白い灯台7
数日後。私は総武線を乗り継いで外房へ向かっていた。かなりの長旅で早朝に出発したのに到着は午後に差し掛かろうとしている。朝の東京駅構内で簡単な朝食を済ませ、それからはずっと電車に乗っている。
朝から総武線に乗っているのにはそれなりのわけがあった。個人的な理由だ。仕事以外の。だから今回の旅はひとりぼっちだった。孤独な移動。本来、旅とはそういうものなのかもしれないけれど。
社長に会ってから私は妙にあの記憶に悩まされていた。白い灯台の記憶。両親と妹と出かけたあの場所だ。私は幼い記憶だけを頼りにその場所を検索エンジンに入力した。
『白い灯台 白いポスト 水族館』
そんな断片的な単語でもグーグルは私に答えを教えてくれた。何一つ曖昧さもなく正確な情報を教えてくれたのだ。年寄り臭いことを言えば便利な時代になったと思う。
その場所は千葉県銚子市の犬吠岬という場所だった。そこには記憶にあった白い灯台と白いポスト。そして小さな水族館があった。驚くべきことに画面に表示されたその景色は私の記憶と寸分も違わなかった。なんなら土産物屋のワゴンの配置まで一緒に見えた。まぁ、これは言い過ぎだと思うけれど。
どれくらい時間が経っただろう。おそらく三時間半くらいだろうか? スマホで流していた音楽が三周目に突入したのでおそらく合っていると思う。気がつけば窓から見える景色は東京のごみごみした景色から地方の港街の風景に変わっている。
銚子駅に着くと私は席を立った。ここで乗り換えなければならない。ホームに降りると背伸びをすると肩を回した。ずっと同じ体勢だったせいか、肩の関節からバキバキという鈍い音が鳴る。少し休憩したほうがいいかもしれない。ここまで来ればあと二〇分ぐらいで目的地には着くし、少しぐらいゆっくりしても問題ないだろう。
それから私は改札を抜けて駅前ロータリーに出た。再開発されたのかアスファルトが真新しく光っている。地方の駅らしい。と素直に思う。
駅前を少し歩くとコンビニとマクドナルドがあった。こいつらはどこにでもあるのだ。どこにいても同じサービスを提供してくれる。私のジャンクなパートナー。
さて、ここで小休止だ。私はデイバッグを背負い直すとマクドナルドに入った。ジャンクで身体に悪そうな匂いが広がった――。