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魔法使いの苦悩  作者: 黒緋クロア
第一章 魔法使いは苦悩する。
4/66

3.魔法使いとMBSF研究会


「…よぉリク、おはよう」


「おはよう、カズマ…ふわぁ…」


「随分と眠そうっすねぇ…あ、まさかお前…またオレのベッドに?」


「行ってないわよ…昨日はちゃんと自分のベッドに横になって…部活について考えてたの」


「部活?…あぁ、SF研か…てか、考えてたって何を?」


「ん~…まぁ色々よ、部の名前をアレンジしてみようか…とか、宿題以外には何をしようか…とか」


「…まぁ、宿題以外にすることに関しては考える価値はあるな…でも、何故に部の名前をアレンジする必要がある?」


「ただSF研だけじゃつまんないじゃない?それに、オタクっぽいって言ったのカズマじゃない」


「いや、まぁ言ったけどさぁ…」


「それでね?"MBSF研究会"って名前にしようと思ってるの」


「MBSF…MBって何だよ」



M、"魔法使いと退魔士と一般人その他諸々で"



B、"勉強したり遊んだりその他諸々をする"



SF研究会…



略称、MBSF研究会



「…どうよ?」



「…アレンジの必要性が皆無だ」


「そこの問題じゃないの!アレンジした後よ!良いじゃない、MBSF!」


「…まぁ部長はお前なんだから、好きにすれば良いだろ」


「一応カズマの意見も聞いておきたいのよ、なにしろあんたは部長その2だし♪」


「いやいやいや、謹んでお断りするよ。そもそも部長その2って何だ?せめて副部長にしとけよ…」


「遠慮しなくて良いよ?」


「遠慮してんじゃない、拒否ってんだ!」









沙織が半魔になった翌日の朝の、一真と梨紅の会話である。



梨紅が適当にアレンジした部名、



MBSF研究会…



実はこれが、後の世に発足する世界的な魔物討伐機関の頭文字になろうとは…



この時はまだ、誰も知らない…



しかし、その兆候は徐々に…確実に現れ始めているのだ。




魔法使い…


退魔士…


半魔…


そして、今は一般人として生活しているが、いずれ重要な役割を果たす事になる一般人…




今は4人しかいない部員も、2人増え、3人増え、いずれ9人になる…




そして…




魔物討伐機関であるMBSFのトップに位置する人間も…




…9人の男女なのである。





魔物討伐機関MBSFの話は、



また、別の機会に…









「んにしても魔族かぁ…親父さんがいないとなると、対処するのはオレ達って事になるな」


「うん…多分、今日中に警察から依頼が入ると思うよ?ただ…」


「ただ…何?」


「…なんで昨日、依頼が入らなかったんだろう…」


「…普通に考えれば、山中さんが最初の犠牲者って事になるな、それなら依頼が来なかった理由もわかる…」


「…もしくは、…」


「山中さんより前の被害者が、警察に見つかって無い…か?」


「その可能性も…」


