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黒龍の娘  作者: レクフル


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発見


 俺は最近、ダンジョンを探す仕事ばっかりしている。


 なんかあちこちから俺にダンジョン探索願いが出てるようだ。

 って事で、同盟国のダンジョンを発掘すべく、今日はシアレパス国にやって来た。


 シアレパス国は友好国ではあったけど、以前は同盟国とはなっていなかった。

 が、去年他国で拐った人を売買していた事件で、それを率先して行っていたカータレット侯爵が糾弾されたのだが、この事件を取りまとめたのがムスティス公爵だった。

 その事件の後シアレパス国では領主会議が行われ、そこでムスティス公爵が国の代表に任命されたのだ。

 それにより、その事件後すぐにムスティス公爵はオルギアン帝国と同盟を結んだ。


 とは言え、手続きやらなんやらで、ちゃんと同盟国となったのはごく最近の事で、今回のダンジョン発掘の依頼は、同盟国となってからは初めて国を通しての依頼ってことになる。

 

 だからしっかり結果を残したい。

 それに、ムスティス公爵にはフレースヴェルグの件で借りがある。借りたモンはちゃんと返さねぇといけないからな。


 フレースヴェルグを倒してから、俺の魔法のレベルは格段に上がった。特に風魔法は群を抜いていて、今は自由に風を操れる。ってことで、空を飛べるようになった。まぁ、空を飛んでるところを見られると厄介なんで、見えないように透明化させて飛ぶようにしている。

 これは光魔法で、光を屈折させて見えないようにしてるだけだが、こんなことも容易にできるようになった。

 闇魔法で影にも潜り込めるようにもなった。

 ってことで、俺は隠密にも長けた状態になったのだ。マジで人間離れしてきてるよな。

 

 まぁ、他の能力は敢えて確認しねぇようにはしてる。能力に溺れちゃいけねぇからな。

 ただ、俺がこうしたい、とか、こうなれば良いのに、と思うような事が自然と出来るようになっていたりする。

 こんなことが当たり前の感覚になるといけねぇよな。人は苦労しねぇと成長しない。俺はまだ人としてなってねぇ。だから思い通りに、なんて事にはならねぇ方が良い。

 

 空を飛びながら、魔物の気配を辿っていくと、気になる所が四ヶ所程見つかった。首都から一番近い場所迄行って、魔物の気配をしっかり辿って場所を特定していく。まぁ、ただ魔物の群れがあるだけ、という場合もあるからな。慎重に探らねぇとな。

 

 その場所まで飛んでいくと、そこは森の中だった。気になる場所に降り立って、辺りを見渡すけれど、魔物の姿は見えねぇ。


 屈んで地面に手をやって、目を閉じて気配を探る。……いる、な……けど、コイツらは地下で生活している蟻の魔物で、人間に危害を加えるとかじゃねぇし、ただ単に蟻の巣がそこにあるだけで、ダンジョンっていうのとはまた違った。


 そこはそのままにして、他に気になった場所へ行く。

 そこはヴェス山脈の近くで、前にフレースヴェルグと戦った場所からは程近い所にあった。 

 池があって、その奥に洞窟の様なのが見てとれる。そこに魔物が潜んでいるようだ。


 池を軽く飛び越えて洞窟に入り込むと、ビシバシと魔物の気配が身に染みるように飛んでくる。ここはダンジョンに間違いなさそうだ。

 入口の前に池があって、その池にも魔物がいるから、誰もここには近づかなかったんだろうな。


 軽く中を確認してからそこを出て、その事をゾランに報告に行く。ついでに遅めの昼食を摂ることにした。

 俺の部屋で飯を食ってると、ゾランがやって来た。さっきピンクの石で呼び出したからだ。



「エリアスさん、今日は早かったんですね。」


「あぁ。シアレパス国でダンジョン、見つけたからな。」


「えっ?!もうですか?!」


「まぁ、軽く見ただけだけど、恐らくそうだろうな。もうちょっと調査は必要だ。」


「ありがとうございます!」


「で、冒険者がダンジョンとして使うには、結構手入れが必要な状態だ。」


「流石です。何もせずに帰って来た、というわけですね?」


「それで良かったんだろ?」


「はい!まずはシアレパス国の調査隊と一緒に入って貰い、どれだけ開拓が必要か理解して貰いましょう!まずは開拓にどれ程の人員と期間と費用が必要かを分かって貰わないといけませんので!」


「俺が一人でそれをやっちまえば良いんだろ?」


「その通りです!」


「人使いが荒いよな……」


「当然です!こんな時の為のエリアスさんじゃないですか!調査隊には普通、護衛として高ランクの冒険者を何人も雇い、その後道を舗装したり照明を設置したり、必要なら階段等も作らないといけません!そうしながら、魔物が出たら討伐し、マッピングをし、魔物のレベルを確認していく。これ、ちゃんとしようと思ったらどれぐらいの期間と費用が必要か分かります?」


