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黒龍の娘  作者: レクフル


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変な感じ


 劇場からようやく外へ出るともう陽が落ちてきていて、夕陽が空を赤く染めていた。

 

 そろそろ帰らなきゃねって言いながら歩いていると、リオが少し休もうって言ってくる。

 良いよって言って、噴水のある広場でベンチに座る。



「劇、良かったね!面白かった!」


「うん、そうだね。今日は凄く楽しかった。」


「ホットパンケーキも凄く美味しかったし、あ、ピアスもね!嬉しかった!」


「それは良かった。」


「また来たいね!」


「うん、そうだね……でさ……あの、さ……」


「うん?」


「前に、リュカの能力が覚醒した時に、リュカは三日程眠ったままだっただろ?その時にさ、僕、リュカのお見舞いに行ったんだけど……」


「そうなんだ。来てくれてたんだ。」


「ずっと眠っていて起きないリュカを見て、もしこのまま起きて来なかったらどうしようって、凄く怖くなってさ……」


「心配させちゃったんだね……」


「その日僕、リュカに「魔法を使って!」って無理を言って、でも使おうとしないリュカに少し腹を立てちゃってね。だからそれに怒ってその後部屋を飛び出して行ったって思ってたんだ。でもそうじゃなくて、実はリュカは能力が高すぎてそれが体に馴染まなくて、体調を悪くしたのを誰にも言えなくて飛び出したっていう事を知ってさ……僕、何も知らずになんて事を言っちゃったんだろうって凄く反省したんだ……」


「でも、それは知らなかったから仕方のなかった事だよ?」


「そうかも知れないけど、そんな変化に戸惑っているリュカに気づいてやれない自分にも苛立ったし、そんな時に無理を言っちゃった事にも苛立ったし、とにかくそんな自分が凄く小さく思えちゃって……」


「そんな事ないよ!」


「いや、そうなんだ……でね、その後リュカは目を覚まさなかったろ?もう本当にどうしようって思ってさ……謝ることが出来なかったら、とか、リュカの笑顔がもう見れなくなるんじゃないか、とか考えたら、どうしたら良いか分からなくて、でも僕には何も出来なくて、不安で不安で仕方なくなっちゃって……」


「そんなふうに思ってくれてたんだ……」


「今はこうやって普通にいてくれてて良かったって思ってるけど、あの時は本当に怖かったんだ。」


「そうなんだ。でも、もう大丈夫だよ?」


「うん、本当に良かった。でね、僕、そこから何か可笑しくてさ……」


「え?可笑しい?なんで?どうしたの?」


「その、ずっとリュカの事ばっかり考えちゃって……なんでだろうって考えて、でもなんでかは分からなくて……」


「そうなの?」


「でも、リュカと会うと楽しくて嬉しくて、ずっと一緒にいたいって思っちゃったりして……僕多分リュカを……好き……なんだと思う……」


「うん……えっとね、私もリオの事、好きだよ?」


「あ、うん……でも、リュカの言う好きと、僕の好きは違うと思うんだ。」


「好きが違う?」


「うん。」


「どう違うの?」


「なんて言えば良いか分からないけど……」


「んー……ごめん、リオ、よく分からない……」


「そうだよね……」


「リオ?」



 リオが手を繋いできた。歩いてないからはぐれないのにな……

 

 そうしてから、リオが私の目を見てくる。

 なんだろう?どうしたのかな?

 なんか変な感じがする……

 なんか、胸辺りがザワザワする……

 えっと、これはドキドキしてるの、かな?

 

 でもこのドキドキは、エリアスに嘘をついた時のドキドキと違う……

 何が違うんだろう?



「あ、リオ、そろそろ帰らなくちゃ、みんな心配する……」



 この感じに慣れなくて、リオから顔を逸らして私がそう言った時、リオは私の頬にキスをしてきた……


 ビックリしてリオ見ると、リオはすぐに下を向いて、

「そうだね、帰ろう!」

って言って立ち上がり、私の手を引っ張って歩き出した。


 リオに引き摺られるようにして歩いていく。

 リオは何も喋らなくて、私も何を言っていいか分からなくて、はや歩きをするリオに引っ張られて歩いていく。


 頬にチュウされるとかは、エリアスには何回もされてるし、私もエリアスにするし、こんなことは何でもないことで、慣れてることで……


 でも、エリアスの時と違う。

 なんか違う。どう違うとかは分からないけど、違うってことは分かる。


 それに変……


 なんか変な感じがする……!


 その変な感じが何なのかは分からないけど、それは嫌な感じとかじゃない。でもその感じをどう表せば良いのかは分からなくて……

 

 馬車を止めてある場所まで行くと、そこにはエリアスがいた。



「あ!リオ!なにリュカの手、握ってんだよ!」


「あ……」



 エリアスに腕を引っ張られて抱き寄せられる。その拍子に繋いでいた手が離れてしまった。

 手が離れた瞬間に言い表せない気持ちが、また胸を襲う。


 なんだろう……この感じ……


 まだリオと一緒にいたかったな……


 まだリオと手を繋いでいたかったな……


 エリアスが側にいるのに、なんでこんなふうに思っちゃうんだろう?


 馬車に乗り込んで、そんな変な気持ちに落ち着かなくて、エリアスの横に座ってから、エリアスの腕をギュッて両手で抱きしめる。その様子を見たエリアスは微笑んで、「楽しかったか?」って優しく聞いてくる。

 そうやって顔を覗きこんだ時、気づいたように言ってきた。



「あれ?!リュカ、耳……!」


「え?あ、うん、ピアス、リオに買って貰ったの。」


「あ、そうなんです。その、リュカがエリアスさんとお揃いのピアスがしたいって言ったので……僕からの誕生日プレゼントなんです。」


「じゃあ、耳に穴を開けたのか?」


「うん!」


「痛かったろ?!大丈夫か?!」


「大丈夫だよ?今は痛くない。」


「本当か?!すぐに痛みを取って……」


「ダメだよ!回復させたら穴が塞がっちゃう!」


「あ、そうかっ!」


「エリアスとね、お揃いなのが良かったの。私のは丸っぽいけど、エリアスとお揃いみたいでしょ?」


「あぁ、本当だな。そっか。俺とお揃いか。そっか……ありがとな、リオ。」


「あ、いえ。僕もリュカにプレゼント貰って凄く嬉しかったので、リュカの喜ぶ物を渡したくて……だから今日、誘ったんです。」


「そうだったんだな。」


「うん、今日は楽しかった。あ、観劇もね、凄く面白かったの!また観に行きたい!」


「そうか。じゃあ今度は俺と行くか?」


「うん!」



 エリアスが微笑む。帝都に来る前に別れた時はどうなっているのかと思ったけど、エリアスが落ち着いてくれていて良かった。


 帝城に着いて、そこでリオと別れる。


 お互い、「今日はありがとう」って言い合って、それから帰って行った。


 家に着いて、二人で料理をして食事をして片付けて、それから一緒にお風呂に入って一緒にベッドに入って眠る。

 いつもの行程で何も変わらない。

 だけど、ふとした時に思い出すのはリオの事。


 なんでだろう?なんでそうなっちゃったんだろう?


 そんな事を考えてたら、なかなか眠れなかった。

 それになんだかエリアスに悪いように感じちゃう。


 変なの……


 早くこの変な感じが無くなれば良いのに…… 


 


 


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