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SNS交流

 勉強会が終わった日の二十一時に魔法少女オンラインにログインした。

 拠点の街に操作しているキャラクターが出現する。

 途端にチャット欄に新着アイコンがついた。


 ひよこ :こんばんは!良かったら火山エリアのボス倒しに行かない?

 ナダル :いいぞ、早速行くか

 ひよこ :よし!今日はいっぱい狩るぞお!

 ナダル :いつもよりテンション高いな

 ひよこ :ふふふ、分かる?今日いいことあったんだよ。

 ナダル :何があったんだ?

 ひよこ :えー、内緒~。

 

 俺たちはテレポート石を使い、マグマが噴出する過酷な環境に生きるドラゴンが生息するエリアまでやってきた。

 いつも通りに、ひよこが操作するオレンジ魔法少女コスモスが前方に俺が操作する紫魔法少女アザミが後方の配置をとった。

 

 ひよこ :炎のブレスの範囲は広いから合図したら全力で後ろに逃げてね。

 ナダル :分かったよ

 

 コスモスがドラゴンに接近して周囲の雑魚モンスター諸共ヘイトを集める。

 

 ひよこ :全体魔法撃ってー!

 ナダル :ほらよ


 アザミが後方から魔法を詠唱し、巨大なダイアモンドがモンスター達に落ち、ダメージを与える。

 すると、ドラゴンが反り返り口元から火をあふれ出した。


 ひよこ :ブレスが来るよ!回避!

 ナダル :おk


 アザミは後方に走り範囲外に逃げ、コスモスはその場で盾を構えて防御の姿勢をとった。

 ドラゴンが口から大量の炎を前方に吐き出して、コスモスの体力を削っていく。

 俺はできるかぎりの防御バフや回復魔法をかけてやった。

 それを繰り返し数分ドラゴンは体力が尽きて倒れ、戦利品を大量に入手した。


 ひよこ :ナダル君すごい成長してるね!ブレス中に援護がなかったらやられてたよ。

 ナダル :まあな

 

 ボスを倒し、一息ついたところで、ひよこから相談を受けた。

 

 ひよこ :あのさ、ナダル君って女子から名前で呼ばれたらうれしい?それとも嫌?

 ナダル :俺か?うれしいかどうかは人によるが、嫌な気にはならねえな

 ひよこ :そうだよね!なら、良かったよ。

 ナダル :あくまで俺個人の話だがな。それにしても、細かいとこ気にするんだな。

 ひよこ :そりゃ気にするよー。どういう風に私を見てたの?

 ナダル :明るい元気っ子。戦闘中も積極的に指示だすし、積極的な性格なんじゃねえの?

 ひよこ :ううー、ノーコメントで……。ナダル君はどういう子が好きなの?

 ナダル :抽象的過ぎて答えれねえよ。強いていうならば、俺の使ってるアザミみたいな子だな」

 ひよこ :ふ~ん。紫色が好きなんだね


 そう言ってひよこはログアウトした。

 この後どうしようかと思っていたら、ゆりきちがログインしてきた。

 

 ゆりきち:あれ?今日はナダル君しかいないの?

 ナダル :さっきまでひよこがいたぞ

 ゆりきち:ちょっとログインするの遅かったか~。まぁいいや、私もうちょっとでレベル上がるから適当に付き合ってよ。

 ナダル :暇だしいいぜ


 俺とゆりきちは草原エリアでひたすら雑魚モンスターを狩り始めた。

 このエリアはたまに金色のモンスターが出現して大量の経験値をもらえるためレベル上げに適している。 

 ゆりきちの使用しているキャラは黒いローブに包まれた美少女ビオラだ。

 見た目通り、黒魔術を使うことで相手に呪いをかけるのを得意としているが、技構成がデバフメインなためレベル上げに時間がかかるクラスだ。

 黙々と俺が範囲魔法で雑魚を倒し、目当ての金色モンスターがでてきたらビオラも参戦する。


 ゆりきち:おっ、出たよ金色モンスター!

 ナダル :よし、逃げられないようにデバフかけろ

 ゆりきち:分かってるよー。

 

 ビオラが、鈍足魔法を放ち金色モンスターの移動速度が急激に落ちる。

 そこに、アザミが単体魔法を連続で当てる。

 MPの関係で低威力な技しか使えず倒せないかと思いきや、ビオラが防御デバフを相手にかけていたお陰で予想以上のダメージが出て金色のモンスターは派手なエフェクトを出しながら倒れた。


 ゆりきち:やったー!レベル上がったよ

 ナダル :よかったな

 ゆりきち:うん!ありがとうー。今日は幸運続きだな

 ナダル :何か良いことあったのか?

 ゆりきち:なんていうか、このまえ話したでしょ?クラスメイトの男子のこと。

 ナダル :ああ

 ゆりきち:結構、性格もいい感じなんだ。顔もイケメンで頭も悪くないし。

 ナダル :じゃあ告白でもしろよ

 ゆりきち:まだ早いよ~。それに、仲のいい友達も彼に好意を寄せてそうな気がするし……。ちょっと、不安だよ。友情も大事にしたいからね。

 ナダル :あっそ


 あまり興味もないので、適当にあしらっていると、早々にゆりきちはログアウトしていった。

 俺も疲れたので、ログアウトしてスマホを閉じた。

 夜飯は勉強会のときに軽いもので済ましたので、風呂に入って寝ようと思っていたら、スマホからSNSの通知音がした。サブのほうではなく、最近は静かだったメインアカウントのほうだ。


 由美:グループ作りました!メンバーは、私と香織と洋一の三人ね。

 香織:よ、よろしくお願いします。

 洋一:何のグループなんだ?これ

 由美:仲良しグループに決まってるじゃん。

 洋一:それはお前らが昼休憩の時に一緒にいるやつらと作ってろよ

 由美:あれは表面的に付き合ってるだけで、本命じゃないよ。ね?香織。

 香織:同意を求めないでよ~。

 洋一:女子は裏表あるって本当なんだな

 

 どうやら、勝手に仲良しグループにいれられたようだ。

 まあ、グループ名なんて気にするもんでもないか。

 また、サブアカウントからも通知があった。


 くますけ:ちょっといいかしら。

 ナダル :なんだ?

