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黒龍の娘  作者: レクフル


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帰って来て


 一人で自分の部屋で眠っていたはずなのに、いつの間にかエリアスと一緒に寝ていてビックリした。


 エリアスも驚いてて、でも私がいたことを嬉しく思ってくれた。


 そう言えば、私は自分の部屋から抜け出して、エリアスのベッドに入っていった夢を見た。けど、それは夢じゃなかった。私は無意識にエリアスの元へ行っちゃったんだ。

 やっぱり離れて寝るとか、我慢出来なかったみたい。

 昨日は寂しくて寂しくて、どうしようもなかった。

 

 もう一人は嫌だ……


 この場所が好きだけど、それはエリアスと一緒にいられるからだ。エリアスの優しい空気がこの場所と合わさって、私を包み込んでくれているからだ。


 今日エリアスが帰ってきたら全部打ち明けよう。怒られるかも知れないけど、やっぱり隠し事はしたくない。隠すから一緒にお風呂に入れないし、一緒に寝れない。それがこんなに辛いって思わなかった。これなら怒られた方がマシだった。

 だから言おう。そして、今日は一緒に寝よう。エリアスにギュッてして貰おう。

 そしたら私もエリアスを目一杯ギュッてするんだ。


 そう決心してエリアスを送り出す。

 ついエリアスを呼び止めてその事を言おうとしちゃったけど、エリアスは急いでたから今は言っちゃいけない。

 夜まで我慢我慢……


 朝の片付けとかを終えて帝城へ行く。


 リオの部屋へ行くと、いつものようにミーシャとリオとテオがいた。

 テオは私を見て、嬉しそうに抱きつきに来た。可愛くて、私もギュッて抱きしめちゃう!



「リュカちゃん、もう大丈夫なの?」


「うん、ミーシャ、もう大丈夫だよ!」


「良かった……! リュカが元気になって本当に良かった!」


「リオ、心配かけてごめんね? もう元気になったよ!」


「でも、無理はしないでね? 辛くなったらいつでも言うんだよ?」


「うん、分かった!」



 みんなが私を心配してくれていて、本当に申し訳ない気持ちがいっぱいになった。

 でも、元気な私を見て安心して貰えて良かった。


 先生に勉強を教えて貰う時も、先生も凄く心配してくれていたのを知って、私は幸せ者だな、と感じた。

 この環境を大切にしたい。

 私を思ってくれている、この優しい人達を大切にしたい。

 心からそう思う。


 勉強が終わってエリアスの帰りを待つ。けれど、エリアスはなかなか帰って来ない。ピンクの石を握ったけれど、気づかなかったのか返事がない。

 今日は夕食を帝城で食べることにする。私と一緒に夕食を摂ることをリオは嬉しそうにしてくれて、なんかちょっと恥ずかしい気持ちになる。

 

 皆で一緒に食事して、その後のお茶もおしゃべりしながらゆっくり飲んで、それも終わったのにエリアスは帰って来ないし連絡もない。

 いつもは遅くなる時はちゃんと連絡してくれる。なのに、今日は何の連絡もない。どうしたんだろう?何かあったのかな?


 泊まっていけばいいよ!って言ってくれるリオだけど、帰る事を告げて家へ戻る。ミーシャはエリアス用にお弁当を持たせてくれた。


 家に戻って来て、お弁当をテーブルに置いてから、畑に行って野菜を採取する。

 それからお風呂を用意して、いつでも入れるようにしておく。


 ソファーに一人座って、エリアスの帰りを待つ。

 

 夜に一人なのは初めてだ。

 昨日は陽が落ちる前にエリアスが帰ってきてくれた。この家に夜一人でいた事がない。昨日、一人で部屋で寝たけれど、それだけでも寂しくて仕方がなかった。でも、エリアスが家にいるって事で安心していられたんだと思う。

 今ここにエリアスはいない。傍にいないって思うだけで、こんなにも不安になっちゃうんだ……その事に困惑してしまう。


 改めてエリアスの存在の大きさを身に染みて感じてしまう。


 夜は更にふけていって、どんどん不安になっていく。思わずピンクの石を両手で握り締めてしまう。あ、やっとエリアスと話が出来た!


 けど、エリアスは今昼頃だと思っていたみたい。どうなってるの? しかも、空間移動出来ないらしくって、すぐに帰って来れないって……


 じゃあ、今日は私一人って事? 嫌だ……一人は嫌だよ……

 でも仕方ない。ワガママ言っちゃいけない。エリアスは遊びに行ってる訳じゃない。遺跡に行ってて、そこを調べているんだって。きっと大変な仕事なんだ。今までこうやって帰って来れなくなった事なんか一度もなかったもん。


 私がエリアスに嘘をついちゃったからかな……

 これはその事への罰なのかな……

 

 もう嘘はつかない。

 昨日の事を話して謝ろうと思ってたのに、それが今日は叶わなかった。

 

 一人でお風呂に入って、髪を風魔法で乾かして、寝室に行ってベッドに横たわる。

 布団にくるまって、布団に染み込んだエリアスの匂いを辿る。あ、朝浄化しちゃったから、エリアスの匂いとかは消えちゃったんだ。


 ……寂しいよ……


 エリアスの枕をギュッて抱き締めて、体を丸めるようにして眠りにつく。

 明日は帰ってくるよね? 

 帰って来てくれるよね? 

