嘘はつかない方がいい
お昼休み、食事を終えてからリオに連れてって貰って図書室へ行く。
帝国の図書室は思ったよりも広くって、凄く多くの書籍が壁一面を埋め尽くしていて、様々な書籍がところ狭しと並べられてあった。
そこには管理員が数名いて、その管理員に医療書の場所を聞く。
皮膚疾患について載っている本を探しだし、何冊か目星をつけて取り出す。皮膚疾患や、それに伴う症状が載っている本を三冊程見繕って、それで朝見た黒い皮膚の症状が何の病気なのかを探しだしていく。
「リュカ、何を調べてるんだい?」
「え?あ、うん、ちょっと……その、病気の事とか知りたいかなって思って……」
「そうなんだね。でも、リュカは回復魔法が使えるから、知らなくても問題はないんじゃない?」
「そう……かも知れないけど……もし……もし、ね?回復魔法でも治せない病気があったら、その原因は何だと思う?」
「回復魔法で治せない病気……うーん……あ、呪いとかだと治せないって聞いた事があるよ。」
「呪い……」
「それ以外は……分からないな……」
「そう、だよね……」
「何か気になる事でもあるの?」
「え?あ、ううん、そうじゃないけど、知っておくと良いかなって思って!」
「そう?あ、ねぇ、リュカ、その……今度の休みの日にさ、その……」
「ん?休み?」
「あ、あぁ、休み、にさ、えっと……一緒に帝都に……買い物とか、行かない?」
「買い物?何か欲しいの?」
「あ、うん、ちょっと買いたい物があってさ、一緒に選んで欲しいって思ってさ……どう、かな?」
「うん、良いよ。エリアスに聞いてからになるけど。」
「あ、うん、そりゃそうだよね!じゃあ、エリアスさんの許可が貰えたら、一緒に行ってくれるんだね!?」
「うん、もちろん!」
「やった……あ、いや、じゃあ分かったらまた教えてね!」
「分かった!」
リオは嬉しそうに笑った。何が欲しいのかな?けど、帝都へは何回も行ってるけど、子供だけで行った事はない。いつもはマドリーネと一緒に行く事が多いかな。あ、勿論エリアスとも行くけど。私は行きたいと思ってるけど、リオと二人でって言ったら、エリアスはまた心配するのかな?
三冊の本を借りることにして図書室を出る。
午後は魔法の練習をして、その後は勉強を教えて貰う。勉強が終わってから、私は借りてきた本で引き続き皮膚疾患の事を調べる。
だけど、私が見たあの症状は何処にも載っていなかった。なんだったのかな?あの子は大丈夫なのかな?
本を図書室に返してリオの部屋へ戻って来ると、エリアスが帰って来ていた。
「あ、エリアス!おかえりなさい!」
「リュカ、ただいま!」
エリアスが帰って来ると、私はいつもすぐに抱きつきに行っちゃう。けど、エリアスはそれを嬉く感じてくれてるみたいで、エリアスも私をギュッてしてくれる。この瞬間が好き!
そうしてからエリアスが私を抱き上げてくれる。
あ、頬にチュウされた!