「可能性ってか、確実だと思うね…ダンが聞いた、魔族が言ってた事の中に、山中さん以外にも血を吸ったような言い回しがあったよ」


「…そうだったっけ?」


「…探偵にはなれないな、リクは」


「いいよ、探偵なんてならないし…それに、これ以上肩書きはいりません」


「高校生兼、退魔士…もう一つぐらいあっても良いんじゃね?」


「だから、いらないって…なら、自分の肩書きを増やせば?」


「オレの?高校生兼、魔法使い兼、退魔士補佐兼…」



「待って待って…退魔士補佐?何勝手に増やしてんのよ!」


「増やせって言ったじゃねぇか…」


「退魔士補佐の肩書きを手に入れるには、私の許可が必要です」


「くれ!」


「却下」


「…まぁ、良いか…そんなに欲しくないし」


「え!?何それ!あんた、他人との会話を盛り上げといて自分から打ち切るのやめなさいよ!」


「だって、話題から大分それてるし…」


「空気読みなさいよ!今は肩書きの話をする空気だったでしょ!」






…こうしていつも、一真と梨紅の騒がしい一日は騒がしく始まるのだ。







一真達が教室へ入ると、すぐに暖と沙織が寄って来た。





「おはよ~」


「よぉカズマ!今日も夫婦仲良く登校とはうらやましいねぇ…」


「ちょっと、ダン君!そんなんじゃないっていつも言ってんでしょ!あ、サオリおはよ!気分はどう?」


「おはよ!全然大丈夫だよ、ありがと…でも、久城君とリクって本当に付き合ってるように見えるよ?毎朝一緒に登下校してるし…あ、一緒の部活に入ったのも…」


「違!ちょっ…サオリ!変な事言わないでよ!?そんなんじゃないよ!」


「そうだそうだ!そもそも彼女って言うより、出来の悪い妹みたいな感じだし…」


「…そうそう♪…ん!」





梨紅の裏拳が一真の鼻に当たる。



梨紅の表情が満面の笑みであることが、逆に怖い…



鼻を押さえて悶絶する一真…





「ぉぉぉぉぉ…」


「あ~あ、こりゃあ尻に敷かれるタイプだな、カズマは…」


「あ、ダン君?」


「何?サオリちゃん!」


「私今日、日直なんだけど…職員室に日誌取りに行くの忘れちゃって…」


「わかった!オレが取ってきてあげるよ!待ってな?1分で取って来っから!」






そう言うや否や、暖は教室から飛び出して言った。





「…お前よりは尻に敷かれないと思うね、オレは」





鼻を押さえながら、一真は暖の背中に向かって言った。





「良かったぁ♪ダン君が単純で♪」


「サオリ…」


(…リク?山中さん、性格変わってねぇ?)


(…明るくポジティブに?)


(いや、腹黒く)


「取って来たぁぁぁ!!!はい!サオリちゃん♪カズマ、タイムは!?」


「測ってねぇよ…てか、早すぎるだろお前!」


「ありがとうダン君♪私、足の速い人大好き♪」


「っっしゃぁぁぁ!!!キターー!!」





全力でガッツポーズを取り、喜びを表現する暖を、一真と梨紅はひきつった笑みで見つめる。



…ふと、梨紅が思い出したように言った。





「あ、でもカズマの方が足速いよね?たしか」


(バカ!余計な事言うなよ…あ~ぁ、言っちゃったよこいつ)





