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黒龍の娘  作者: レクフル


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帝城へ


 朝からちょっとゴタゴタしたけど、カイルがアユラを慰めつつ、皆に色々言い聞かせていたみたいで、少しずつ落ち着いてきた。


 その様子を見て、俺は反省しっぱなしだった。


 あれからすぐにリュカに腕輪を返して嵌めさせたけど、アユラがあんな感じになったのに対して、リュカはそれを平然として嵌めていたから、それを見た子供達は奇異なものでも見るようにリュカを見た。


 因みに、腕輪には能力制御の効果だけではなく、精霊や霊が見えるようになり、能力があれば精霊の加護を得られる、といった効果も付与されている。アユラはそれで霊を見てしまったんだろうな。


 しかし、皆のそんな感情を読んだのか、リュカは下を向いて何も言わずに、暫くは黙ったままになった。


 ここでの事はカイルに任せることにして、俺はリュカとオルギアン帝国の帝城へ行くことにする。もちろん、出掛ける前に子供達との声かけとハグは忘れずに、だ。


 空間移動で帝城にある俺の部屋までやって来た。


 大体いつも同じ位の時間に俺が部屋に来るから、メイドは外で待機してくれている。テーブルに置いてあるベルを鳴らすと、部屋へ来てお茶を出したりしてくれる。今日もそうして貰ってから、ゾランを呼んで貰うことにした。


 ゾランが来るまでの間、リュカは何やら寝室へ行きたがる。どうしたのか?と思って、一緒に寝室に行くと、ベッド脇にある小さな棚の上に置いてあった、アシュリーの肖像画をジッと見つめている。



「リュカ、それがアシュリーだ。綺麗だろ?リュカにそっくりだ。」


「アシュリー……」


「あぁ。リュカのお母さんだ。」


「おかあさん……」



 リュカは肖像画を手に取ると、それを胸に抱きしめた。リュカの気持ちを読み取ると、言い表せねぇ位に悲しみと嬉しさと、それから懐かしさと愛情が入り交じった感じだった。


 肖像画を胸にしたリュカを、肖像画ごと抱きしめる。会った事はない筈だ。けど、感じるものがあるかも知んねぇ。リュカのそんな姿が凄く愛しくて愛しくて、どうしようもない位の感情が胸を締めつける。

 俺はリュカをそのまま抱き上げて、寝室を出た。


 それから少しして、ゾランがミーシャと一緒に部屋に来た。手にはなんか大きな袋を持ってる。



「エリアスさん、リュカ、おはようございます!昨日はゆっくりできましたか?」


「まぁ、そう、だな……また後で話しを聞いてくれねぇか?」


「え?……はい。分かりました。ではまず報告ですが、あ、ミーシャ……」


「はい!リュカちゃん、あのね、リュカちゃんのお洋服をいっぱい用意したの!ちょっと合わせてみたいから、別室に一緒に行きましょう?エリアスさん、構いませんか?」


「あぁ、ありがとな、ミーシャ。」



 ミーシャは俺に軽くお辞儀をして、袋を持ってリュカと別室へ向かった。



「では報告させて頂きます。昨日ラミティノ国のラパスの街を襲った魔物は、恐らくラミティノ国とアーテノワ国の国境付近にある、近隣の者達からは魔物の巣窟と呼ばれていた場所から来たと思われます。」


「そんな近くにそんな場所があったのか?!」


「まぁ、近くに済む者のみが知る、と言った感じだったとは思います。ですが、そこからは魔物の被害はあまり無かったようですよ。」


「魔物がいるのに、か?」


「はい。踏み込まない限り、ほぼ被害はない、とされていました。黒龍の加護が有る、無しに関わらず、ここはそういう場所だったようですね。」


「もしかして、その場所にリュカがいたのか?」


「考えられますね。誰も踏み込まない場所でしたからね。地元の住民以外は知らない情報だったので、こちらにも情報は回って来ませんでした。」


「そうだったのか……あの場所にフェンリルと魔物達はいて、そこでリュカは俺から離れていた一年半の間生活していたのか……」


「そう、かも知れませんね……ヴィオッティ伯爵家のご子息、レオナルド・ヴィオッティが、二日前の夜に、この魔物の巣窟に足を踏み入れています。恐らくその時にリュカを見つけたんでしょう。」


「レオナルドはなんでそんな場所に行ったんだ?」


「前日から泊まりに来ていた従兄弟達とゲームとして賭けをしていたそうですよ。それに負けて、その罰ゲームが魔物の巣窟へ行く、といった事らしかったです。」


「なんでそんな危険な所に行かせるんだよ?!ったく……」


「従兄弟達はそんなに恐ろしい場所とは思っていなかったようですね。それと、本当に行くとも思っていなかったようです。まぁ、その場のノリと、売り言葉に買い言葉的な事だったんじゃないでしょうか?」


「だとしても、行動が軽率すぎんだろ?!これだから世間を知らないお坊っちゃんはよぉ!……けど……だからリュカを見つけられたのか……」


「そうですね。しかし……」


「リュカがその場から逃たから、リュカを連れ戻しにラパスの街を襲ったか……!あの時魔物を従えてたのはフェンリルだ。リュカが来るまでは、魔物の巣窟ではフェンリルが魔物達を総ていたんだろうな。」


「そう考えられますね。今まで街が魔物に襲われるなんて事は無かった事でしたので、領主の対応が遅くなってしまったそうですが、エリアスさんがたまたま近くに来られていた、との事で、被害はかなり減らせました。」


