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今、挟まれる栞1

 栞が帰ってきたのは日付が変わる少し前だ。両手には中身の詰まった紙袋。どうやら祝賀会の土産らしい。

「おかえり。すごい荷物だね」

 そう言いながら彼女から紙袋を受け取る。袋は見た目に反して軽い。

「ただいまー。うん、みんな色々くれてさ。花だけは実家に送って貰ったよ。さすがにここには置けないからね」

「それがいいね。お義母さんたちには伝えてあるんでしょ?」

「大丈夫! ……ってより前から花欲しがってたよ」

「なら良かったよ。まぁ花はお義母さんたちの方が使うだろうしね」

 義母の家。もとい栞の実家は喫茶店をやっていた。だから花を飾る場所はいくらでもある。おそらく義母は喜んで花を店先に飾り付けると思う。あの人は花が好きなのだ。

「そうそう! 月子ちゃんがお祝い来てくれたんだー!」

「月子ちゃんってあのパンクバンドやってる子?」

「そうだよー。全国ツアー終わったばっかりなのに来てくれたんだ。ほんとありがたいよね」

 月子さん……。僕は彼女と一回だけ会ったことがある。ほとんどすれ違いみたいだったけれど、一応は自己紹介だけはした。

『初めまして、半井水貴です』

『初めまして、鴨川月子です』

 そんな挨拶だけ。味も素っ気も無い。単なる自己紹介。

 それでも不思議と彼女には好感を持てた。話し方や仕草、そして彼女の容姿がそうさせたのだと思う。

 僕が月子さんに抱いた第一印象は『綺麗な人』ということだった。かなり押さえた言い方をしても相当な美人だと思う。背格好は栞より少し長身(おそらく160センチ後半だと思う)で女性らしい体つきをしていた。とても端正な顔立ちで目はくっきりとした二重だった。

 これは月子さんに好感を抱いた理由ではないけれど、少なからず彼女の容姿を見て僕は驚かされた。別に彼女を女性として見たわけではない。どちらかと言うとそれは綺麗な景色を見た感覚に近いと思う。

 そんな月子さんは栞の親友だった。似ても似つかぬ二人なのに心を通わせているように見えた。まぁ、これは栞の態度や言葉から僕が感じたことだけれど。

 おそらく二人は互いの欠点も含めて認め合う関係……。なのだと思う。理想的な関係。これ以上無いくらいの。

「ねえ水貴くん。ちょっと飲まない?」

「ん? いいよ。栞から飲もうなんて珍しいね」

「うん! 今日は気分良いからさ」

 そう言うと栞は照れくさそうに笑った。

 ああ、栞だ。僕の最愛の人だ。そんな当たり前のことを思った――。


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