暖が一真に詰め寄り、胸ぐらを掴む。





「勝負じゃカズマぁぁぁぁ!!!!!」


「っせぇ!誰がするかぁ!唾を飛ばすなぁぁぁ!!!」


「うるせぇぞ久城!川島!お前ら何叫んでんだ!」






いつの間にか教室にいた田丸先生に注意され、その場は丸く収まった。






時刻は少し進み、昼休みの清掃



昼休みに清掃のある高校は珍しいのかもしれないが、貴ノ葉高校にはあるのだ。



なんでも、理事長が度を越えた綺麗好きだとか…



そんなわけで、生徒は皆一生懸命清掃を…





「勝負じゃぁぁぁ!!!!」





…しているわけがなかった。





「勝負って…なにで?」


「廊下の雑巾がけだ!」


「疲れるからパス」


「逃げるのか?逃げるのかカズマぁ!」


「うん。あ、おいリク!中庭の掃除行こうぜ?」


「あ、うん!行く行くぅ♪ねぇ、サオリも行こ?」


「うん、行こっか!」


「ちょっと待て!オレも行く行くぅ♪」


「ダンは一人で雑巾がけしてろよ」


「カズマてめぇ!親友のオレを除け者か!?それでも人間かお前は!?」


「魔法使いだけど?」


「屁理屈言ってんじゃねぇよ!とっとと中庭行くぞ!」


「なんでお前が仕切ってんだよ…まぁ良いけどさ」


「最初っから素直にオレを誘えってんだよまったく…」


「リク、ダンが中庭で飲み物おごってくれるってさ」


「いやいやいや、言って無…」



「本当!?ありがとダン君♪」


「え、いやその…」


「ダン君、私もおごってほしいなぁ~…」


「もちろんだよ♪しっかりおごってあげるよ!むしろおごらせて!」


「ダン君大好きぃ♪」


「いや、そんな…アハ、アハハハハ!」


「…あ、オレはフルーツ・オレで良いから」


「お前のも!?」







中庭は生徒達の憩いの場になっており、4つのテーブルにそれぞれ4つの椅子が並べられ、他には自販機と5本の木が生えているだけだ。



中庭の清掃と言っても、落ち葉やゴミを長箒で掃き、ちり取りの中に入れてごみ捨て場へ持って行くだけである。



簡単に言えば、一番簡単で楽な仕事だ。





「…ピッチャー第一球…投げました!」





暖が、中庭に落ちていた空き缶を一真に向かって投げる。





「…ぃよ!」


「ストラ~イク」





沙織が長箒を振るが、空振りに終わる。



一真は暖におごってもらった紙パックのフルーツ・オレを、ちゅごご…と吸いながら、空き缶をキャッチする。





「ピッチャー第二球…投げました!」


「…」


「ボ~ル」


「はぁ!?バッチリ入ってんだろストライクゾーン!」


「あ~…1mm足らねぇ」


「んのぐらい多めに見ろや!」


「っせぇ下手くそ!早く投げろ」


「…言ったなこの野郎!見てろ?ピッチャー第三球、投げましたぁ!」


「…きゃ!」


「デ~ッドボ~ル…下手くそぉ!」


「…ちょっと、調子が悪い…かな?」


「っせぇバ~カ…リク、次入れ」



「はいリク、バット!私の敵討ちよろしく♪」


「敵討ちって、死んでないし…バットじゃなくて長箒じゃん」





ぶつぶつ言いながらも、構える梨紅





「今度こそ三振させてやらぁ!ピッチャー第一球…」


「カウントし直すんだ…」


「投げました!」





暖の投げた空き缶は、ストライクゾーンど真ん中に真っ直ぐ入って来た。





「ど真ん中かよ…」


「う~りゃあ!」





梨紅が全力で振った長箒は、見事に空き缶を捉えて遥か彼方に飛んで行った。



暖が打球…もとい、空き缶を目で追い、見えなくなると同時にその場に崩れ落ちた。





「はい、逆転サヨナラ2ランホ~ムラ~ン…ダン、ごみ捨て場までダッシュな~?」


「ダン君頑張ってね~♪」





そう…4人が空き缶と長箒で野球をしていたのは、ちり取りに集めたゴミを、誰が捨てに行くかを決めるためだったのだ。





「なんか今日…踏んだり蹴ったりだなオレ」


「正確には昨日、オレ達にハンバーガーをおごってから踏んだり蹴ったりだな」


「ちきしょぉ!速攻で行ってくっから!帰って来たら勝負だカズマ!」






そう言って、暖はちり取りを持って走って行った。





「…なぁリク?」


「何?」


「ダンって…あんなキャラだったっけ?」


「さぁ…もとからな気もするし、テンション高すぎる気もするわね」


「そう?私は変わってないと思うけど…前から騒がしい人だったし」


((一番変わったのはあんただよ、あんた))


