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文藝くらぶ9

 私の家と祐希の家は目の鼻の先にある。彼女とは生まれたときから同じ町内で、初めて遊んだのは近所の公園だったと思う。砂遊びや滑り台遊び。それが私と祐希の思い出だ。

 そんな感じだから私たちはまるで姉妹のように育っていった。お互いに一人っ子だったし、同世代の女の子が近くにいなかったから余計そうだったのだと思う。

 ……辛辣な言い方をすれば私と祐希の繋がりはそれだけなのだ。家が近所で同い年で同じ性別。それ以上に私たちには何の共通点もなかった。趣味嗜好はバラバラだし、好みの男子のタイプも全く違った。(私が根暗で物静かなタイプが好きなのに対し、祐希はクラスの人気者になりそうなイケメンが好みだ)

 だから時々不思議な気分になる。もし、私たちの家の距離があと少し離れていたら関係は大きく変わっていたかもしれない。話はするけれど頻繁に遊んだりしない……。そんな関係だったのではないだろうか? ……。いや、間違いなくそうなっていたはずだ。

 本心を包み隠さず言うとすれば私は祐希のような女の子が嫌いだから――。


「いらっしゃぁーい」

 インターフォンを押してすぐに祐希が玄関から顔を覗かせた。

「お邪魔します。今日はよろしくね」

「うん! 今日はねぇ、フミちゃんが好きなすき焼きだよぉ」

 祐希は舌が数センチ足りないようなしゃべり方をした。

「そっか! 楽しみ!」

 反射的に口角が上がる。おそらく祐希はわざわざ母親に夕食の献立をねだったのだと思う。

「文子ちゃんいらっしゃい! いつも祐希と仲良くしてくれてありがとうね」

 奥から祐希のお母さんが顔を覗かせた。

「いえいえ。こちらこそ……。今日はよろしくお願いします」

「あらあら、やっぱり文子ちゃんはしっかり者ねぇ。さすが栞さんの娘さんね」

 そう言うと祐希のお母さんは「フフッ」と可愛らしく笑った。

 持ってきた荷物を祐希の部屋に運ぶ。着替えと歯ブラシとナプキン。そして場違いなノートPC。

「フミちゃんパソコン持ってきたんだぁ」

「うん。毎日やることあってさ……。悪いんだけどWi-Fi貸してね」

「うん。いーよー」

 Wi-Fiがないと始まらない。私にとってWi-Fiはネットの海へ繋がる為のトンネルなのだ。

 そうこうしていると下からインターフォンの音が聞こえた。そしてすぐに祐希のお母さんの声がした。

「祐希ー。千波さん来たよー」

「はーい! フミちゃんちょっと待っててね!」

 そう言って祐希は嬉しそうに立ち上がった。お泊まり会が余程嬉しいのか若干スキップしているように見える。

 さて、千波さんが来る前に済ませておこう。私は文くらのページを立ち上げて今日分の小説を更新した――。


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