プロローグ
プロローグ
「いいか、優。男たるもの女性には優しくしなきゃいかん。
困っている女性がいたら、たとえ赤ん坊であろうが老人であろうが率先して助けるのが、男に産まれた者の義務だ。」
死んだ父、春坂 玄道の口癖がこの言葉だった。母が僕を産んですぐに亡くなってから、男手一つで僕を育ててくれた。どんなに仕事が忙しくても僕のためにお弁当を作ってくれ、ご飯も毎食一緒に食べてくれたため寂しさは一切なかった。
高校卒業後、大手企業に就職が決まり二人で喜んでいたのもつかの間に父の癌が見つかった。父は自分の時間を割いて僕に尽くしてくれていた為、癌の発見が遅れて診断が出たときには、もう末期であった。
そこからの父はあっけなかった。入院をしてからどんどん父は痩せこけていき、直ぐに帰らぬ人となった。
父の葬儀が終わり、心にぽっかり穴があいた状態で会社に行く毎日、会社には伝えていた為周りの人が何かとフォローをしてくれた。それでも偶にぼーっとしてしまう。
あの日もそうだった。会社からの帰り道、今夜の献立を考えながらふと父の言葉を思い出していた。
「こんなんじゃ駄目だな。もっとしっかりしないと。」
そう自分の気持ちを持ち直して顔を上げた。そして目に飛び込んできたのは赤いライトだった。
「あれ、何で…」
そして横からクラクションの音と急ブレーキの音、そして少し遅れてから頭に鈍い音が響いた。
「おい、誰かひかれたぞ」「救急車をよべ」「血があんなに…」
そんな声が頭の上から聞こえてきた。
ああ、そうか。死ぬのか。
結婚して、幸せな家庭を築いて親父に報告したかったな。
ごめんな、親父。今から行くよ。
天国では、三人仲良くすごそうな。
こうして春坂優は、父が死んでから二週間後にこの世を去った。