「まぁ、やかましい事には変わりないってのは言えてるな」


「うん…まぁ、良いんじゃない?ほら…これが本来のダン君なのかもしれないし」


「やかましさ1.5倍だけどな」


「単純さは2倍以上よ?」


「…いや、もとからかなり単純な気もするぞ?あいつは」





暖はちり取りをガタガタ揺らしながら、中庭に戻ってきた。





「カズマ!タイムは?」


「3時間14分」


「んだそれぁ!壊れてんじゃねぇか?」


「壊れてんのは今のお前だよ…」


「…ねぇサオリ?ダン君って単純なんじゃなくて…」


「リク、それ以上は言っちゃ駄目よ?ダン君が可哀想…」





そして、清掃の終了を告げるチャイムが鳴り響く。






「お、チャイムだ…教室に戻ろうぜ?」


「5限目って何だっけ?」


「えっと…」


「数学だよ、6限目は古典」


「なんでお前、時間割熟知してんだよ…」


「そりゃあ、どの教科で寝れるかは高校生にとって最重要事項だからな!これが、オレが小学生の頃から鍛えて来た、時間割熟知能力だ!」


「捨てちまえそんな能力…」


「なんて事言うんだお前は!」


「ちょっと二人とも、早くしないと遅れるわよ!」





梨紅が昇降口の方から二人を呼ぶ





「あぁ、今行くよ」


「ダンく~ん♪遅れるよぉ~!」


「は~い♪今行きま~す!」





一真と暖は、同時に走り出した。






5限目、数学ⅠA…



一真の得意な教科であり、梨紅、沙織、暖の苦手…もとい、嫌いな教科である。



一真は指先でシャーペンをクルクルと器用に回しながら、隣の梨紅をちらっと見てみる。



梨紅は、必死に黒板の文字をノートに書き写していた。



一番前の席で堂々と爆睡している馬鹿と比べれば、授業態度には天地程も差がある。



中学の頃の梨紅から、よくまぁここまで成長したもんだと、一真はしみじみ梨紅の成長を喜んだ。



ちなみに、中学の頃の梨紅すなわち、現在の暖であることは、言うまでもない。





(?カズマ、何でしみじみした顔で私の事見てるのよ)


(気にすんな、お前の成長を喜んでるだけだから)





そう言って、一真は梨紅に笑いかける





(何よそれ…あんたは私のお父さんか!?っての)





そう言って、梨紅も笑った





(あれと一緒にしないでくれ…)


(他人の父親をあれ呼ばわり?)


(なら、「やつ」と一緒にしないでくれ)


(たいして変わってないじゃない!)


(っせぇなぁ、君は大人しく黒板の文字を写してなさい!)


(写し終わったもん)


(マジで?黒板写すの早くなったなぁお前…頭撫でてやろうか?)


(バ~カ…あ!ダン君が見つかった!)


(え?あ、マジだ!だっせぇ~ダンのやつ!)


(なかなか起きないね…あんなに先生が揺すってんの…)


