむわよ。

★一人称バージョン 1/31★

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