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何を思うのか

「ひいっ、ひいっ」


「腰が下がってるぞ。姿勢を意識するんだ!」


「はひぃぃ」


 腑抜けた姿勢で剣を振ったフリューゲルに対し注意をする。返ってきたのは返事と吐息が混ざったような声だった。


「マナ云々の前にフリューゲル、お前は体力が無さすぎる。身体が未熟すぎる。マナを扱えるようになればそれも解決出来るが、だからといって素の肉体の鍛錬を怠っていい理由にはならん」


「はひっ、あっ」


「良し、そこまででいい」


 手から剣がずり落ちたのを見て一旦停止させる。フリューゲルは膝から崩れ落ちるように地面に座り込んだ。


「はあ、はあ」


「後半、疲れが出る前はかなり様になっていた。その調子だ」


「はあ、あ、ありがとう、ございまひゅ」


「マナは感じるか?」


「……!……!」


 首が横に振られる。どうやらダメだったらしい。

 肉体を限界に追い込む、要するに疲れ果てた状態でマナを認識したという人物は多い。力を絞り出す意識がマナの認識に繋がるのだろう。しかしフリューゲルは何も感じていない。


「ほら、飲め」


「……!」


 冷えた飲み水を渡すと勢い良く飲み始めた。それを見ながら次のアプローチの仕方を考える。


 マナを扱えるようになる切っ掛けは人によるとしか言えない。極度の疲労、何かしらの覚悟、死を目の前にした時の恐怖。


 ただそれらに共通しているのは。


「なあ、お前は何でここに居る?」


「へ?」


「俺は自分がやってる事の無茶苦茶さを自覚してるつもりだ。俺から見てお前に才能があるのは間違いない。だがこれまで真っ当に冒険者をしてこなかったお前が、自分の才能を疑うのも分かる。現にお前はまだ自分を信じていない」


「……」


「何故なんだ?何故俺の言葉に従う?あの時、お前なら得られると言った金目的か?それとも名誉か?家族か?」


 共通しているモノ、それは精神。心の動きと言っても良い。


 何を思うのか、何を感じるのか。状況の差はあれど、マナを自覚した者はこういった感情が起点になる。


 フリューゲルが強く思う何か。何の為に俺に従うのか。それがきっとマナの自覚に繋がる。


「お前は何を思って――丁度良い、見ろ」


「……えっ、あっ!」


 フリューゲルが大げさに飛び退いた。森がある方向、草木から俺達に近づく小さな人影。

 ゴブリンだ。


「この辺りまで来るなんて珍しいな。誰かの取りこぼしか?」


「こ、ここ、こっち来てます!睨んでます!」


「慌てすぎだ」


 恐らくモンスターとしては最弱の部類に入るのがコイツだ。身体は小さく力も頭も弱い。群れれば多少は厄介になるがそれでもたかが知れてる。


「銅級の昇格クエストは大体コイツが相手だ。要するに基本中の基本」


 フリューゲルがマナを無意識に扱ったのはモンスターとの戦闘が原因だ。相手は雲泥の差があるがあの状況を再現するにはコイツは持ってこいの相手だった。


「コイツを倒してみろ、フリューゲル」


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