「カルピス大盛り!!」


「!!!」





突然暖が発した寝言に、クラス全員が驚き、皆が暖を見つめる。





「…あれ?」





クラス全員が大爆笑である。



暖を注意しようとした先生まで笑っているのだから、もう授業どころでは無い…





「カルピス大盛りって何だよ!」


「しかも…あれ?とか!」


「あれ?じゃねぇよ!どんな夢見てんだ川島!」





そしてチャイムが鳴り、5限目は生徒全員が大爆笑のまま幕を閉じた。





「あ、教科書の37ページの問題、宿題だからな?」





しっかり宿題は出して行く先生は、なかなかの強者だと言える。








1限飛ばして放課後、部室にて…





「ねぇねぇ!どんな夢見てたの?ねぇ!」


「リクうっさい、とりあえず宿題が先だろ」


「だって気になるし…それに、早くしないとダン君忘れちゃうよ?」


「大丈夫だよ、もう忘れてる…なぁ、ダン?」


「…カズマお前、エスパーか?」


「いや、魔法使いだ」


「そのやり取りもう良いわよ!」


「いや、このやり取りはやめられないなぁ…」


「しかも本当に夢の内容忘れてるし…あぁつまんない!」


「…なんか、ごめん」


「…3人とも、宿題しないと…」





カリカリとシャーペンを動かす音だけが、部室に響く…



ときおり、「そこはxyを…」とか、「yに2を当てはめると…」など、一真の声が聴こえる。



…だが、それも10分が限界だ。





「…ねぇ、ダン君本当に覚えてないの?」


「リク、しつこいぞ?」


「だって気になる…」


「仕方ないだろ?時間割は覚えられても、夢は覚えてられないんだから」


「…なぁ、なんでオレはそんなにボロクソに言われてんだ?」


「…そりゃあ、オレもお前の夢の内容を知りたかったから…」


「八つ当たりもいいとこじゃねぇか!この鬼!悪魔!」


「…いや、魔法使いだから」


「しつこい!いい加減やめなさいって!」


「…ねぇ、宿題は?」


「え?山中さん、終わってないの?」


「私は終わってるけど…リクは?」


「私も終わってるよ?」


「あの…オレ、まだ…」


「ダン、今日はドーナツおごりな?」


「なんで!?いやいやいや!終わった!はい!終わりました!セーフセーフ!」


「アウト♪」


「アウト」


「アウト!ゲ~ムセット♪3対1でダンのおごりな?」


「…マジで勘弁して下さい…」







「でもカズマ?ここの所頻繁におごってもらいすぎよ?流石に心が痛むわ…」


「へぇ…お前の心にも善意ってもんがあるんだなぁ」


「ど~ゆ~意味?」


「…いや、何でもない」


「…まぁ良いわ、それじゃあ宿題も終わったことだし、まだ4時30分…MBSF研究会の活動その2を始めましょう♪」


「…?リク、活動その2って…何?」


「いや、そもそもMBSFって?」


「…なんだよリク、二人に言ってないのか?」


「忘れてた」


「…その程度のあれなら、アレンジすんのやめたらどうだ?」


「やめないわよ!てかあんた、(あれ)って言葉を使うの多すぎよ?」


「適切な言葉が浮かばないんだよ…」


「なぁ、MBSFって?」





"魔法使いと退魔士と一般人その他諸々で"


"勉強したり遊んだりその他諸々をする"


