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黒龍の娘  作者: レクフル


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未来


 朝、エリアスを送り出してから、ミーシャに全快祝いの事を言うと、今日こそは是非!って言ってくれたので、昨日するはずだった事をしていくようにする。


 って言っても、もう買い物も必要無かったし、料理とかは私は作れないし、飾り付けの飾りもある程度揃えてあるし、特にする事が無かった。


 そういう事もあって、午前中は久しぶりにリオと一緒に勉強した。講師の先生も私とは久しぶりだから、「勉強が疎かになっていたのでは?」と気になっていたようで、突然「今日はテストをしましょう!」って言い出した。

 それにはリオが「えーっ!」って、凄く嫌そうな声を上げていたけれど、私はどんな問題が出るのかワクワクしちゃった!


 回答を書き終えて先生に提出すると、目の前で採点してくれる。その時もワクワクしながら見ていると、先生は驚きと嬉しさの合わさったような顔をして、「満点です!」って言ってテストを返してくれた。リオも「凄いね!」って喜んでくれる。嬉しいな、こういうの。

 リオは引っ掛け問題でバツが点いて、惜しくも95点だった。それでも、先生に「良く出来ましたね!」って言って貰えて、リオも少し嬉しそうにしていた。

 うん、やっぱり勉強って楽しい!


 昼食の時間になって居間へ行くと、給仕の人とマドリーネが食事の用意をしていた。


 昨日、マドリーネと私は一緒に買い物に行ってて、その途中で私が連れ去られそうになった子供を追いかけて行って……

 マドリーネは凄く心配した筈だ。悪いことをしちゃったな……

 でも、エリアスが記憶を消したって言ってたから、昨日の午前中の事は覚えてない。それでも申し訳ない気持ちは無くならないよ……


 そんな気持ちでマドリーネを見ていたら、私に気づいてこちらを見る。



「どうかしましたか?」


「え?あ、ううん、何でもない!」


「そうですか?何か気になる事でもあるようなお顔をされていたので……」


「あ、えっと……そうだ、買い物とかは全部終わったの?エリアスのお祝いに使うのの!」


「そうですねぇ……実は昨日の午前中にある程度買い出しは済ませていたようなんですが、何故かその事を思い出せないんですよ……」


「あ、そう、なんだ……」


「私も、もう年ですかねぇ?」


「そ、そんな事ないよ!マドリーネはいつもちゃんとしてくれてるもん!」


「まぁ。それは嬉しいお言葉です。ありがとうございます。ですが……」


「どうしたの?」


「あ、いえ……何か忘れてるようで……必要な買い物は全て済ませてあったのですが、あと一つ行こうとしていた場所があったと思うんですよ。それが思い出せなくて……」


「あっ!」


「えっ?!なんですか?!どうされました?!」


「あ、うん、その……えっとね!御守り!私、エリアスに御守りをプレゼントしたいって思ってたの!」


「御守り……そうです!雑貨屋に行こうとしていたんです!」


「それ、私が昨日お願いしてたの!」


「ごめんなさい!私忘れちゃってて……!」


「ううん!それは仕方がないの!マドリーネは悪くないよ!」


「ですが……」


「あ、じゃあね、後で一緒に行ってくれる?私まだ一人で帝都は迷っちゃうから!」


「勿論です!」



 そうだった。昨日マドリーネと買い物行った時に、私は御守りをプレゼントしたいって思ってて、それを買いに行く前に連れ去られちゃったんだ。


 お昼を済ませて、マドリーネと一緒に帝都に御守りを買いに行く事になった。昨日の事は記憶に無い筈なのに、マドリーネは私としっかり手を繋ぐ。これからは自分の行動に気を付けないとな。今は心配してくれる人がいる。だからあまり心配させちゃダメだ。


 雑貨屋へ行って、お目当ての御守りを購入できた。エリアスからは、月に一度お小遣いを貰っている。「いらないよ」って言っても、「帝都に連れてって貰う時に欲しいものがあれば買うと良いから」って言って渡してくれる。今日はそれで御守りを買ったんだ。


 御守りも買えて、昨日食べたパイナポーをまた買って貰って、それを食べながら帝都を歩いていると、昨日は無かった露店があった。マドリーネも何か気になったみたいで、何だろう?って思って前を通ってみる。そこには売ってる物とか無くて、女の人が一人座っていて、大きな透明の球体のガラスに手をかざしていた。



