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プロローグ
久城 一真は魔法使いである。
5月16日水曜日、午後6時30分…
今城家、今城 幸太郎の部屋で…
一真と梨紅は、梨紅の父親…幸太郎の前に正座し、二人そろって項垂れて、目を閉じていた。
「…リク、カズマ…」
幸太郎が、これ以上低くならないぐらい低い声で、二人の名を呼んだ。
「「…はい」」
「お前達が、オレのいなかった10日間に何をしていたか…オレはある程度知っている…」
「はい…」
「…んで知ってんだよ…」
「黙らっしゃぁい!!」
幸太郎は、鞘に収まったままの愛刀、覇流鹿で畳を突く。
その動作に、二人は同時にびくついた。
「まさかリクが…カズマならともかくリクが…あんな事をするなんて…」
何故、二人は幸太郎の部屋で正座をしているのか…
二人が仲直りしてからの6日間、何があったのか…
幸太郎の言うあんな事とは、いったい何のことなのか…
それを語るには、そう…
二人が仲直りした日の翌朝まで、時を遡る必要がある…