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黒龍の娘  作者: レクフル


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調合した


 精霊ディナと契約した。みたいだった。


 それは簡単に、自然な形であっさりと終わった。こんなにふうに精霊と契約なんて出来るんだな。知らなかった。


 でもそうか。私には二人、精霊が宿っているって言ってた。一人は見たことがある。セームルグって言う生死を司る精霊だ。あと一人は闇の精霊ってエリアスは言ってたな。名前は何だったかな?


 

「リュカ君、森の中では気を抜いてはいけません。さっきも一人で勝手な行動をするし、森は君が思っているより危険なんですよ。」


「あ、はい……ごめんなさい。」


「分かっているなら良いんです。ではそろそろ帰りましょうか。」



 薬草や魔草も採取したし、色んな物を教えて貰えたりもして、凄くためになる郊外学習だった。精霊と契約出来たのは思ってもみない事だったけれど……

 

 ディナは空間を操るって言ってた。って事は、私もその力を使うことが出来るのかな?

 もしそうなら、私もすぐに行きたい場所に行ける。そうだったら凄く嬉しい!


 あ、でもこの事をエリアスが知ったら、きっとまた心配すると思う。勝手に何処かへ行っちゃダメだって言うかも知れない。だからしばらくは黙っていようかな。これ以上心配させちゃうと、次に郊外学習とかがあっても行かせて貰えないかも知れないし。

 そうだな。様子を見てエリアスには言うことにしよう。


 帝城へ帰って来て、採ってきた薬草と魔草を先生に渡して保管して貰う。明日はこれを調合して回復薬を作るんだって。それも凄く楽しみ!


 帰ってきたエリアスに、今日の郊外学習の事を話して聞かせる。エリアスはニコニコして、いつも私の話をちゃんと聞いてくれる。明日は回復薬を作るんだって言ったら、凄いな、良かったなって頭を撫でてくれた。そうやって笑っているけど、エリアスは疲れてそうだ。連日、裏組織のアジトを殲滅していってて、捕らえた人達の悪事を暴くのに思考を探ったりもしてるみたい。だから凄く疲れるんだろうな。


「リュカに会うと癒されるんだ。ギュッてすると、もっと癒される」って言って、エリアスは私を膝の上に乗せて、よくギュッって抱きしめてくる。私もそれが嬉しくて、自分からもギュッてする。

 人と触れ合ったり抱き合ったりする事は大切なんだ。きっと。だって、心が温かくなって、幸せな気持ちになれるんだもん。


 そのままエリアスの膝の上で眠ってしまったみたい。安心して眠れるっていうのは、お父さんと眠っていた時と、こうやってエリアスと生活を共にしてからだ。この場所はもう無くしたくない。


 朝目覚めてすぐに、エリアスの口と鼻を塞いで強引にエリアスを起こす。



「こら!もうちょっと優しく起こしてくれよ!」


「うふふ……おはよう、エリアス。」


「そんなふうに笑顔を向けられると怒れねぇな……おはよう、リュカ。」


「ねぇ、今日も悪い人達を捕まえるの?」


「あぁ。けど今日は取引先に乗り込むんだ。えっと、捕まった人を買い取る所へ行って、元から正すってのかな?だから今日の帰りは遅くなるな。」


「危なくない?」


「ハハハ、大丈夫だ。それよりリュカ、昨日精霊と契約したのか?」


「え!……うん……」


「なんで言わないんだよ?」


「それは……またエリアスが心配するかな、と思って……」


「隠し事される方が心配するぞ?空間を操る精霊ディナ、か……聞いた事がある。それはディルクと契約してた精霊じゃねぇかな?って事は、リュカはこれから空間移動が使えるって事か……あ!ダメだぞ!勝手に何処にでも行っちゃダメなんだぞ!」


