1 プロローグ
(あぁ、今日も終電帰りで、晩飯はいつものコンビニ弁当か…)
俺はブラックな企業に勤める29歳独身、彼女いない歴もう何年になるのか覚えていない。
物心がつく頃には猫が心底好きになっていた。
大きくなって一人暮らししたら、絶対に猫を飼おうと幼心に決めていた。
ところが、小学校で友達になった猫好きの子の家に遊びに行き、猫とのスキンシップを堪能して帰った夜、酷い呼吸困難になって、救急車で運ばれた。
そう、こんなに猫を愛してやまないのに、猫アレルギー!!
結局それ以来、直接猫と触れ合う機会を失って、20数年。
休みの日はゲームや、にゃんにゃんカフェで、猫耳萌えのお姉さんの姿に想像を膨らませる日々だ。
この日も終電まで残業して帰るところだった。
明日は休みだし、帰ったら最近やり始めた猫人族暮らしゲームの続きでもやろうかと考えながら、コンビニを出た。
信号待ちをしていると、白いきれいな子猫が、弱々しく向こうから渡ってくる。
そこにトラックが減速することなく走ってきた。
「危ない!」
思わず叫び、頭の中が真っ白になり、考えなしに夢中で子猫のもとへと走り出していた。
トラックは突然飛び出してきた俺に気づき、急ブレーキをかけたが間に合わなかった。
子猫は無事のようだ。小さなざらついた舌が俺の頬をなめる感覚がある。
(良かった…… この子が無事で…)
そうして意識を失う直前に頭の中に優しい声が響いた。
『ありがとう…… 私の娘を助けてくれて』
どうやら俺の人生はここまでのようだ。
でも最後に大好きな猫を助けて、頬を舐められながら終わるなんて、まんざら悪くないエンディングだ。
もしも次に生まれ変わることがあったら、次こそは猫と戯れる人生がいいなと思いながら、俺の短い一生は終わった。
* * * * *
「オギャー! オ、オギャー!」
「ほら、元気な男の子だよ!」
「ベロニカ、ありがとう!」
「良かった… 無事に生まれてくれて」
「おい! この耳やしっぽの色… もしかして…… 長老! ちょっと来てくれ!」
* * * * *
どうやら俺は、生まれ変わったようだ。しかも前世の記憶を持ったまま。
(よし、今度こそ猫と戯れるぞ!)と決意しながら、1ヵ月ほど経ち、ようやく目が見えるようになった。
な、なんと!? そこには、青みがかったグレーの猫耳を持つ、キレイで優しそうな女の人が、胸をはだけて、俺の口元に充てがってくる。
(神様ありがとう!! なんて素晴らしい世界なんだ!)
どうやら俺は、猫人族の子供に生まれ変わったみたいだ。
ちょっと短いですが、このあと連続して掲載します。
どんな評価でもいいので、よろしくお願いします。