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付呪師リゼルの魔導具革命  作者: 清見元康
第二章:魔法都市ガラリア、冒険者編
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第32話:初めての遺跡探索へ

「やあやあキミたちぃ、待ちきれずに来てしまったよ」


 とガラリアが勝手に[石と苗木]の扉を開けたのは、僕がまだ寝間着で朝食を食べている時だった。


 彼女は食卓に並べられたシチューとパンとサラダとオムレツに気づくと、目をぱーっと輝かせる。


「うわー! おいしそーだー! へいガラン、ボクにも何か出すんだ!」


 とてとてと駆けてきて僕の正面にちょこんと座る。


「へいへいガラン。やれだせそれだせー」


 思わず、僕は低く呻いた。


「早すぎないですか」


 大迷惑だ。

 ていうかたぶん彼女めちゃくちゃ年上だよね?

 礼儀というか、常識というか……辞書に無いのか?

 僕の中でこの人の評価は今どん底なんだけども。


「善は急げだよリゼル氏。物事は早いに越したことは無いのだ」


「僕まだ食べてるんですけど」


「その点は大丈夫だとも。何も問題は無い」


 あるだろうが……。


「何せこのお宿[石と苗木]は朝食も営業しているのだからね」


 ああ、くそう。

 確かに店的には何も問題無かった。


「……そもそも、何のようなんですか」


「んんー、そりゃあれだよキミぃ。ちょっと行きたいところがあるのでね」


「行きたいとこ、ですか?」


「うん」


「どこです?」


「最近発見された新しい遺跡。ボクぁ冒険の誘いに来たんだ」



 ※



 無理やり押し切られた結果、僕は今獣車に揺られている。

 せっかくゆっくりできると思ったのに……。

 不幸中の幸いだったのは、ルグリアも一緒に来てくれたことだ。


 流石に今回は御者を[冒険者ギルド]で雇ったので、エメリアも中で一緒だ。


 ちなみにグインは仕事で手が離せないそうだ。

 つまり今僕は、付呪師、付呪師、魔導師、弓使いのパーティにいるということになる。


 ……不安だ。

 一応[硬化]の付呪はしてあるけども、常時発動するとたぶん倒れるので瞬間発動型だ。

 これだととっさの罠に対応できない。


「ガラリア先生が冒険なんて、珍しいですね」


 と、エメリア。


「まあねー。でも遺跡が新しく発見されるなんて滅多に無いことなのだよ」


 [禁断の地]のように世界の果ての果てならまだしも、[魔法都市]付近にある山脈の麓となれば、何故今まで見つからなかったのかという疑問のほうが大きい。


「おそらく、別のどこかで何かがあった結果、強固な[隠蔽]が壊れたのだとボクは見ている」


「危険ってこと?」


 ルグリアが口を挟むと、ガラリアは呆れて言った。


「おいおい、世の中は既に危険だらけさぁ」


「……そういう意味じゃないんだけど」


「危険の定義にもよるのだよルグリア氏。魔獣の巣窟、というパターンでは無いらしいんだ」


 元来、遺跡にはかつて使われていた[付呪]や[魔道具]がそのまま残っているため、魔力を好む魔獣たちの巣になりやすい傾向がある。


 ルグリアは呆れて言う。


「じゃあ何も無いってことじゃん……」


「はてそうかな。――リゼル氏、キミはどう見るのだ?」


 考えられることはいくつもあるが――。


「魔獣すらも寄せ付けないほど強固な障壁が施されていた、とかですか?」


「んん、そうだ。ボクはそう見ている。キミもそう見ている。どうやらボクたちは似たもの同士らしい。仲良くやっていこう」


「そう言うんでしたら、エメリアさんの髪を引っ張ったことを謝ってください」


 正直、彼女へのわだかまりは払拭されない。

 女性の髪を、あんな乱暴に引くか普通。

 許せるものでは無い。


「おお……キミほどの男が言うのなら、ボクも折れよう」


 と、ガラリアはエメリアに向き直ると、ペコリと頭を下げる。


「昨日のことは謝ろうエメリア氏。愚かなボクを許してくれ」


 ……素直過ぎて怖い。

 いや、読めてきたぞ。

 似たような人を[魔法学校]で見てきたからわかる。

 ガラリアにとって何よりも優先されるのが研究なのだ。

 そのためならば、意地もプライドも軽く捨てられるのだ。


 だからおそらく、彼女は――。


「そ、そんなガラリア先生、頭を上げてください」


「おお、ではボクを許してくれるのかね?」


「許しますから……というより、怒ってませんので」


 いやそこは怒ろうエメリア。


 そして案の定、ガラリアはぱあっと表情を明るくし、ぐっと拳を握りしめた。


「いよおーっし! 許された! さあこれでいいだろうリゼル氏。ボクたちはこれから仲間だ! よろしくな!」


 ああ、やっぱりこの手の人は全然反省しない……。


「もうしないでくださいね……」



 エメリアは良くこの人の弟子をやっていられるな……。

 いやほんと、凄い人だ。



 ※



 数刻ほど獣車を走らせ、僕達は山の麓にある野営地へとたどり着く。

 既に冒険者のパーティがいくつも来ているようだ。


「ここから先は彼らとの競争だぞリゼル氏」


「本業の人相手にですか……」


「なぁに心配するな。このボクがいるのだ。大船だよキミぃ」


「それに遺跡って言ったってどこです?」


「来ればわかるとも」


 と僕らはガラリアに連れられ、山の麓の登山道近くまで進む。


 すると――。


「止まってください」


 妙な違和感に襲われ、僕は皆に声をかけた。


「何か、おかしいです。周りの……ええと、すいません、上手く説明が――」


「そう? アタシなんも感じないけど……」


「私も、です。……ガラリア先生は?」


 と、ガラリアは立ち止まり僕のお腹の辺りをペチペチ叩いた。


「キミいいぞぉ。このレベルの結界を見破れる魔導師はそうそういまい」


 ――結界?

 この違和感がそうなのか?


「まーとは言っても、既に壊れた後だから多少雑にはなっているようだが。ちなみにボクでもギリわかる」


 そして僕達は結界を抜ける。


 すると、目の前に突然巨大な遺跡が姿を現す。

 山をまるごと削り取ったようなその造りは、まるで何かを祀っていたかのような荘厳さを思わせる。


 こ、これが、遺跡――。

 歴史の授業で習ったものよりも、ずっと大きいぞこれ。

 一体何が眠っているのか……。


「本当に、危険は無いんですか」


 思わず問う。

 こんな四人で来るべきところでは無い気がする。

 だがガラリアは言う。


「心配するなリゼル氏よ。ボクらは既に後続組だ。マジヤバーな罠とかは[黄金級]が片付けた後さ」


「じゃ、じゃあ僕たちは何を?」


「キミぃ。超一流の付呪師が遺跡でやることなど一つさ」


 そ、それは……?


「古代文字の解読と、付呪の解明さ」


 そうして、僕の初めての遺跡探索が始まった。

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