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黒龍の娘  作者: レクフル


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黒い人


 リオと一緒に帝都に行ってから、なんだか私、変だ。


 なんか、ずっとリオの事を考えちゃう。リオに会いたくなっちゃう。もっと一緒にいたいって思っちゃう。なんでなのかな?どこか私、おかしくなっちゃったのかな?


 夜、エリアスと一緒に食事をしている時に、ついそんな事を考えてしまう。



「リュカ?どうした?」


「え?」


「いや、あんまり食べてねぇから。旨くなかったか?」


「あ、ううん。そんなことないよ?美味しいよ?」


「なら、体調でも悪いのか?」


「元気だよ!全然!大丈夫!」


「そうか?それとも何か気になる事でもあんのか?」


「え……うん……そうかも……」


「なんだ?どうしたんだ?」


「うん……えっとね……なんかね?ずっと……リオの事ばっかり考えちゃうの……」


「え……」


「リオと帝都に行ってからなんだけど、リオは今何してるのかな?とか、早く明日になってリオに会えたら良いのに、とか、ずっとリオと一緒にいれたら良いのに、とか思っちゃうの。これってなんでかな?」


「それって……」


「それって?」


「い、や……な、んで、だろうな……」


「うん……なんでだろう?」


「その……リオと……帝都で何かあった、とか……そんな事はなかった、のか?」


「あの日は楽しくて、また行きたいって思って……リオもそう言ってて……その時に……」


「その時って?」


「あ、うん。リオと座って休憩してた時にね、リオが……」


「リオがどうした?!何かしたのか?!」


「ううん!何かしたとかじゃなくて!……え?したのかな?」


「なんだ?!何をされた?!」


「ちょっ……!落ち着いてよエリアス!なんか怖いよ!」


「あ、そう、か、そうだな……うん、落ち着く、落ち着く……うん!」


「その時にね?リオが……なんか、私の事ばっかり考えちゃうって言ってて……あ、それ、今の私と一緒なのか……」


「リオが……?そ、それで?」


「前に私の能力が覚醒した時に、私が目を覚まさなかったのを凄く気にしてくれてたんだって。もしこのまま目を覚まさなかったらどうしようって……」


「それは分かる。俺も同じ気持ちだったからな。」


「うん……あの日、リオは能力に覚醒した私に「魔法を使って!」って言ったことを悔やんでて、その事を謝れなくなるのかも知れないって、その……もう私の笑顔が見れなくなるかも知れないって思ったら怖かったって……」


「あぁ、そうだな、それも分かる!で、それがどうしたって?!」


「うん、その、リオは私を、その……す、す、……えっと、その……」


「なんだ?!何を言われた?!リオに好きだとでも言われたのか?!」


「え……その……うん……」


「マジか……」


「あ、でも、リオの言ってた、私の事ばっかり考えちゃうっていうの、私も今同じようにリオの事ばっかり考えちゃうから……じゃあそれって……」


「違うぞ!それは!また違う事だと思うぞ!」


「……そうなの……かな……?」


「そ、そうだ!帝都に行って楽しかったから、その事ばっかり考えるんだ!」


「そうなの……?」


「そうだ!誰でもそうなる!だから気にすんな?!分かったな!」


「うん……分かった。」


「そうだ、気にしない方がいい。リオとは友達だろ?な?」


「うん。友達だったら……頬にチュウとかするもんね。」


「なに……?!」


「だから友達だったらするんだよね?チュウとか……」


「リオに……チュ、ウ、を……された、のか……?」


「え?あ、頬にだよ?」


「リ、オ……人の娘に……何してくれてんだよーー!!」


「エリアスっ?!」



 なに?!どうしたの?!勢いよく立ち上がったエリアスの全身が赤くなってる!髪も瞳も、真っ赤になってるっ!

 

 木のテーブルが燃えだした!ダメだ!このままじゃ家が全部燃えちゃう!!

 急いで水魔法で炎を消すけれど、エリアスの様子は何も変わらない!


 でもこんな状態のエリアスをどうやって止めたら良いの?!

 このままリオの所まで行っちゃうかも知れない!それは何としてでも止めなければ!



「セームルグっ!!」



 方法が見つからなくて、思わず精霊を呼び出した。エリアスの状態を見て、セームルグは困惑したような顔になってからため息をつき、エリアスと重なるようにして体の中に入っていった。

 その瞬間、さっきまで赤くなっていた髪と瞳は元に戻って、熱くなっていただろう体も元に戻った様だった。

 それからその場に崩れるようにして椅子にドカっと座る形になった。グッタリしたエリアスからセームルグが這い出るようにして姿を現す。



「セームルグ!エリアスはどうなったの?!」


「大丈夫です。一旦心臓を鷲掴みにしてその動きを止めました。もう少ししたら落ち着いて目を覚まします。」


「えっ?!心臓をっ!?」


「大丈夫です。あまり彼を心配させてはいけませんよ?」


「私はリオとの事を話しただけだよ?」


「それが父親には耐えられないのです。父親とはそういうものなんですよ。」


「そう、なんだ……」


「エリアスさんが一番好きだとでも言っておあげなさい。そうすれば落ち着く筈ですから。」


「うん……それは本当の事だもん。でも、エリアスの好きとリオの好きは……なんか違う……」


「それが恋というものですよ。では。」



 セームルグが微笑んで、それから私の中へと戻って行った。


 恋……って……なんだろう……?


