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白い灯台10

 灯台は私の記憶のままそこに建っていた。まるで記憶をトレースしたかのようにそのままで、温度や風向きまであの日と同じように感じる。

 私は記憶と実際の景色の差異を探すように辺りを散策した。灯台を真下から見上げ、周りのスロープを一周した。スロープの下には岩礁が広がっている。あの日と同じ。トレースされた波しぶき。

 こんなことってあるのだろうか? 記憶がこんなに合っていることなんて……。いや、もし記憶通りだとしたら逆におかしい。幼少期の私がここを訪れたのは二〇年近く前の話なのだ。変わっていないなんてことはあり得ない……。

 しかし私の目に映る景色は完全にその景色と一致していた。まるで昨日来たばかりのように。鮮明に。僅かな違いも無く。

 それは本当に不思議な感覚だった。家に帰ったような安心感がそこにはあって、私を優しく包み込んでくれた。

 欠けたパズルのピースが見つかった。その感覚に近いかもしれない。おそらくずっと欠けていたのだ。この場所での記憶も。家族での思い出も。

 私はベンチに腰を下ろして目を閉じた。優しい風と潮の匂い。それだけを感じて。


 京極裏月 白い灯台 終


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