私もお返しに頬にチュウをして、お互い顔を見合わせてフフフって笑い合う。
「あ、ねぇ!今度の休みにね!あのね!」
「ん?休み?どこか行きたい所でもあんのか?どこに行きたい?どこにでも連れてってやるぞ?」
「あ、うん、そうだけど、ね、その、帝都にね……」
「帝都にか?買い物か?何か買って欲しいもんでもあんのか?何が欲しい?」
「そうじゃなくてね?あのね!」
「じゃあ、なんか食いたいもんでもあんのか?あ、あれか!最近帝都で流行ってるっていうスイーツか?!」
「それは凄く気になる……けど、違うの!」
「じゃあ何だ?あ、今やってる観劇が良いらしいな!それか?!」
「だから違うの!エリアスとじゃなくて、帝都にはリオと行きたいのっ!」
「え……」
「リオが買い物したいから一緒に行こうって。だから一緒に行って来て良い?」
「リオと、か……?」
「うん。」
「リオと……」
「ダメ?」
「…………」
「エリアス?」
「そう、か……リオと……なんだな……」
「うん……」
「……いいぞ……」
「え?!良いの?!」
「あぁ……まぁ、友達と遊びに行くってことも大事だしな……友達は大切にしなきゃいけねぇしな……だからこんな事くれぇは何でもねぇ……リオは友達だからな……そうだ、友達だ……」
「やったぁ!リオ!一緒に行けるって!」
「本当に!?良かった!エリアスさん、ありがとうございます!」
「あぁ、リオ、そんな礼を言う事でもねぇぞ?それとも、礼を言わなきゃなんねぇような事なのか?なんかしようとか、変な事考えてるとかそういう事なのか?」
「え……」
「違うよな?リュカは友達だよな?リオの友達なんだよな?それだけだよな?な?」
「あ、はい……そう、です……」
「あの、エリアスさん、そんなにリオを睨んだらリオが怖がります。子供達だけで帝都へ行くのは心配かも知れませんが、行く場所を事前に聞いておけば大丈夫ですよ。」
「ミーシャ……そう、だな……そうだよな……」
「じゃあリュカちゃん。次の休みはリオをよろしくね?」
「うん!」
なんか、エリアスが複雑な顔をしている。やっぱり心配なのかな?でもミーシャが言ったみたいに、事前に行く店とかを言っておけばそんなに心配じゃないよね?
エリアスと一緒に家に帰る。今日は家で一緒に料理をする。野菜を風魔法で切って、エゾヒツジも切っていく。うん、朝よりも上手く切れたと思う!
今日はエリアスの大好物の、エゾヒツジのクリームスープを作る。味付けはエリアスがする。何度かこの料理をエリアスは作ってるんだけど、いつも思うような味にはならないみたい。
アシュリーのお母さん、まぁ私のお祖母ちゃんになるんだけど、ラリサ王妃にエリアスは何回も作り方を教えて貰ったらしくって、作って貰った事もあったみたいだけど、いつも「アシュリーの味じゃない」って悲しそうな顔をする。
でも、エリアスの作るエゾヒツジのクリームスープも美味しいから、私にはそれで十分なんだけどな。
今日のメニューは、サラダにエゾヒツジのクリームスープ、お魚のムニエルにパン。
うん!今日も美味しい!もちろんスープも!
だけどやっぱりエリアスの思う味とは違うみたいで、「何が違うんだ?」って不思議そうにスープを見詰めていた。
って思ったら、いきなり聞いてきた。
「あ、そうだリュカ。今日は朝、何かあったのか?」
「え?!な、んで?!」
「いや、ゾランがな、リュカが帝城に来るのが遅かったみたいだって言ってたからな。」
「そう、なんだ……あ、えとね、えっと……あ、お風呂!」
「ん?風呂?」
「ほら、いつもお風呂はエリアスが水魔法で水を出して、火魔法で温度を調整してくれるでしょ?!それをしてみたくなって試してたの!そしたら何回か失敗しちゃってっ!」
「なんで一人でそんな事すんだよ?」
「えっと、その……エリアスを……驚かせたく、て?」
「そうなのか?」
「うん……」
「そっか。その気持ちは嬉しい。けど魔法で新しく何かする時は一人でしないで欲しいかな。何かあった時、誰も助けられなくて大変な事になったら困るだろ?分かるよな?」
「うん……ごめんなさい……」
「次から気をつけてくれな?じゃあ、今日はリュカに風呂をお願いしようかな。」
「えっ!あ、うん、わ、分かったっ!」
「大丈夫だ。俺がちゃんと見とくから。」
危ない……気をつけないと……
でも、何とか誤魔化せて良かった。ほとぼりが覚めるまで、あの日課はちょっと控えようかな?当分は大丈夫だと思うし。
食事が終わってから、お風呂の用意をする事になったから、初めてするけど何とか頑張ってみた。けど水が多すぎたのとお湯が熱すぎたのとで、結局エリアスに手直しをして貰う事になった。
もう嘘はつかないようにしよう。
このドキドキは心臓に悪い!




