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第二十話【三日目】冬の観覧式の主役になっちゃうよ

◇◇◇ 行方不明の三日目の朝


 セント・ザズーイの騎士団事務所の牢獄


「そこの若い女、出ろ」


 モゾモゾと起き出す。いつの間にか寝落ちしており毛布が掛けられていた。既に日の出から二、三時間が経ってるっぽい。


「はーい……」


 頭痛い。これが噂の二日酔いね。

 どーしよう。ナイアルスの関係者にバレたらもの凄い勢いで怒られるわ。


 容赦無く両手を前側で縛られる。

 うら若き乙女を犯罪者扱いヤメテー!

 怯えて挙動不審になっちゃう。謁見室で取り調べがある、と聞かされていたので『カツ丼』を想像しながら椅子に座る。


 部屋で一人で待っていると若い女性騎士と老練の熟練騎士のペアが入ってきた。二人とも向かいの椅子に腰掛けると直ぐに取り調べが始まった。


「この国には、何をしに来たんだ?」

「えーっと……(ここは正直に言った方が良いのかな?)人探しです」

「誰をだ?」

「……ラルス公爵です」

「ラルス公だと……お前は――」

「――まぁ! ホンモノのリア公女殿下なの? きゃー可愛いー!」


 驚く老練の騎士を差し置いて、若い女騎士が激しく反応した。


「えっ? ケイトくん、落ち着いて……」

「ねぇ、ねぇ、ラルス様とは何処までいってるの?」

「えっ、怖い……」

「いやーん、私ね、『リア×ラル派』なんだけど、ホントのとこはどうなの」


 えっ、ラルスが右側……受けよね。

 誰よ、異世界にこんな文化根付かせたヤツは!

 ところでラルスは受けなの? わたしは攻めなの?

 分かんないわよ!


「えーっ……ラルスったら臆病なとこあるけどー……思ったより積極的なとこもあるしー……」

「えっ、えっ、そうなの?やっぱりリアラル……」


 ケイトさんの食いつきは凄いわ。髪の毛を指でクリクリ巻きながら気怠そうに回答してみる。


「でもー、遠恋で久々に会ったら行方不明よ。どう思いますかー?」

「うーん、ちょっとヤバいかな」

「やっぱりー? 心配だなぁ」

「あっ、私ね、恋が成就する祈りの言葉知ってるよ。んとね『愛する……』」


 ここで老騎士が机を軽く叩いた。


「ケイトくん、取り調べ!」

「あっ、すみません。取り乱しましたー! でも絶対に無罪です! それ以外は認めません!」


 ケイトさん、老騎士に向かって凄い気迫よ。


「け、ケイトくん……」

「け、ケイトさん……」


 惚れそうよ!

 あっ、おまじない……。


「あの……後で、祈りの言葉を教えて下さいね……」

「もちろんよ!」



◇◇


 取り調べ(という名の恋愛相談)も順調に終わり、その頃には犯罪組織の壊滅が確認されていた。

 朝から嘆願に来ていた街の人達や救出された女性の証言とも一致しており、更にナイアルス本国からの謁見願いやリアの文鎮の紋章などもあり、あっさり解放が決まった。


 あー、ヤバかった。他国で泥酔して牢屋にいたのがバレたら、今年の冬の観覧式の主役になっちゃうとこだったわ。


 手を振りながらウキウキのケイトさんも帰っていった。また謁見室に一人残される。


「縛られた両手くらい取ってくれても良いのに……」


 早く解放してほしい。

 両腕の紐を睨みつけながら呟くことしかできない。正直焼き切るのは簡単。ただ、それをやったら本当に犯罪者の仲間入りだ。

 わたしを知った人が現れたらと思うと恐ろしいわよ!


 教会の謁見室で決まりが悪そうに解放を待っていると、突然扉が開いて黒髪長身の女の子が現れた。


「ラルスもミクトーランを追っているわ!」

「えーーっ! し、シャーリー?」


 そこには、少し大人びたシャーリー・フィフス・カーディンが、わたしの親友が居た。

★一人称バージョン 1/30★


【シャーリー】

シャーリー・フィフス・カーディン。カーディン家の五代目シャーリーの意味。この家に生まれた女の子は必ずシャーリーと名付けられる。そして代々のシャーリーの記憶を受け継ぐ。フィフスなら四代分の記憶を受け継いでいる。

英雄の家系なので実は超お嬢様。割と浮世離れしている。

この話のもう一人の主人公。


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