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黒龍の娘  作者: レクフル


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33/116

嫉妬


 なんか顔が変な感じがする……


 ムズムズする……?なんかくすぐってぇ……


 って、鼻から息ができねぇ!


 そんな感じで目覚めると、リュカが俺の顔で遊んで笑ってた。


 やべぇ……めっちゃ可愛い……!


 こうやって、誰かの存在がそばにあって目覚めるのって久しぶりだな。やっぱ良いよな。すげぇ良いよな。


 そうやってベッドの上で少しの間リュカと微睡(まどろ)んでいた。


 昨日の事をリュカに教えて貰う。やっぱ色々あったみてぇだ。皆、リュカの存在が気になるんだろう。入所してきた子供には皆興味があるから色々聞いたりもあるんだろうけど、リュカは俺の子供って言ってるから、それもあって皆が色々聞きたいんだろうな。


 やっぱここに置いていかねぇ方が良いかも知んねぇ……聞かれた事に対して、リュカはなんでも正直に話すだろう。けど、それを信じて貰えるか、どこまで話が通用するか、その判断は出来ねぇだろうからな。聞かれた言葉も全部は把握出来ねぇだろうし……


 子供だからって高を括っていたな……


 逆だ。子供だから遠慮がねぇ。感情にも素直だ。それが良いことでもあるんだけどな。小せぇ頃から大人の顔色を伺って自分を守るように生きてきた俺と、ここにいる子供達は違う。子供には子供らしくあって欲しかったから、俺がそうなるようにこの場所を作ったんだからな。


 考えが浅すぎたな……ったく、マジで自分に腹が立つ!


 リュカは俺と一緒に行くとなったら、やっぱり凄く喜んだ。きっと不安で仕方なかったんだな。その時、リュカが感情を読める事が分かった。すげぇ、これって練習して出来るようになんだな!


 って事で、リュカに感情を読む方法を教えて貰った。


 相手の魔力の流れを読み取って、俺の魔力と同調するようにしていく。リュカの思考を探るようにするけど、見えそうで見えねぇ……

 そっと手を握ると、リュカの思考が頭に流れてきた。



 『どうしたのかな?大丈夫かな?練習してるのかな?』



 俺を心配する思考が読み取れた……!すげぇ!こうやって読み取れんだな!けど、もっと練習が必要だ。触んねぇと読めなかったからな。


 リュカを優しく抱き寄せる。その時にリュカの思考を探ってみた。俺の魔力とリュカの魔力を同調させて、リュカの記憶を辿るようにしていく……


 ……暗闇だ……そこは寒くて、ぼんやりと見える場所に白い大きな犬……?フェンリルか……?その中で震えながら自分の体を守るようにうずくまっていて……



 悲しい……怖い……寂しい……寒い……ここは嫌だ……暗いの、嫌だ……誰か、助けて……お願い、助けて……お父さん……


 でもダメだ……私が奪ったから……その命を、お父さんとお母さんを……レオンもブランカも肉をくれた人間も……私が命を奪ったから……だから私がお父さんの代わりにならなくちゃ……このままじゃ魔物が人間を容赦なく襲う……それを私が止めないと……


 でも……帰りたい……帰りたい、あの場所に……温かいエリアスの元へ……帰りたい……


 誰か……お願い……でもそれはダメで……でも……


 会いたい、エリアス……


 エリアス……



 リュカの記憶が、思考が、俺の頭の中を埋めていく……!こんな……っ!こんな風に求めて、けど求める事にも戸惑って、少ししかない俺との記憶を頼りに生きてたってのか……!