「それは分かってるけど……エリアスはズルい……私の気持ちとか記憶を全部読んじゃう。」


「えっ?!いや、それは、その……ほら、なんか困った事とかあって、言えなくて悩んでたりするかも知んねぇし、その、な?」


「な?って、何?」


「いや……やっぱ心配だし……」


「すぐそうやって心配する。私はそんなに弱くないし、そんなにあちこちに行かないよ?」


「それでも連れ去られたりしたじゃねぇか!それも二回だ!」


「え?二回?」


「フェンリルに連れ去られたのと、この前のと!」


「あぁ……うん、そうだけどーー」


「もう俺の知らない所に行かれるの、嫌なんだよ。リュカが悲しい思いをするのも嫌なんだよ……」


「うん……それは私も嫌だけど……でも、もうちょっと信用して欲しいって思っちゃう。私のいる場所はエリアスがいる所だもん。」


「リュカ……んな事言ったら俺、リュカを嫁に出せなくなるじゃねぇか……」


「なに?よめ?」


「あぁ、結婚な。リュカに好きな人が出来て、その人と一緒に暮らすって事だ。」


「じゃあエリアスと結婚する!」


「マジかっ!!」


「マジだ!」


「すっげぇ嬉しい!……けど、ダメだ!父親とは結婚出来ねぇんだ!」


「どうして?」


「えっと、それは……その……まだよく分かってねぇからそう言うんだ。これから先、俺より良いって思う男が現れる筈だ。」


「そんな事ない!エリアスが一番!」


「やめてくれリュカ……これ以上は嬉しすぎて心臓がもたねぇ……」


「エリアスが嬉しい事は私も嬉しいの!」


「父親冥利に尽きるのか……?いや、まぁ、またこの話はリュカがもっと大きくなってからだな……」


「早く大きくなって、エリアスの嫁になる!」


「マジで可愛い過ぎんだろ……」



 なんだかエリアスが嬉しそうな、でもちょっと困ったような顔をする。なんでかな?ずっと一緒にいるんなら、それはもう結婚した方が良いってことだよね?なのに、なんでダメなんだろう?

 

 朝食を食べて、エリアスを送り出す。


 ミーシャの部屋へ行って、今日は昨日採った薬草で回復薬を調合するんだ。勉強部屋へ行くと、既に調合出来るように用意されてあって、先生は白衣を着て待っていた。私達にも白衣があって、それを着るように言われる。


 上から羽織って、薬草と、その側に置いてある粉とか水とかを合わせていくんだって説明を受けて、言われた手順でそうしていく。その時に魔力を合わせていくと、より高度の回復薬が出来るんだって。


 先生が魔法でカラカラに乾燥させた薬草を、すり鉢でゴリゴリ擦って粉状態にして、それをビーカーっていうのに水を入れて沸かした物の中に入れて沸騰しないぐらいの温度にしながら混ぜて、浮いてた薬草の粉が浮いてこなくなったら用意してあった粉を入れる。この粉は中和剤なんだって。その粉を入れてから、魔力を込めるようにしてゆっくりと混ぜる。この時、魔力は込めすぎても足らなすぎても上手く出来ないみたいで、その感覚を掴むまでが難しいって先生は言ってた。それからガーゼで()して出来上がり。


 一連の作業はそんなに難しくないけれど、火加減とか魔力の調整とかが効能に大きく影響するんだろうな。

 出来上がったのを先生が鑑定してくれる。先生はなんでも出来る。凄い。



「リオ君はもう少し魔力を入れ込んであげた方が良いですね。ですが、この年で魔力を操れるのは素晴らしいですよ。」


「ありがとうございます!」


「リュカ君は……魔力が多すぎです……どうやってこんなに……しかし、もう少しゆっくり魔力を入れ込んであげると馴染みそうですね……そうなるとこの回復薬はとんでもなく高度の物となりますよ……!」


「え?!本当に?!」


「凄い!リュカ!」


「やったぁ!」



 先生に誉められた!嬉しい!エリアスにも言おう!きっと誉めてくれるはず!

 

 お昼になって、皆で昼食を摂る。もちろん先生も一緒だ。



「ねぇリオ。聞きたいんだけど。」


「どうしたんだい?」


「私、エリアスと結婚したいの。でも、エリアスは結婚出来ないって言うんだよ?なんでかな?」


「えっ?!だって、エリアスさんはリュカのお父さんなんだろ?そりゃ無理だよ!」


「どうして?」


「どうしてって……」


「親子は結婚出来ない事になってるんですよ。」


「先生、なんでなの?どうして?」


「それは……」


「あ、その、リュカは他に好きな男の人とかいないのかい?」


「エリアスが一番好き。だって強いし格好良いし優しいし。」


「えっと、そうだね。でも……うーん……どう言えば……」


「そのうち分かりますよ。」


「何が分かるの?」


「他にも良いと思える人が現れるって事がだよ。」


「そんなの、分かんないよ……」



 なんでダメなんだろう?ずっと一緒なら、結婚したら良いと思う。でも親子は結婚出来ないって。なんでなのかな?理解できない。


 午後も調合をして、魔草でも薬を作ったりする。こうやって作り出すのも楽しいな。

 気付いたら陽が落ちそうになってて、今日は終わりましょうってなった。けどこうやって作業するの、私好きだな。

 

 そうだ!出来たのをエリアスにあげよう!きっと喜んでくれる!


 エリアス、まだ仕事かな?


 どこにいるのかな?


 早く帰って来ないかな。

 

 早く会いたい。


 エリアスに会いたい。


 そう思っても、なかなかエリアスは帰って来なかった。夜も更けてきて、もう寝る時間になっても、エリアスは帰って来ない。そう言えば遅くなるって言ってたな。


 一人で窓から外を眺めながらエリアスを思ってたら、目の前の空間がなんか不安定な感じに見える。なんだろう?って思って、手を伸ばしてみると、グニャリって空間が歪んで裂けた。驚いたけど、その空間を両手で広げるようにして、それからそこへと入るように進んで行く。

 

 そこはミーシャの部屋じゃなくて、知らない場所だった。


 



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