表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍の娘  作者: レクフル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/116

感情を読む


 陽の光が優しく顔を照らす。


 眩しく感じて、思わず目をゆっくり開けると、そこにはエリアスの顔があった。

 エリアスは私を抱き包むようにしていて、温かい腕の中で私は眠っていたんだ、と気づく。


 眠っているエリアスの顔にそっと触れてみる。頬がスベスベしてる。サワサワって撫でて、それからつついたりつねったりしてみた。わぁ、皮が柔らかく伸びるー!


 ふふ……なんだか面白いな……私の肌とはちょっと違う感じだ。鼻もツンツンしてから、ギュッて摘まんでみる。あ、「ふがっ!」って言った!


 

「こら……何してんだ……?」


「うふ……うにーってなった」


「ハハ……面白かったのか?」


「うん」


「……おはよ……リュカ……」


「おはよう、エリアス」



 エリアスが微笑んで、私の頭を撫でてくれる。いいな、こうやって目覚めるの。凄く心地よく感じるし、嬉しい気持ちがいっぱいになる。思わずエリアスの胸に頭を埋めてグリグリしてしまう。エリアスは「何やってんだ?」って笑いながら言って、頭をワシャワシャする。ふふ……なんか楽しい……


 ゆっくり起き上がって、ベッドに座った状態で窓の外を眺める。朝の光が射し込んできていて、部屋の中全体が明るい。真っ暗じゃないって、すごく安心する。


 エリアスも起き上がって、私の頬をぷにーってつねった。「ハハ、柔らけぇ!」って笑ってる。つられて私も笑う。エリアスのそばは良いな……安心するし、嬉しい気持ちが溢れてくる。


 けど、私は昨日、いつの間に寝ちゃったんだろう?あまりよく覚えてないや……


 

「エリアス、きのうわたし、なんでねた?」


「え……あ、うん……疲れてたみたいでな。気づいたら寝てたぞ?」


「エリアス……?」



 エリアスの言葉と感情が違う感じだ。なんでだろう?



「それよりさ、昨日リュカは皆で風呂に入ったろ?どうだった?皆よくしてくれたか?」


「みんな、やさしい」


「そっか!それは良かった!」


「リュカは、おじょうさま?」


「え?」


「おじょうさまは、ダメ?」


「なんだ?なんでそんなふうに言ってんだ?」


「ふく、きれい、ロレーナにきせてもらった」


「ロレーナ?」


「ロレーナはめいど」


「あ……そうか……!昨日のヴィオッティ邸にいたメイドの名前がロレーナか!そういや、昨日着ていた服は……あそこで着せて貰った服だったな!ってか、俺も気が回らねぇな!」


「エリアス?」


「昨日着ていた服が綺麗だったから、リュカはお嬢様だって思われたんだな?で、服を着せてくれたロレーナはメイドだって言ったんだな?」


「うん」


「マジかー……いや、リュカは悪くねぇよ?!ってか、誰も悪くねぇからな!」


「うん……でも、アーネが……」


「アーネがどうした?」


「アーネ、やさしい、でも、とうぞく、おそわれたって」


「……アーネが盗賊に襲われた……?いや、アーネの両親が盗賊に襲われて……アーネは元々商人の娘だからな。裕福に暮らしていたのが一変して……え?それがどうしたんだ?」


「リュカ、じじょうあるから、きいちゃダメって、アーネいった、みんなアーネとけんか?した?」


「そっか……色々聞いてきたのをアーネが庇ってくれたのか?それで、逆にアーネが……」


「リュカ、わるい?リュカ、おじょうさま?」


「いや、リュカは何も悪くないからな!もちろんアーネも悪くないし、皆が悪い訳じゃない。それと、リュカはお嬢様とかじゃねぇ。リュカは……俺の子供だからな。」


「エリアスの……」


「まだ受け入れられねぇかな……うん、それはゆっくりで良い。急に何でもは難しいからな。でも、そっか……昨日のあの時間だけでもそうなるのか……」


「アーネ、なみだ」


「泣いちゃったのか……やっぱりリュカを理解して貰うのは難しいかな……」


「むずかしい?」


「いや……なぁ、リュカ。昨日はここで待っててくれって言ったけど、やっぱり俺と一緒に来るか?」


「うん!いっしょ!いく!」


「そうだな。そうしよう。やるべき事も出来たしな。」


「やるべきこと?」


「ん?あぁ……俺の仕事の事だ。」



 エリアスはニッコリ笑って言うけど、悲しい感情になってる。なんでだろう?



「エリアス、かなしい?」


「え?なに?なんで……」


「エリアスのきもち、かなしい、から」


「リュカ……?!もしかして……感情が読めるのか?!」


「わかる」


「マジか……ディルクの力でも受け継いだのか……すげぇな……」


「でぃるく?」


「あ、いや、ディルクはアシュリーのお兄さんでな、リュカの伯父さんなんだ。ディルクは人の感情が読めたんだ。」


「リュカ、れんしゅう、した」


「練習して出来るようになったのか?!」


「フェンリル、おしえて、くれた」


「えっ!?どうやるんだ?!教えてくれ!」


「んーと、ま、まりょく?を、かんじる」


「相手の魔力を感じるんだな?」


「うん、それと、おなじにする」


「魔力を感じて同じに?同じ……同期させるとか、同調させるって感じか?!」


「んー、そう?かな?」


「分かった。やってみる!」


「え?」



 エリアスは何やら難しそうな顔をして、手をグーにしたりパーにしたりして、それから目を閉じたり力を入れてるような感じにしたりして、そんな事を暫くしてから、私の顔をじっと見て手をそっと握った。


 どうしたのかな?大丈夫かな?練習してるのかな?