 うっかり涙が出そうなのを何とか堪える。気を付けねぇと、読んだ相手の思考にのまれそうになっちまうな……ヤバかった……


 けど……そうか、リュカはそうやって人の気持ちを読むようにしてたんだな。これは、言葉を話せない魔物と意志疎通が出来るようにフェンリルが教えたんだろうが、俺の感情や思考をこれ以上読ませる訳にはいかねぇ……


 まだリュカには言えねぇ。リュカの命は奪わねぇと長らえる事が出来ないってことは。だから読まれねぇようにする。これは前に、感情が読まれないように練習して出来るようになった。まぁ、ディルクに読まれないようにしたかったんだけど、こうやって役立ってくれて良かった。

 

 リュカの思考に心を乱されそうだったから、落ち着かすように大きく息を吸って吐き出す。するとリュカが不思議そうに俺を見たから食事に行こうって笑った。


 一階に下りて朝食を摂る。


 リュカがジャムを食べて凄く驚いて美味しそうに食べてる。こういうのも食べた事がなかったんだな……そう考えると胸が苦しくなる……


 

「へぇー?お嬢様はジャムとか、庶民的なのは食べないもんなんだねー?」



 ルーナはリュカにそう言った。


 ただそう言っただけだけど、その言葉一つに俺の気持ちが反応してしまう。そうじゃねぇ、違うっ!リュカはちゃんとした食事を、人としての食事をしてこれなかっただけなんだ!そんな風に偏見で言うの、止めてやってくれ!


 そういう気持ちからか、少しルーナにキツい言い方をしてしまったかも知んねぇ。ルーナの気持ちが動くのが感じられる……さっきから練習で魔力を感じ取ろうとしてたからだけど、触れてなくても動きは分かるようになった。けど……


 なんだ?ルーナは感情が乱れやすいのか?


 ふと見ると、リュカの口元にパンくずがついている。ったく、こんなところもアシュリーそっくりって、マジで可愛い過ぎんだろ……


 それを注意してパンくずを取ると、俺の口の所にもジャムがついてるって言われた。大人の男なのに、なにやってんだ、俺は。って思ってたら、リュカがそれを拭ってくれる。お互い口についたのを食べて、二人でニッコリ笑い合う。なんか、こんなやり取りがすっげぇ懐かしい。アシュリーとの事を思い出されて、すげぇ癒されてるような感覚になる。


 そんな時、強烈な感情が俺達に……いや、リュカに向けられてるのが分かった。これは……ルーナか?!


 ルーナは、俺とリュカは本当の親子じゃないって思ってる……?俺が何処かからアシュリーと似てる子を探して連れてきて……それで育ててアシュリーの代わりにしようと考えてるって勘違いしてるんだな……


 だから、リュカの事を嫌ってる……けどなんでだ?なんでリュカの事を……って、俺の事が好きだからか?!マジか!ってか、いつからだ?!いや、そんなことより、だからリュカと俺が仲良くしてるのが許せねぇのか?!その矛先は俺じゃなくて、リュカに向かってる……!


 マジか……


 けど、ルーナは良い子だ。皆にも優しいし、俺にも、他の職員にもそうだ。俺に関してだけ、か……?



「え、なに?二人してあたしを見て……なんか顔についてる?」


「あ、いや、なんでもねぇ……」


「なら良いんだけど……」



 リュカを見ると、リュカも呆然として俺を見た。


 リュカはこのルーナの感情にずっと気づいてたんだな……これは……正直キツい……!


 自分の事を良く思っていない相手と一緒に過ごせって、なんかあったら頼れって、俺はリュカに言ってたんだからな。そりゃあ不安にもなるな……けど、目に見える感じはそうじゃない。ルーナはリュカにも優しく話していたし、いつもと同じで皆にするような感じで接していた。


 見える表情と読める感情がこんなに違えば、リュカは凄く困惑しただろうな。置いていかれるのに不安がる気持ちが、今のでやっと分かった。マジで俺は鈍感だったんだな……


 そうしてると、皆がゾロゾロ下りてきた。口々に俺達を見て、「おはよう!」「あ、リュカだ!おはよう!」って声が聞こえる。リュカがキョロキョロと皆を見て、それから誰かを見つけたみたいで椅子から下りて近づいて行った。それはアーネの元だった。



