22 妖魔の君、野盗を狩る
バトルが書きたくなったけど敵が弱すぎた……
村長の家から出てみると、村のそこらじゅうで略奪が行われていた。
俺が殺した野盗が四人だから、あと七人か。
いや、それにしてはどうも血が流れすぎているような……
「ゴブリンの群れだー!」
「な、なんでこんな時に!」
声に反応して見ると、野盗とは別にゴブリンの群れが向かってきているのが見えた。
狭い村だから逃げ出した村人が外でゴブリンに殺されているのがよく見える。
「まったく、雑魚ばかりなんなんだいったい……」
「ま、まて! 貴様! どこへ行く!」
とりあえず目についた野盗から殺していこうとしたら、先程の冒険者が家から追いかけてきた。
ちなみに人間族にしてはなかなか美人な女だ。
追いかけられるのはイヤじゃない。
「なぁに、ちょっと野盗とゴブリンをみな殺すだけさ。村人に手は出さんさ」
せっかくなら鈍った体をほぐすのに利用させてもらおうか。遠隔攻撃ばかりじゃ強者に出会った時に苦労するからな。
俺は右足に力を込め地面を蹴った。
近くで女を押し倒していた野盗へひと飛びに接近し、目視される前に腹を蹴り上げる。
「ぶへらっ」
野盗は天高く舞い上がり、空中で爆ぜた。
今のは蹴りに少し妖気を込め衝撃を体内から逃さなくする、俺の編み出した体術のひとつだ。
行き場を失った衝撃に対抗する力がなければ、あのように爆ぜることになる。
続いて隣に居たもう一人の野盗のこめかみに右肘を叩き込む。
「もげっ」
これはシンプルに体術のみだ。
野盗は首から上を失くし、その場に倒れた。
「な、なんだぁ?!」
「なんかいるぞぉ!!」
ようやく周りの野盗が俺を認識して騒ぎ出したようだ。
声を発した野盗二人を足払いし、体の回転を止めず宙に舞った野盗を掴み投げ飛ばす。
そこにもう一人の野盗も投げ飛ばし、空中で衝突させると、激しくぶつかりあった両者は鈍い音をたてその場に落ちる。
うーん、野盗が棒立ちすぎてこれじゃ訓練にもならないな。
今回は適当に片付けるか?
「な……なんという動き……。野盗なんてたまじゃない、貴様はいったい……」
ふと、顔を青白くして震えている冒険者が目に入る。
そうだ、コイツを利用して冒険者の戦い方というのを見ておくのも悪くない。
「おい冒険者、後は任せた」
「……え?」
「敵がこうも弱くてはつまらん。村を守りたければお前が守れ。俺はその辺で見物させてもらう」
「な……っ! 馬鹿を言うな! このような一大事に、見物だと? そんな力を持っていながら……、目の前で人が殺されてもいいのか!」
「勘違いするな。俺はこんな村どうでもいいんだ。だが、お前には興味がある。俺はここでお前を見れれば満足だ」
「ええ?! な、ななな」
青白かった冒険者の顔がみるみる赤く染まっていく。
息も荒いようだ。
「ふん、怒ったか? ならばその力を俺に見せてみろ」
「い、言われなくても!」
冒険者は残り三人となった野盗に向かい駆け出していく。
しかしその速度はハエが止まるほど遅い。
あんな金属の靴やら鎧やら装備してたらそりゃ、そうなるわな。
しかし、迎え撃つ野盗はその冒険者の動きにすらついていけず、あっさりと斬られてしまう。
あまりに低次元な戦いだ。
これでは冒険者の力すら測れそうにない。
俺はあくびを噛み殺しながらゴブリンの方へ興味を移した。
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