ワタリガラス4
後半戦。残り八〇人。と言っても集団面接方式なのでそこまで時間は掛からない。
「さて……。では続けましょうか」
「はい!」
再開されたオーディションはトントン拍子で進んでいった。簡単な質疑応答と自己アピール。きっと一般企業の入社面接よりずっと簡単だと思う。
私は極力受験者を緊張させないように努めた。上機嫌にも不機嫌にも見えないような表情を作るのは得意だ。ただリズムを乱さないようにひたすらに彼等の本質を探っていく。
だからこれは本当に事務作業なのだ。工場で仕上がった製品を検品してく作業に極めて近い。そこには感情など一切無い。あるのは数値的あるいは実務的な審査のみ。音楽活動において、それはまずいと思う人間もいるだろう。でも私はこのやり方にある種のこだわりを持っている。主観性で対処すれば必ず穴が生じる。最初は小さい穴でもやがて組織を壊滅に追い込む。というのが私の持論だ。まぁ……。一部の例外も存在するけれど。
そしてその例外は審査も残りわずかになったときに訪れた。例外中の例外。才能という奴だ。
その少女に対して私が最初に抱いた感想は「綺麗」だということだ。端正な顔立ちで肌は粉雪のように白く、体型は女性的な丸みを帯びていた。決して豊満というわけではない。大衆向けで、悪く言えば性的に男性が最も求めるような体型をしていた。男性が最もエロスを感じる。そんな容姿だ。
応募書類を確認するとそこには「鴨川月子 一六歳」と書かれていた。出身地は京都府。どうやら関西からわざわざ上京してきたらしい。
彼女たちのグループにはもう一人別の女の子がいた。その子も決して悪くなかった。いや、はっきり言えばかなり良かったと思う。面接でも受け答えも歌唱力も問題なかったし、何よりこの業界に対する熱意は他の応募者の比ではなかった。熱意。それは最大の推進力になる。
しかし……。残念ながら彼女には決定的に才能が無かった。そこにあるのは努力だとか勤勉さだとかそんなものだ。別に勤勉さを否定するつもりはない。でもこの業界……。いや、どんな世界においても勤勉さは最低条件にしかなり得ない。努力する凡人より怠惰な天才。そんなどうしようもない真実。
彼女がいてくれるお陰で月子は一段と輝いて見えた。残酷な真実だ。もし私が単に人間性だけで人を選ぶとすれば彼女を選んだかもしれない。素直にそう思う。
ああ、神様はなんて理不尽なんだ。私はそう思った。これほど必死に頑張る子ではなく、月子に才能を与えた。それはあまりにも残酷であまりにも非道なことだと思う。
西浦有栖という個人としては二人とも合格にしてあげたかった。二人ともいいところはあるし、きっと切磋琢磨する関係になっていくだろう。そんな未来を容易に想像できた。
しかし……。西浦企画部部長としてはそうも言ってはいられない。宮仕えの悲しいところだ――。
「西浦部長お疲れ様でした!」
「お疲れ様です……。では審査入りましょうか」
オーディションが終わると私たちは審査を開始した。まぁ……。既に審査結果は決まって居るのだけれど。




