文藝くらぶ2
「ただいまー」
家に帰るとすぐに自室に向かった。帰って自宅のパソコンの電源を入れる。これが私のルーティンなのだ。
「おかえりなさい。ちょっと支度手伝ってくれる?」
「はーい」
母に呼ばて適当に返事を返す。リビングの様子から察するに父はまだ帰ってはいないらしい。
制服を脱いでハンガーに掛ける。バッグからは創作ノートを取り出す。スマホを充電器に繋ぐ。その一連の流れを熟す。これは私の生活の一部であり、習慣化された行動なのだ。
「フミぃー。レンジのジャガイモ取って-」
「うん」
台所に行くと母が忙しそうに夕食の準備をしていた。材料から察するにクリームシチューらしい。
「シチュー?」
「そう! あとはサラダだよー」
シチューとポテサラ、そして炭水化物のパン。そんな夕食らしい。
「じゃあサラダ用意するよー。ポテサラでしょ?」
「そうそう! あとレタスのにんじんあるから使って!」
母はそう言うと嬉しそうに「ふふん」と笑った。娘の私から見ても可愛らしい。
中学生になってからは母と一緒に夕食の支度をするようになった。最初は苦手だった包丁も今はすっかり慣れたし、最近はオムライスも綺麗に出来るようになったと思う。
「そういえば……。明日帰り遅くなるかも……。ゆきちゃんにサブウェイ行こうって誘われててさ」
「そうなのね。……。うん、大丈夫だよ。明日はお父さんも帰り遅いらしいし、お母さんも適当に済ますから」
そんな話をしながら二人で夕食の準備を進めた。父が帰ってくるまでの母と二人きりで話す時間だ――。
「ただいまー」
一九時を少し過ぎた頃、父が帰ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま文子……」
父は私の顔を見ると少し申し訳なさそうな顔になった。
「なぁに? どうしたの?」
「ん? いや……。文子の顔見るの一週間ぶりだなぁって思ってね」
「あー……。確かに」
父に言われて気づいたけれど、こうして父と顔を合わせるのは久しぶりだ。
「学校はどう?」
「普通だよー」
「なら良かったよ」
生存確認終了。中学に上がってから父とはいつもこんな感じだ。
「おかえりなさい。先にお風呂入ったら? 明日も早いんでしょ?」
奥から母がやってきて父に尋ねた。
「ああ……。そうだね。そうするよ」
父はそう言うとため息交じりにネクタイを解いた。
ありきたりな家庭。それを象徴するかのように。