「あ、占い……」


「うらない?」


「はい。この人は占い師です。未来を見て貰えるんですよ。当たるかどうかは分かりませんが。」


「へぇー?未来を?」


「気になりますか?」


「うん、少し。」


「私も気になります!見て貰いましょうか?」


「えー、どうしよう?先にマドリーネが見て貰って!それを見てから、私も見て貰うかどうか決める!」


「ふふ、良いですよ!」



 マドリーネが前にある椅子に座って、占い師に占って貰う事になった。何を占って貰うのかなぁ?って気になって、ついじっと見つめちゃう。



「本日は何をお知りになりたいのですか?」


「あ、はい、あの、私、まだ未婚なんですけど、このままずっと一人でしょうか?その、結婚は出来るんでしょうか……?」


「分かりました。では集中して、この水晶を見ていて下さい。」


「はい……!」



 マドリーネと占い師は水晶をじっと見つめる。すると、水晶の真ん中くらいの所に、グニャグニャって感じで何かが見えて、それが何なのかは私には全く分からなかったけど、占い師がそれを読み取ったかのように話し出した。



「お相手の方は近くにいますよ。もう知り合われています。」


「え?」


「貴女がいつも素っ気ない態度を取っているから、自分には脈無しだと思っているようですね。」


「え?!だ、誰ですか?!その人は?!」


「貴女より少しお若いんですが……そうですね……食事の……あ、料理人かしら?髪が明るい茶色の男性です。」


「え……あ!嘘っ!えーーっ!!」


「貴女がその気にさえなれば、すぐにでも結ばれる方ですね。相性も良いですよ。」


「そ、そうなんですねっ!ありがとうございますっ!!えー!信じられないっ!」



 マドリーネが驚いた感じで、でも嬉しそうに、両手を胸にしてニコニコしている。何だか分からないけど、きっと凄いんだろうな。うん、私も占って貰うことにしよう!


 マドリーネに変わって、次は私が椅子に座る。でも……何を占って貰おうかな……?



「可愛いお客様ですね。何を占いましょう?」


「うーん、えっと……あ、ずっとエリアスと楽しく暮らせるかどうかを占って欲しい!」


「分かりました。ではこの水晶をしっかり見て下さいね。」


「はい!」



 言われた通りにじっと見つめる。占い師もじっと見つめて水晶に手をかざしている。するとマドリーネの時と同じように、真ん中辺りがグニャグニャしだして、それが何か大きくなって……占い師がその様子を凝視していて、そのグニャグニャが段々大きくなっていって……



 パァァァァァァァァンッッッ!!!



 いきなり大きな音を立てて水晶が真っ二つに割れた!


 ビックリして、だけどそこから動けずに割れた水晶を呆然と見ていたら、占い師も驚いた顔をしながら水晶を見て、それからゆっくり私に目線を移す。見られて、私も占い師を見つめる。



「あ、の……あなた、は……」


「え?」


「いえっ!何でもありませんっ!」


「なに?えっと、どうしたの……?」


「いえ……っ!」


「どうして泣いてるの……?」


「すみませんっ!……あのっ!……どうか……どうか!ご自分の事をっ!そのっ!」


「え……?なに?」


「ご自分の幸せを……!」



 言うなり、占い師は割れた水晶を胸に抱きかかえて(うずくま)るようにして泣きだした。


 マドリーネと私は呆然として、どうしたら良いか分からずに暫くその場に佇んでいたけど、どうしようもなくて、「あの、帰りますね」ってマドリーネがそう言って二人分の代金を占い師のそばに置いた。

 何が何やら分からないけれど、そこにいても何も出来ないないから、二人でその場を離れる事にする。

 帝城へ向かって歩きながらも、あの占い師の事が気になる……


 

「あの人、どうしたのかな……?」


「分かりませんが……大切な水晶が割れて悲しくなったんじゃないですかねぇ?」


「そう、かな……?」


「きっとそうですよ!さ、帰りましょう!お祝いの準備がありますからね!」


「あ、うん……」



 そうやって帰ったんだけど、あの時少し占い師の感情を読んじゃったんだ。占い師は、私が不幸になると思ってる。それは自分で選んでそうしてしまうって思ってるみたい。その事を悲しく感じていて、泣いていたようだ。

 どんな不幸が、とかは分からなかった。マドリーネがその場を離れたから。でも気になる……何なんだろう……?