「アーネ、おはよう」


「あ、リュカ、おはよう!なんか……昨日はごめんね?!」


「ううん、アーネ、やさしかった」


「そ、そんな事ないよ!……普通だよ?」


「うれしかった、ありがとう」


「そう?ふふ……良かった、リュカも嫌な気持ちになったんじゃないかなって、ちょっと心配してたんだ……」


「だいじょうぶ」


「なになに?二人仲良くしちゃってさ!」


「おはよう、リュカ!やっぱリュカはエリアスと一緒に寝たんだねー!」


「そりゃそうでしょ?親子なんだからー。」


「えー?いいなぁー!羨ましいー!」


「ほら、見て、リュカの手首にある腕輪!エリアスとお揃いなんだよ!」


「本当だ!マジでいいな、それ!」


「アシュリーも同じの、してたよね?」


「家族って感じがするよな。やっぱり俺達とは違うか……」


「そんなこと、ない、みんな、なかよし」


「いや、それはやっぱ違うと思うぞ?リュカだけ特別だ!」


「それは仕方がないって!そんなもんじゃん?」


「とくべつ……?」


「そうされてる本人は分からないよな。」


「ちょっと、リュカにまたそんな事言って、可哀想だって!」


「でたー!良い子発言のアーネ!」


「だからそんなんじゃ……!」


「ねぇリュカ、その腕輪ちょっと嵌めさせてよ?!」


「え?」


「あ、私もそうさせて欲しい!ちょっとだけ貸してー!」


「これは、だめ、だから」


「なんでよ?ちょうだいって言ってる訳じゃないよ?少し貸してって言ってるだけだよ?」


「でもこれは、のうりょく、せいぎょので……」


「ちょっとだけだって!」


「やめなよ!」



 席につきながら、皆とリュカの様子を見ていた。けどなんだ?なんか騒いでるけど、何話してるんだ?ルーナの感情は分かりやすかったから読み取れたけど、これだけ多くの感情とかはやっぱまだ俺には無理だ。けど、すぐに俺が立ち入るのもどうかと思うし……


 

「いいじゃん!ちょっとだけ!ね!」


「そんな、無理に取ったら可哀想だよ!」


「ケチケチするからだろ?すぐに返すんだし、そんな大袈裟に言うなよ!」


「だめ、それは!リュカ、うばうから、だから……!」



 ……なんだ?何してる?リュカの腕を取って……腕輪をリュカから外した……?!それをアユラが腕に嵌めた。いや、それは普通の腕輪じゃねぇぞ?!


 ガタッて立ち上がって行こうとして、でも足を止めて様子を伺う事にする。



「ちょっとだけだって!……うわぁ!格好良い!やっぱ良いなぁ、これ……え……」


「え!?アユラ!どうしたの?!」



 いきなりアユラが恐怖に顔を歪めて、それから崩れ落ちるようにして倒れた!なんでだ?!どうしたんだ?!


 急いで駆け寄ると、アユラが倒れてグッタリしている。どうやら立ち上がれねぇようだ。抱き上げて、すぐにアユラの手首にあった腕輪を外す。するとアユラはやっと呼吸が出来た、って感じで大きく息をして、それから大声で泣き出した。



「アユラ、大丈夫か?!どこか痛いとことかないか?!」


「なんか……凄い力で押さえ付けられてる感じがして立っていられなくなって……!息も……出来なくてっ!……それに……いきなり何か変な……透けた人が私の目の前に……怖かったぁー!」


「そっか……」



 アユラを抱きしめて、落ち着かすように背中を撫でる。俺とかリュカにはそんな事は起こらなかったけど、普通の能力の子にはそんな風になるんだな……



「腕輪をつけてみたかったんだな……?」


「うん……エリアスとお揃いなのが……羨ましくて……」


「そっか……この腕輪な?能力制御の腕輪なんだ。俺とかリュカは特異体質でな?この腕輪が無いと人に触れねぇんだよ。だから腕輪をつけて、能力を抑える必要があるんだ。」


「そうだったの……?」



 まだ涙を流しながら、アユラは震えていた。こんな事で……腕輪一つでこんな風になるんだな……


 リュカは両手を後ろに隠すようにして、誰にも触らないようにしていた。下を向いて、今にも泣き出しそうな顔をして……


 やっぱリュカをここに置いていけねぇ……





 

 

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