「たまたまじゃねぇけどな……」


「そうですけどね。建物や怪我人は回復していますし、何人にも目撃されてましたが、亡くなった人が生き返ったとの報告も多くありました。」


「リュカに宿るセームルグにそうして貰ったからな。」


「やはりそうでしたか。けれど、これはエリアスさんの功績となっていますよ。」


「え?!何でだ?!俺、生き返らせるとかは無理だからな!」


「いや、それは分かってますけど、その現象の原因を探れば、それはもうエリアスさんがした事だ、という事実となってしまったんですよ。それは観念して受け入れてください。リュカの為にも。」


「……分かったよ……で、俺、ヴィオッティ伯爵にリュカを保護してくれたことの礼をしに行きてぇんだ。あと、ラミティノ国の国王にも今回の件を報告しねぇとだしな。」


「ヴィオッティ伯爵は、街を守ってくれたエリアスさんに、こちらから礼をしなければならないのに!と、大変恐縮されていましたよ。」


「いや……街が襲われた原因を考えるとそういう訳には……」


「それは伏せておきましょう。理解して貰うことも難しいでしょうし。」


「……そうだな……」


「それと、本日の昼過ぎ頃に、ラミティノ国王にお会いできるよう取りつげました。ラミティノ国王も、エリアスさんに大変感謝されておりました。」


「なんか……いたたまれねぇな……」


「仕方のない事です……それとですが、アーテノワ国とラミティノ国辺りの魔物の動きが、どうやらまた活発になってきているようです。連絡を取り合っている時に、魔物の被害が寄せられている、との報告も受けましたから。」


「最近はおさまってたのにな。もしかしてこれも……」


「その可能性はあるかと……」


「分かった。じゃあ、俺はまずヴィオッティ邸へと向かう。それからラミティノ国王に会う。その後、魔物の被害のあった場所へ行く。」


「はい。そう言われると思っていました。被害があった場所は書面でお渡しします。」


「それとリュカの事なんだけど……」


「やはり何かありましたか?」


「何かあるとか……そういう事ではないかも知んねぇけど……」


「なかなか難しいとは思います。リュカを特別視するなと言うのは、エリアスさんには出来そうにありませんからね。それが嫉妬の対象となった、とかでしょうか?」


「何でも分かんだな、ゾランは……」


「これは容易に予測出来る事ですからね。ご自分の安心出来る場所が、皆等しくそうだとは限らないと言うことですよ。」


「そうだな……それに……リュカは人の感情が読めるんだ。自分に向けられる良くない感情も全部読み取ってしまう。そうなると、あの場所はリュカにはキツい……」


「そうなんですか?!え、それはリドディルク様と同じ能力って事ですか?!」


「引き継いだとかじゃねぇみたいだ。そうじゃなくて、練習したら出来るようになったって。」


「え?!練習で?!」


「因みに、俺も練習したら出来るようになった。」


「本当ですか?!どうやるんですか?!教えて下さい!」


「人の考えが知りたいのか?知らねぇ方が良いかも知んねぇぞ?」


「そうかも知れませんが、こんな仕事をしていると、知っていた方が有利な事も多いですから!」


「分かったよ……」



 ゾランに、リュカに教わった通りの方法を教えてみる。何度もゾランは試していたようだが、上手くいかないみたいだ。



「そう簡単には出来ませんよね……また練習しておきます。それで、リュカはどうされるんですか?」


「家には連れて帰れねぇ……俺が浅はかだった。けど、ここは無理だろ?だから……」


「エリアスさんのお子様だ、とすれば問題ないのでは?」


「は?何でだ?!これだけアシュリーに似てんだぞ?!」


「エリアスさんは幻術が使えるじゃないですか。」


「……そう、か……その手があったか……!」


「ご自分の能力を使いこなせてませんよね……」


「幻術は最近ほぼ使ってねぇからな。それに、自分の思うように見せられるようになってからは日も浅いし……」


「エリアスさんがいない間は、ミーシャが面倒見れますよ。リオと同い年位ですし、読み書き位であれば、ミーシャが教えられますから。」


「そうか!それは助かる!ありがとう!」


「これくらいの事はどうって事ありませんよ!」


「それと、これも話しておきてぇんだけど……」



 昨日の夜、セームルグと話した事をゾランにも話す。ゾランは困惑した面持ちで、俺の話を聞いていた。


 リュカを守る為の方法。それは、不死身とされている魔物を捕まえる、と言うことだった。その魔物を探しだす事から始めなきゃな。


 不死身の魔物を捕まえるとか、従えさせられんのかとか、それはやってみねぇと分かんねぇ。けど、んな事言ってられねぇ。


 リュカは今、8歳か9歳位だ。力が覚醒すんのは、早くて後一年ちょっとだ。そうなったら今より力の浪費が多くなる。どれくらい多くなるか、こればっかりはセームルグにも読めねぇみたいだからな。だから、なるべく早くに対処しないといけない。


 不死身の魔物……


 聞いたこともねぇ。どこにいるのかも分からねぇ。分かったとしても、簡単にどうにかできる相手じゃねぇかも知んねぇ。


 けどやるしかない。それしか方法はないみたいだからな。


 リュカの笑顔を守る。俺がどうなろうとも、俺にはそうする義務がある。


 例え俺がどうなろうとも……






 

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