 

 不安なまま眠りについて朝を迎える。


 なかなか眠れなくて、色々考えてたらいつの間にか眠ってしまってたんだけど、ちゃんと眠れたかどうか分からないような感覚だった。

 朝陽が優しく降り注いでいて、その暖かな陽射しは夜の不安を拭ってくれているように感じる。


 起きて辺りを見渡すけれど、やっぱりエリアスの姿はなかった。また急に不安になって、ピンクの石を握るけれど、エリアスからの返事はなかった。


 大丈夫なのかな……

 どうしているのかな……

 まだ帰って来れないのかな……


 気になるけれど、どうにも出来ない。それが凄く歯痒くて、何も出来ない自分に苛立ちを覚える。


 エリアスは頑張ってる。だから帰って来れないんだ。私は安全な場所で、ただエリアスの帰りを待っているだけ。けど、それで良いのかな……

 

 テーブルにあるエリアス用のお弁当は当然そのままで、それを見ただけでも虚しくなってくる。

 そのままにしていても仕方がないから、そのお弁当を朝ごはんとして食べることにする。エリアスが帰ってきたら、温かくて美味しい食事を作ってあげよう。エリアスが作った方が美味しいかも知れないけど、頑張って作ったらエリアスはきっと喜んで食べてくれるはずだから。


 今日はいつもより早く起きちゃってたみたいで、帝城に行くまでまだ時間がある。

 いつものように朝の用事を片付けてから、目を閉じて魔物の気配を手繰っていく。

 

 うん、大丈夫みたい。


 家から感じられる範囲では、魔物が暴れているような気配はしない。


 ふと、一昨日行った村が気になった。

 あそこはもう大丈夫だよね? 黒くなったのを治したから、きっともう大丈夫なはず。

 でも、やっぱり少し気になる。行ってみようかな。もしかしたら他の村や街にもあの症状が出ているのかも知れないし。

 様子を見るだけ。それだけ。だから見に行ってみよう。


 そう思い立って、空間移動であの村まで飛んでいく。

 そこは村の中心辺りで、まだ朝早かったから人は少なかったけれど、畑を耕している人や家畜の世話をしている人がいて、皆普通に働いているようだった。

 家からは朝食を用意しているのか、あちこちから良い匂いがしてきてて、それだけで今は何も起こっていないんだと分かる。


 一昨日来た時は、至るところで呻き声とか泣き叫ぶ声とかが聞こえてきていて、それだけでただ事じゃないって感じられたんだけど、今はそうじゃない。

 どこにでもある、温かな朝の時間って感じで、それを見ているだけで安心できてホッとした。


 私を見つけた村の人が走り寄ってきて、両手で手を握ってきて、何度も何度も「ありがとう!」って涙ながらに言ってくる。

 その様子を見た人達が段々集まってきて、大変な事になりそうだったから、

「良かったね! じゃあまたね!」

って言って、翼を出して飛び立った。

 前もそうやって飛んだから、もう解禁って感じでついそうしちゃった。


 そのまま飛んで、上から村や街の様子を見ていく。暫くそうやって飛んで辺りを見渡すと、ある村に黒いモノが所々にあるのが見えた。

 もしかしたら、あの村みたいに黒くなった人なのかも知れない。

 そう思って、その村へと降り立った。


 やっぱりそうだった。一昨日見た光景が、今また目の前で繰り広げられている。


 だからつい、私は同じようにした。

 そのまま見過ごすなんて出来なかった。

 だって、私なら助けられるんだもん。

 このまま放っておくと、この人達はきっとそのまま死んでいっちゃうんだもん。


 村中の人達から呪いを奪っていくと、また頭がクラクラしてくる。

 すぐにそこから翼を出して飛び立って、その場を後にする。村人達が何か言ってたけれど、それもよく聞こえなくて、村を出てからすぐに家まで戻る。


 身体中を(うごめ)く呪いを、右手から絞り出して排出するようにしていく。それからニレの木の元で一休み。

 気づくとまた眠ってしまってて、慌てて起きて帝城まで行く。

 まだ少しフラフラしちゃうけど、すぐに良くなるよね。


 リオの部屋に行ったら、リオとミーシャは凄く心配していた。ゾランもいてて、私が来た事で安心したようだった。


 何度もごめんなさいって謝って、遅れたのは寝過ごしたからだって言うと、昨日エリアスが帰ってこなかったから心配で眠れなかったと思ったみたいで、特にそれ以上聞かれる事はなかった。

 私の言うことを信用してくれたみたいで、ちょっと申し訳ない気持ちになる。


 でも、悪い事をしてる訳じゃないんだよ?

 良い事をしてる筈なんだよ?


 ううん、そういう事じゃない。悪い事じゃないから何をしても良いって事じゃない。隠れてこんな事をするは、やっぱりいけない事なんだ。


 分かっているけど、じっとしていられなかった。エリアスが頑張ってるから、私も頑張りたいって思っちゃう。


 でもエリアスが知ったら、やっぱり怒りそう。でも怒って貰うってことも、大切なんだと思う。だからエリアス帰ってきたら、今までの事をちゃんと言って謝って、それで怒られるかも知れないけれど、その後は仲直りして、また一緒に食事を作って一緒にお風呂に入って一緒に寝よう。

 エリアスにいっぱいいっぱいギュッってして貰おう。


 エリアス、早く帰って来ないかな……

 




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