「どうしたのか……大丈夫……あぁ、うん、練習してたんだ。」


「エリアス?!」


「今リュカが思ってた事と合ってたか?」


「うん!すごい!エリアス、すごい!」


「いや、まだまだ練習が必要だけどな。触らねぇと読めなかったし。けど、これでリュカの気持ちが分かってやれるな。」


「わかる?」


「あぁ。俺、どうやら鈍感みたいでな。ハハ……これで少しでも人の気持ちが分かってやれるかな。」



 凄い!エリアスは凄い!私も練習して出来るようになったけど、こんなにすぐに出来るようになるなんて!


 私がビックリした顔をしてしていると、エリアスはニッコリ笑って頭をナデナデしてくれた。それから、ギュッって抱きしめてくれる。


 けど、昨日はここに残るように言われたのに、なんで一緒に行くことにしたんだろう?私はその方が嬉しいから良いんだけど……


 エリアスが食事に行こうって言ったから、うん!って答えて一緒に一階に下りていく。まだ皆いなくて、ルーナだけがバタバタと忙しく動いていた。



「あ、エリアス、おはよう!リュカもおはよう!」


「ルーナ、おはよう」


「今日も朝から忙しいんだな、ルーナは。」


「うん!あ、でももう食べられるよ?それとも皆が来るの、待っとく?」


「先に貰おうかな。自分でするから、ルーナは用意しててくれ。」


「あ、うん、分かった。」



 エリアスは私に、「ここに座ってろな?」って言って席に座らせてからキッチンに入って行って、二人分の朝食を乗せたトレーを持ってきてくれた。

 

 今日のも美味しそうで嬉しくなってくる!



「「いただきます!」」



 エリアスと手を合わせて言ってから、パンを口にすると、甘いのが口の中いっぱいに広がる……!ビックリして見てみると、赤いのがパンの中に入ってた。凄く甘くて美味しい!なにこれ!



「どうした?そんなビックリした顔して?」


「これ!おいしい!あかいの!」


「え?あぁ、それはジャムだな。ベリーイチゴって言ってな?甘酸っぱい味の果物なんだ。それを甘く煮て作るんだ。」


「べりいちご、じゃむ、おいしい!」


「え?リュカって、ジャム食べるの初めてなの?」


「あ、そう、なんだ……ろうな。」


「へぇー?お嬢様はジャムとか、庶民的なのは食べないもんなんだねー?」


「え?しょみん……てき?」


「ルーナ……何を聞いたか知んねぇけど、リュカはそうじゃないんだ。だからそんな風に言わないでやってくれねぇか?」


「え、でも……」


「なんか誤解されちまってるみてぇだけど、リュカは普通の子なんだ。お嬢様とか、そんなんじゃねぇからさ。」


「うん……分かった……」


「リュカ、おじょうさま、ちがう」


「分かったって……」


「あ、ほら、リュカ、また口のとこにパンくずつけてる。ったく、こんなところはアシュリーと一緒だな。」


「エリアスも、くち、じゃむ、ついてる」


「え?」



 背伸びしてエリアスの口についてるジャムを指で拭って、指についたのをペロリと舐めた。エリアスは私の口のとこについてたパンくずを取って食べた。二人で顔を見合わせて、ふふって笑う。なんか、楽しいな。


 そうしていると、ゾワッてした感じがきて、背筋がゾクゾクした。ビックリして見ると、ルーナがこっちを見てた。なんか……ルーナの表情は普通だけど、心は怒ってる……私とエリアスが仲良くしてるの、嫌なんだ……


 私がビックリした顔をしてるのと同じくらい、エリアスもビックリした顔をしていた。もしかして、エリアスにも分かったのかな……



「え、なに?二人してあたしを見て……なんか顔についてる?」


「あ、いや、なんでもねぇ……」


「なら良いんだけど……」



 そう言うとルーナは出来上がったおかずを向こうへ置きに行った。私とエリアスは二人、顔を見合わせて……



「リュカ……今の、感じたのか……?」


「……うん……」


「そうか……リュカはずっと……?」


「……うん……」


「分かってやれなくて……悪かった……」


「ううん?だいじょうぶ」


「今になってディルクの気持ちが分かるなんてな……あ、いや、リュカの伯父さんのディルクもな?小さな頃からそうだったから、時々頭がいっぱいになって倒れてたって言ってんだ。もっと詳しくリアルに感じてたんだとは思うけど……そうか……俺、全然分かってなかった……」


「エリアス、すごい、さわってない、わかった」


「あぁ……分かりやすい感情だったからなのかな……けど、そうだったのか……」



 ルーナの気持ちが分かったのか、エリアスはちょっと困ってる感じだった。けど、エリアスからの感情が分からなくなった。なんでかな?まぁ、エリアスは嘘を言ったりは多分しないと思うから、大丈夫だとは思うけど……


 私を見て、困ったように笑うエリアス。


 エリアスに感情を読むの、教えない方が良かったのかも知れない……








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