「費用とかは分かんねぇけど、まぁかなり必要になるよな。」


「そうです!それがエリアスさんだと、僅か数日ですよ?!」


「あのダンジョンなら……二日あれば出来るかな?」


「そうでしょう?!こんなこと出来るのは、エリアスさん位じゃないですか?!だから、その事をちゃんと知って貰わなくてはいけません!」


「まぁ、そうだな。」


「恩は売っておくに限ります!」


「まぁ、それでなくてもムスティス公爵には借りがあるからな。」


「えぇ!借りを返すのであれば、倍以上に返さないと!」


「分かってるよ。まぁ、この後ムスティス公爵に報告に行くよ。そこで今の話をする。それで良いか?」


「そうですね。まずは調査隊の編成をお願いしてくださいね!」


「あぁ。」


「あ、それと、これは今の話と関係ないのですが……」


「ん?なんだ?」


「今日の朝、リュカが帝城に来るのが遅かったみたいですね。僕はたまたま用事があって部屋にいたのですが、リオとミーシャが心配してましてね。今日はご自宅で何かあったのですか?」


「え?特に何もねぇはずだけど……」


「そうなんですね。もう少し遅いようなら知らせて欲しいとミーシャに言って仕事に出たんですが、連絡がなかったのでその後すぐに来たんでしょう。まぁ、何も無ければいいのですが、何かあってもエリアスさんのご自宅へは、僕たちや普通の人は助けに行けないですからね。」


「そうだな……分かった。ありがとな。後でリュカに聞いてみる。じゃ、行ってくる。」



 牛鴨ステーキの最後の一切れを口に入れ、お茶をグビッて飲んでから席を立つ。それからすぐにムスティス公爵邸へ向かう。


 けど、どうしたんだ?何かあったのか?

 今はリオと一緒に勉強してるだろうから、大したことはないんだろうけど……

 子供は成長過程で何をするか分かんねぇからな。女の子だし、言いづらい事とかあるかも知んねぇ。なんかあったら相談にのってやって欲しいって、ミーシャとかマドリーネに言ってるけど、どうなんだろう?

 気になるけど、とにかく今は仕事だな。


 ゾランに言われた通りにムスティス公爵に報告して、調査隊の編成を頼んだ。こんなに早くにダンジョンを見つけた事に、ムスティス公爵はすっげぇ驚きながら、「流石はエリアス殿だ!」ってかなり持ち上げてきた。まぁ、悪い気はしねぇよな。いや、ダメだな。調子にのっちゃ。

 調査は明日することになって、今日は仕事を終えて帰ることにする。


 リュカに会うと、いつもリュカは俺に抱きつきに来てくれる。こんなところがすっげぇ可愛いな。たまんねぇよな。


 けど、いきなり休みの日にリオと帝都へ買い物に行くとか言い出した!


 その事にショックを受けたのは事実だ。

 

 でも、よくよく考えると、子供が友達と休みの日に遊びに行くってのは当然のことであって、リュカにはリオの他に友達はいない筈だから、それをダメだって言うのは大人気ねぇよな……

 そこはやっぱ、親としてドンって構えとかなきゃいけねぇよな。


 もちろん子供だけで帝都に行くのは心配だ。かなり心配だ。やっぱ心配だ。バカみてぇに心配だ。すっげぇ心配だ。無茶苦茶心配だ。って言いたいくらい心配だ。

 

 でも、初めて行く場所じゃねぇし、この界隈じゃ帝都が一番安心だ。

 前にリュカが帝都で拐われてから、帝都の警備を強化している。お陰で犯罪率も大幅に減ったし、喧嘩なんかもすっげぇ減った。子供達があちこちで遊んでるのも知ってるし、あまり遠くへ行かないのであれば帝都は安全な所だ


 分かってる。


 分かってるんだけど、リオは小さいけど男だ。リュカの友達だけど男だ。もしかしてリュカの事が好きだとか?!


 いやいや、こんなこと考えちゃいけねぇ。

 リオはゾランの息子で、性格もゾランに似ていて明瞭で素直で賢い。だから変に勘ぐっちゃいけねぇ。


 けど理屈じゃねぇ……


 ザワザワした変な感情が渦巻いちまう。こんな子供相手に、俺は何を考えてんだ?!そうだ、リュカはただ友達と帝都に買い物に行くだけだ。それだけだ。そうだ。

 

 だから落ち着け!俺!


 ったく、今からこんなんじゃ、リュカに恋人ができたとかなったら、俺はどうなるんだ?

 

 あー!

 

 やっぱ嫁に出したくねぇー!






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