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05 妖魔の君、検証を試みる

とりあえずヒロインを掘り下げたいのでその方向に。

 ふーむ。

 一通り各地に散った部下からの報告を聞いてみたが、特に妖魔族だと見破られたケースは無かった。

 これはまだ人間族側の認識として妖魔族が組織行動を取ると想定されていないとか、人に化けて溶け込むような知能があると思われていないとか、そういった理由なんだろうか。

 それとも、警戒態勢に移行したところで人間族には妖魔族を見破る力は無いということか。


 まあ後者はこちらの希望が入りすぎており危険な発想だな。一般庶民にわからないとしても、天上の存在から暗示を受けた聖職者やそれなりに妖魔との戦闘経験が豊富な者にはバレると考えておいた方が無難だ。


 問題は、それをいつどうやって検証するか、あるいは検証は先送りにするか。

 藪をつついて蛇を出すのは馬鹿らしいが、そのリスクに気付きながら先送りするというのも危険が伴う。一度人間族側に〈妖魔族が人に化けて紛れ込んでいる〉と認識されればかなりの行動制限を受けることになる。

 つまり、人間族側に認知さえされなければ、情報が広まらなければ、たいして問題は無いということだ。


 それには、どこか田舎の教会あたりにバレる前提で潜入し、外へ情報が漏れる前に殲滅するのが手っ取り早い。

 

 この作戦の問題点としては、殲滅した事実および証拠の隠蔽。

 田舎とはいえ教会から聖職者が消えれば必ず領主の調査などが入るだろう。その際に誰かに襲われたと分かれば、他の人間族に罪を擦り付け奴等の内輪もめに利用する手もあるにはあるが、わざわざ田舎の教会を襲撃するという部分に引っかかる可能性は残る。

 更に妖魔族へ繋がる証拠があれば、逆にこちらが危険に晒される。最悪気付いた者達全員を殲滅するという粗すぎる行動に出るはめになりかねん。


 ならば、襲撃したという事実自体の隠蔽か、調査の妨害か。調査団をさらえば良いという訳もなく、さらに拗れるのは目に見えている。単なる田舎の失踪事件より事を大きくするのはまずい。


 襲撃の隠蔽。これには、調査団が納得するだけの、聖職者失踪の理由付けが必要になる。だが、ここさえクリアすれば、この方法が最も安全な策になるだろう。


 どちらにしろ妖魔族の変装がバレるかの検証は、いつかはやらなくてはならないんだ。ここで早い内に、まだ人間族に警戒されていない段階でやるのが一番リスクが低い。



 あとは失踪の理由付けだが、これはこちらで考えて用意するには情報が不足している。対象の聖職者の身辺を調査し、違和感のない理由を作る必要があるだろう。

 例えば貧乏で家族に病人でもいれば、借金苦の自殺や夜逃げという方向もある。美人で人気者ならば、痴情のもつれや人攫いといったところか。


 ともかく、聖職者にバレるか検証する為に利用する聖職者をまずは調査するという、何とも遠回りな作戦になる。それなりに慎重に行動できる人選が必要になるな。


「人間に変装できる外見を持ち、昼間の行動が得意で、知能が高く慎重に行動ができ、定期的な報告手段をもち、現場で臨機応変な対応がとれる、そんな奴は居ないか」

 

 俺は書斎に集めたメンバーにダメ元で問うてみた。

 自分で言っててそんな完璧な奴いたら俺に従ってるとは思えないが。

 いつものカニス、フランマ、執事のスケレトゥス。

 ロサは人間族側に潜伏中のメンバーを呼びに行っているので今回は不在だ。

 あとは適当に知能と実力が高い奴等を何人か。

 

「いるよー! はいはーい!」

 

 なにやらカニスがアピールしているが、お前今の話し聞いてた?

 

「カニスよ、お前はたしかに人間のような外見をもち、昼間の行動にも支障がない。更に知能は上級妖魔としてそれなりのものを有する。臨機応変な判断や定期的な報告も可能だろう」

「うんうん、さっすが主様! ボクのことを理解してくれてるよね!」

「だが、力に任せない慎重な行動……その点で引っかかるんだ。ものすごく」

「なんでさ!」

 

 カニスは驚愕の表情で固まるが、周りの者は皆納得といった顔をして目をそらしている。いや、一人笑いを堪えているゴリラが居たか。

 

「確かにカニスの外見なら相手を油断させるだろうけどさ、知能が高く慎重って、よりにもよってカニスに……ぶふっ」

「フランマうるさい! 何さ! ボクは上級妖魔で狼だよ? 知能だってそこらの奴等よりあるし、なにより主様を裏切らない忠誠心がある! 今回の任務はこれからの妖魔族にとって、すっごく大事な感じのやつなんだよ? 信頼できるボクのような者じゃなきゃ勤まらないね!」

 

 たしかに信頼という面ではカニスやフランマあたりに勝る者は少ない。特にカニスは犬……じゃなかった狼特有の義理堅さのような気質が気に入って重用した過去もある。だが、どうしても不安が残るんだよなぁ……

 

「では、フランマ様がバックアップに付くというのはいかがでしょうか」

 

 珍しくスケレトゥスが進言してくる。

 

「ちょ、骨! 余計なこと言うな! フランマなんか付いてきたら目立ってしょーがないよ!」

「いや、ありだな。うん、今回の作戦の重要度から考えても、最も信頼のおける二人に着いて貰えれば何の心配もない」

 

「もっとも、信頼できる……うへへ」

「カニス、涎出てるよ。まったく……とんだとばっちりだよ、うふふ」

「フランマだってニヤニヤ気持ち悪いし」

「ぶん殴るよ!」

 

 うん、なかなかいい案がでたな。

 妖魔族の領域に人間族が攻め入ってくる危険の低い現状で、こいつらを俺の警護に当てているのは勿体ないと思ってたんだ。

 俺は王城の結界から出なければ安全は確保できるし、こいつらが二人も着けば大抵のトラブルにも対処できる。最悪人間族の勇者と遭遇しても片方を逃がすか報告を走らせるくらいのことは出来るはずだ。

 

 よし、変装バレ検証作戦、開始だ!

 

お読みいただきありがとうございます。

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