 まだ人間の事が分かってないのかな……?

 まだ私は龍として育った頃の感覚のまま抜け出せていないのかな……?


 そんな事を考えていると、エリアスの意識が戻った。



「あ、エリアス、その……大丈夫?」


「リュカ……あ……俺……」



 エリアスの傍に行って、エリアスを抱きしめる。リオとの事を言ったらエリアスは我を失ってしまうのか……これがセームルグの言う、父親ってものなの?



「私、エリアスが一番だよ?一番好きだよ?」


「あ、あぁ、リュカ……そう、か……俺もだ。」


「落ち着いた?」


「あぁ……すまねぇ。テーブルとか……飯もぐちゃぐちゃんなっちまったな……」


「大丈夫だよ。まだ残りとかあるし。ねぇ、テーブル、元に戻して?」


「分かった。」



 エリアスが回復魔法で復元させる。テーブルとか、周りも燃えて炭のようになっていたのが元通りになっていく。

 トムトのスープを入れ直して、パンとジャムを用意して、もう一度座り直して食事の続きをする。

 

 エリアスはさすがに反省したようで、申し訳なさそうに食事をしていた。私と目が合うと、何とか笑顔を作るけど、やっぱり落ち込んでるみたいだった。


 食べ終わって、すぐに席を立って、もう一度エリアスの元へ行ってギュッて抱きしめる。私がニッコリ笑うと、エリアスも微笑んでくれる。


 もうエリアスにリオの事を言わない方がいいな……


 次の日、エリアスは朝早くから仕事があるからって言って、いつもより早めに家を出た。

 出る前に

「リオには気を付けろ?」

とか、

「あんまり近くにいちゃダメだぞ?!」

とか、何回も何回も言われた。

 私も、なるべくエリアスの気持ちを逆撫でしないように、

「分かったよ。気をつける!」

って微笑む。そうすると漸く安心したように、エリアスは仕事へと向かった。


 家の片付けをして、種蒔きをした。

 いつもより早くに終わって、帝城へ行くまでまだ時間もあるから、魔物の気配を辿る事にする。


 うん……大丈夫みたい……


 気になる場所はなかった。ダンジョンは結界が張ってあるから、そこからは魔物の気配はないし、ひとまず安心した。

 

 そう言えば、前に行った村のあの子は大丈夫かな?

 所々皮膚が黒く固くなっていて、母親がすごく心配していた。様子を見に行ってみようか……

 今日は時間があるし、少しだけ見に行ってみよう。


 一度行った場所だから、あの場所を思い浮かべたら行ける筈。

 村を思い浮かべて空間の歪みを作り出し、歪みの先へと進んでいく。


 村の入口に着いて、そこから中へと入っていく。けど、なんか変……あちこちで嘆くような声が聞こえる。なんだろう?どうしたのかな?


 中へと進んでいくと、黒い何かがあるのが見える。



 あれは……なに……?


 その近くまで行って


 それは横たわった人だったと知る



 驚いて回復魔法をかける……!

 けれど何も変わらない。

 前もそうだった。回復は効かなかった。

 じゃあもう助からないって事なの?!


 慌ててセームルグを呼び出す。セームルグもこの状況を見て困惑していた。助けるようにお願いするけれど、黒くなった人を助ける事は出来ないって。体に戻っても、体がこういう状態だと苦しむだけで、またすぐに生き絶えてしまうって。だから何も出来ないって。


 辺りを見渡すと、至るところにその黒くなった人がいて、その側に泣きながら寄り添っている人がいる。けど、その人も体の殆どが黒くなっていってる……!


 なに……?これは……


 どうなってるの……?



「リュカ!ここを離れた方が良さそうです!これは伝染病の類いかも知れません!」


「セームルグ……伝染病って……何……?」


「とにかく!回復魔法も効かない状態では、貴女に出来ることはありません!すぐに家に帰りなさい!」


「でも……!」


「リュカ!」


「……分かった……!」



 セームルグに説得されて、仕方なく家まで戻ってきた。あの状態の村を見て、黒くなった人達を見て、私は凄く動揺していた。

 

 怖くて怖くて……でもどうしようもなくて、あの悲惨な状況が脳裏に焼き付いて離れない……!


 なんでああなったの?

 

 何があってそうなったの?


 知らずに涙が零れ落ちてた……


 私は何も


 出来なかった……





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