 くますけ:悩みというか、私あまりクラスに馴染めてないの。

 ナダル :それは大変だな

 くますけ:何かアドバイスはあるかしら。

 ナダル :俺に言われてもな。この前言ってた、男子生徒に同じゲームやってるって話しかけてみろよ

 くますけ:無理ね。私はそんなゲームやってるキャラじゃないもの。

 ナダル :リアルでどういう性格してるのかは知らないが、悩んでるってことはそのキャラは失敗だってことなんだろ。さっさと、見切りをつけろ

 くますけ:面白い考え方ね。可笑しなことに少しだけ心が軽くなったわ。でも、私はそんなに器用じゃないのよ。

 

 ひよことゆりきちは良いことがあったようだけど、くますけは対照的に悪い出来事でもあったようだ。

 常にどこかで幸せになっている人もいれば不幸になっている人もいるもんだな。

 哲学的な思考にふけっていると、ピコンピコンとさっきから通知が鳴りやまない。

 

 「グループチャットが盛り上がってんな。俺がいる意味あんのか?」


 独り言をつぶやき、確認してみた。


 由美:それじゃ、私から写真送るね。

 香織:ええー。本当にやるの?

 由美:はい、どうぞ。

 

 由美がチャット欄にパジャマ姿の自撮り写真を張り付けていた。

 黒色のゆったりとした長袖に短いショートパンツ姿だ。隙間が多くて角度的にきわどい写真だった。


 香織:おお~、由美ちゃんかわいいけど、ちょっと撮り方がエッチだよ。

 由美:香織はどんなパジャマ着てるの?

 香織:しょうがないな~。えいっ。

 

 長袖の白い生地にオレンジ色の円が書かれた可愛いものだった。

 縦鏡に体育座りして撮ったのか、鏡越しの写真だった。


 由実:かっわいい!あっ、ズボンから下着が透けてるよ。

 香織:わわわ!勢いで撮ったから確認してなかったよ。

 由実:下着まで可愛いのつけてるね~!消しちゃだめだからね。

 香織:ううっ、恥ずかしい。

 

 こいつら、俺もグループにいること忘れてるのか?

 既読をつけてしまったので、とりあえずメッセージを送信することに。


 洋一:個人同士のチャットでやれ。

 由美:やっぱ見てたー。むっつりすけべ。

 香織:わ、私は寝るね!おやすみ!

 

 翌朝、教室に入るとすでに多くの生徒が登校していた。

 俺の席の近くでは、由美と香織に土田と森本が話していた。


 「洋一だ!おっはよう」

 「洋一君、お、おはよう」

 「おう、おはよ」


 由美の声が大きかったせいで、クラス中から注目されてしまった。


 「洋一って誰?」

 「山田の名前だよ」

 「あの三人いつのまにそんな仲に」


 そんな周囲の声を無視して、席に座った。


 「おいおい、お前ら昨日の勉強会で何があったんだよ?」


 森本が近くの机に座りながら、興味ありげに聞いてきた。

 

 「なんで山田のこと名前で呼んでるだ伊藤。田宮に無理やり合わせてるのか?」

 

 土田は動揺しながら、問い詰める。

 

 「ちょっと、あんたら何想像してんのよ。それに土田君?それどういう意味?私に喧嘩売ってるの?」

 「由美落ち着いて、一緒に勉強して仲良くなっただけだよ。ねえ?」

 

 香織が俺のほうへ向き同意を求めてきた。


 「ああ、由美と香織とは昨日の勉強会で仲良くなったからな」


 クラスの男子たちが興味深そうに耳を傾けてるのを感じたので、わざとらしく答えた。

 

 「山田まで名前呼びだと……」

 「これは、ひょっとしたらひょっとするかも?」

 「私山田君狙ってたのに」

 「先こされたー」


 ざわざわと噂話があちこちで始まっているようだ。

 森本が口笛を吹いた。

 

 「お、おい。昨日、山田の部屋でなにしてたんだよ」

 

 土田が恐れながら誰にともなく尋ねた。

 

 「んー。簡潔に言うと、下着を見せ合う仲になったのかな?」

 

 由美が爆弾発言を落としやがった。

 クラス中がまたざわざわと騒ぎ出した。


 「田宮の冗談だよな?いつも変なこというしな」

 

 ひきつった笑いを浮かべながら土田が伊藤に聞いた。

 由美は自分が何言っても信用がないのを察して、静かに香織に視線を向けた。

 

 「もう由美、変なこと言わないでよ~。確かに私から見せちゃったけど……」

 

 香織は恥ずかしそうにうつむいた。

 これは昨日のグループチャットで自分から送信した写真のことを話してるんだろうな。

 ただ、その言い方は余計に誤解を生むだけだろ。

 俺や田宮だけなら誇張して話してるだけだと思ってくれるだろうが、真面目で大人しいと思われている香織が言うと、仕草も相まって事実以上にいろいろと噂されてしまう。

 

 「自分から?伊藤って結構大胆なんだな」


 森本は知ってか知らずか、面白がって揶揄う。


 「そうか……伊藤からなのか」


 土田はそう呟いて席に戻っていったが、その顔からはどす黒いものを感じた。

 

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