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15 妖魔の君、堕天使を愛でつつ報告を受ける

ロサを愛で隊隊長ことノックスはこれでストレス解消している疑惑が・・・

「なるほどな。つまり勇者のみならず、その仲間までもが上級妖魔を屠れる手段を有すると。そしてその力の行使にはなんらかの制約、会話の内容からして回数制限のようなものがある。さらにその能力には天上の存在が関係している、と。そういう話か」


「ですわ!」


 うーん。

 これは由々しき事態だぞ。

 変態シスターを雇ってから戻ってきてみれば、あの残念美人人魚ちゃんのウェルテックスが既にやられており、調査に向かったロサは重傷、合流予定だったネブラは消息不明。

 さらには勇者の部下ですら強力な神聖魔法を行使できる……。

 

 あまりにあんまりだ。

 妖魔族、風前の灯火じゃないか。


「それにしても、私どもが忍者装備をテストしてから主様に献上されるという話でしたのに、なぜ主様が既に忍者装備で外出されていたんですの? え? スケレトゥス?」


 ロサはその白くきめ細かな額に青筋を浮かべ、骸骨執事へ遠慮のない殺気を放つ。


「少々予定が狂いまして。カニス様とフランマ様の方で問題が発生し急遽主様が出向くことになり、お一人で向かわれると仰るので、せめてもとお渡しした次第でございます。ホホホ」


「よくもいけしゃあしゃあと……。敵に発見されたネブラの着ていた衣の方が生地の質は良かったようですけれど、なぜ私の選んだどす黒く粗い方の衣をお渡ししたのかしら? 私が傷を癒して戻るまでの間、装備テストについての報告はしておりませんのに」


「はて、たまたまにございましょう」


「はっ。盗み見とは趣味の悪いことですわ! 私どもが主様の為に体を張ってテストしたことも、私が報告しなければ握りつぶしていたのではなくて?」


「まさか。あの時は急いでおりましたので、細かいご報告は後回しにさせていただいたまででございますよ。ホホホ」


「……この腐れロリコン骸骨が。憶えてなさいよ」

「ロリコンとは心外な! 私は可愛いものを愛でるのが好きなだけでございます! そのような邪な性癖と混同されては困りますな!」

「そこで声を荒げるんですの?!」


 まったく、こいつらは千年経ってもこの調子か。

 でもそれよりロサが可愛らしいことを言っていたな。


「ロサよ。私の為に体を張ってくれたこと、感謝する。それに忍びの衣も偶然にもお揃いだったようだな! はっはっは!」


「なっ! ななななんですの! べ、べつに主様の為ではありませんわ! 勘違いしないで頂きたいですわっ! 私は妖魔族全体の為を思って、だから、その……。お揃い……うふふ。

 じゃなくて! あーもう! 知りませんわ!」


 うーむ。

 現状には頭が痛いところだが、ロサは相変わらず可愛いな。


「ホホホ。ノックス様もお上手ですな」

「スケレトゥス、それよりネブラの消息が気になる。ウェルテックスを失った今、これ以上上級妖魔を失うわけにはいかん。至急捜索隊を編成し、無事であれば連れてこい。私の妖気を与えれば多少の傷は癒える」

「はっ! 直ちに」


 スケレトゥスは命令を受けると何やら魔法を発動させながら即座に退出していった。


「あ、主様の妖気?! なぁっ! ネブラなんかに勿体ないですわ!」

「瀕死の重傷を負っていた場合、自然治癒では時間がかかりすぎるだろう。今は一刻も早く戦力を固めたい」

「ですが……ですがですわっ!」


 ……?


「べ、別にネブラに限らず、ロサが瀕死の重傷を負えば同じことだ。そう拘るな」

「なぁっ……。くっ……傷を癒さず帰ってくるべきでしたわ……」


 ロサを愛でていると、執務室の扉が開きスケレトゥスと入れ替わりに二人の部下が入ってきた。


「相変わらずロサがいると賑やかだねぇ」

「ホントホント! キンキン響いて耳が痛いや!」


「二人とも、今回はご苦労だったな。装備の確認はすんだのか?」

「ああ、アタシの体格にもばっちり合うやつを用意してもらったよ」


 そういうとフランマは、腰に手を当ててその燃えるような赤のストレートヘアーを右手でかきあげ軽くポーズをとる。

 筋肉ムキムキマッチョマンなフランマに着られるのか疑問だったが、スタイルがいい分以外と似合っている。


「ボクもほら! ピッタシでしょ!」


 フランマに見とれていると、カニスが横から負けじとアピールしてくる。カニスのお子ちゃま体型も不安だったが、こちらはこちらでなにやら少年チックに着こなしていた。

 ちなみに色は二人とも柿渋色だ。

 今は数を揃えるのが優先なので、染料の調達や染めの工程数の都合で藍染と柿渋色が多く、続いてクレ色の順に生産している。その中から各々が気に入った色を選んでいるのだ。

 クレ色が柿渋色より少ないのは、一旦柿渋染めにしたものを更に鉄を含んだ泥水で染め直す必要があるからだ。

 さきほどロサとお揃いと言った俺も、手間のかかったクレ色を回してくれたのだろうが、色の好みから次は藍染にしようと思っているところだ。


「あらあら、主様のお手を煩わせたというのに、呑気なものですわね」


「へーん! そっちは勇者の手下に負けて帰ってきたんだって? あはは! ボクならそいつの首でも持って帰ってたね!」


「なんですの?!」


「こらこら、挑発するんじゃないよ。アタシらが主様のお手を煩わせたのは事実じゃないか」

「もう! フランマは黙っててよー!」


「よさないか。皆それぞれによく頑張ってくれた。今はネブラの安否を確認し、ロサの情報を元に今後の対策を練るのだ。そしてカニスとフランマが見つけてくれた変態……天上教の地下組織と連絡を取り、勇者達の持つ神聖魔法について調べるのだ。じゃれ合っている場合ではないぞ」


「はいですわ! 私の情報を元に、対策を練るのですわ!」

「ボクの見つけた地下組織と落ち合う方法を考えないとね!」


 はぁ……。こいつらと話していると、現状の深刻さを忘れそうになるな……。





お読みいただきありがとうございました。

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