 マドリーネも気づいてる。良くない事があの水晶に映ったんだって。だからすぐにその場を離れた。


 私はエリアスとずっと一緒にいられたらそれで良い。自分からエリアスのそばを離れるなんてしないよ。だから大丈夫。うん、絶対に大丈夫!


 帝城へ戻って、ミーシャの部屋をリオと一緒に飾り付ける。もう夕暮れになってきてて、豪華な料理も運び込まれた。お菓子もあるし、ジュースもある。エリアスの好きなシャンパーヌってお酒もある!何だかエリアスの誕生日みたい!


 準備万端!いつエリアスが帰ってきても大丈夫!って思ってたら、エリアスが帰ってきて、この部屋を訪ねにきた!

 急いでクラッカーを皆が一つずつ持って、エリアスに向かって打ち上げる!


 パン!パン!!パン!!!って音が鳴って、天使がそこから出てきてエリアスの周りをフワフワ飛んで、笑顔で祝福をする。あ!頬にキスした!こんなことするなんて、聞いてない!

 ちょっと、ムーってした顔をしていると、ミーシャに頭を撫でて慰められた。うん、こんな事で怒っちゃダメだよね!


 

「なんだ?!なにやってんだ?これっ!」


「全快祝いだよ!元気になって良かったね!」


「全快、おめでとうございます!それと、裏組織の討伐も!ありがとうございます!」


「おめでとうございます!」



 皆が口々にエリアスにおめでとうって言ったり、お礼を言ったりする。ここにはメイドの皆もいて、執事達もいる。その状況をビックリした顔で見ているエリアス。本当に驚いてるんだな。

 いつの間にか天使は居なくなっていて、おめでとうの言葉と共に皆が拍手をする。エリアスは戸惑いながらも、嬉しそうに微笑んだ。



「エリアス!これ!」


「え?」


「お祝いだから、プレゼントだよ!」


「マジか?!プレゼントとか用意してくれたのか!」


「だって、エリアスにはいつもして貰ってばっかりだから!」


「んな事……!」


「あ!エリアス!泣かないで!」


「泣いてねぇ……!」


「ふふ……あ、ねぇ!開けてみて!」


「あぁ……ってこれ、なんだ?」


「えっとね、御守りなんだよ!邪気を払ってくれるんだって!」


「すげぇ……ありがとな!すっげぇ嬉しい!」


「リュカ、それってピアスだよ?」


「え?リオ、ピアスって何?」


「耳に穴を開けて付ける飾りだよ。エリアスさんは耳に穴を開けてないんじゃ……」


「え?!そうなの?!ごめん!エリアス!あの、明日取り替えて貰うっ!」


「いいよ。リュカが選んでくれたんだろ?」


「そうなんです!すっごくすっごく悩んで、エリアスさんに合いそうなのを一生懸命選んでたんですよ!」


「マドリーネ!そんな事言っちゃダメだよ!」


「ハハ……ならこれが良い。」



 そう言ってエリアスは、ピアスを思いっきり耳に突き刺した。両耳そうして、私を見てニッて笑う。痛い筈なのに、痛そうな顔一つしない。流石だ!



「どうだ?似合ってるか?」


「うんっ!凄く似合ってる!格好良い!」


「お?!格好良いか!そっか!リュカに言われんのが一番嬉しいな。ありがとな!」


「うん!あ、ご馳走もね、いっぱいなの!食べよう!」



 皆で乾杯してから、たくさんのご馳走をいっぱい食べた。エリアスも嬉しかったみたいで、終始笑いながらシャンパーヌを飲みまくっていた。後から来たゾランにもいっぱい飲ませて、二人で可笑しなテンションになっていってた。


 まだまだ飲みが止まらないエリアスを見て、ミーシャは先に寝るように言ってくる。よっぽど嬉しかったのか、エリアスは終始ご機嫌で、お休みのチュウだって言って顔中にされた。


 今日はリオの部屋で寝かせて貰うことにする。


 エリアスが楽しそうで嬉しそうで良かった。お祝いが出来て良かった。私も凄く楽しめた。


 ベッドの中でそうやって、今日あった事を一つ一つ思い出していく。気になったのは、あの占い師の言った事。でも、きっと何でもない事なんだ。気にしちゃダメな事なんだ。私はこのままずっとエリアスと一緒に暮らして、今日みたいに楽しく過ごすんだ。


 だからあの事はもう忘れよう。


 うん、忘れよう。





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