SF研究会


略称、MBSF研究会





「…OK?」


「…なんで変えるの?」


「だって、SF研究会だけじゃつまんないじゃない?」


「いやいや…つまるつまらないの話か?」


「良いの!もう変えたの!決定!てか、つまるって何?」


「おいカズマ、副部長として何か意見は?」


「意見って…」



「カズマは副部長じゃなくて部長よ?」


「え?じゃあリクは?」


「私も部長」


「部長が二人?なんだそれ、どんな部活だよ」


「こんな部活よ」


「説明になってないわ!てかカズマ!部長なら部長らしくもう一人の部長に意見しろよ!」


「部長部長うるせぇなぁ…そもそもなんでオレが部長その2って事に決定してんだ!オレは断っただろ!」


「馬鹿お前…カズマ以外に誰がやるんだよ?」


「そうよ、久城君以外にいないわよ」


「お前らなぁ…それに、別に部の名前なんてどうでも良いじゃねぇか?部長その1様の決定なんだ、オレ達は大人しく従ってりゃ良いんだよ」


「今城の独裁政治を許して良いのか!?」


「ならお前が革命でも興せば?」


「負けの見えてる戦はせん…」


「見事なまでに負け犬ねぇ、ダン君」


「山中さん、きっついなぁ~…」


「…じゃ、MBSF研究会で決定で良いわね?」


「決定しても良いけど…名前変えたら何か変わるのか?」


「…部員の士気が高ま…」


「「らない!」」


「そもそも、士気を高めてどうするの?運動部じゃあるまいし…」



「…?ここは半分運動部よ?」


「「「…え?」」」





これは一真も初耳だ。





「部長その2、MBSFのBを言ってみなさい」


「…"勉強したり遊んだりその他諸々をする"」


「勉強は文化部、遊びは運動部、その他諸々は臨機応変に…」


「そういう事か…さっき言ってた活動その2は、遊びの事だったわけな?」


「ダン君正解♪って事で、何して遊ぶ?」





沈黙する4人…





「…何して遊ぶ♪」


「いや、2回言われても…なぁ?カズマ」


「ん~…宿題以外、ノルマ的な物が無いのも考え物だな」


「…そもそも、SFって何の略?」


「部長!?それって部長が知っておかないといけない事じゃね?」


「だって、SFなんて興味ないし…」


「うわぁ、カミングアウトしやがったこいつ…」


「じゃあ、今日の議題、(SFって何の略?)に決定!」


「あの…」


「はい、サオリの発言を認めます」


「裁判官かお前は…」


「あのね?私、SFが何の略か知ってる…」


「…はい、サオリの今日の発言権は失われました」


「えぇ!なんで!?」



「正解を知ってると、話し合う楽しみが無くなるからよ」


「うわぁ…ダンの言った通りの独裁政治…」


「え?今回はオレも賛成だし…」


「…何で?」


「だって楽しそうじゃん?」


「…お前は本当に一般人か?」


「一般人…だと思うんだけどなぁ…」






「…じゃ、改めて会議を始めましょう」





4人はそれぞれ椅子に座り、長テーブルに両肘を置き、指を組んだ。





「…部屋暗くして、映写機回せば雰囲気出そうじゃね?」


「オレもそれ思った…なんか、怪しげな雰囲気出そうだよな」


「これじゃあ黒魔術研究会ね…」


「良いじゃん黒魔術!あれか?呪文とか唱えるのか?」


「黒魔術って…オレ、本物の魔法使いよ?普通に魔法使えるから…」


「じゃあ、なんか黒魔術的な雰囲気を魔法で演出してくれよ」


「嫌だって、演出に使うとか…」


「…ねぇ、そろそろ始めない?」


「あぁ、リク悪い…」


「コホン…では、SFとは何の略か…」


「はい!」


「はいダン君」


「スーパーファミコン!」


「懐かしいなぁ…スーファミかよ」


「50点ね」


「半分かぁ…」


「点数付けんの?」


「この議題、入部テストに使いましょ?点数の高い人を入部させるの」


「これ以上部員が増えると思ってんだ…」


「次、カズマ!」


「オレ!?えっと…センターフライ…とか?」


「60点」


「うわ!負けたよ…」



「…いや、点数の基準がわからないから」


「次は私ね?ん~…ストロベリーフラワー?」


「…結構あるもんだな、SF…」


「65点ってとこかな?」


「いや、今のは満点でしょ~?」


「結局リクの独裁政治じゃねぇか!」


「基準もクソもねぇじゃん…」


「うるさいわねぇ、なら65点で良いわよ!」


「…ねぇ?」


「ん?何、サオリ?」


「私も入れてほしいなぁ…って、駄目?」


「…正解を言わないなら、まぁ…良いわよ?」


「やた!はいはい!私もう考えてある!」


「じゃあ、サオリ」


「はい!スーパーフェイス!」


「凄い顔…」


「凄い顔ねぇ…」


「…ちなみに、サオリの言う凄い顔ってどんな顔?」


「…え?」


「それによって、点数が大きく変わるわ」


「え…えぇ!?」


「凄いぞ…サオリちゃんの凄い顔、最高得点になるかもしれない!」


「最低得点の可能性も有るけどな」


「さぁサオリ?あなたの言う凄い顔を、あなたの顔で表現して!」


「…凄い顔…ん~…」





沙織は、3人に真面目な顔を向け…





「…いきます!」





凄い顔をした…





「…ぷふ…」



「「ァハハハハハハハハハハハハ!!!!!」」





暖はかろうじて吹き出しただけですんだが、一真と梨紅は腹を抱えて大爆笑だ。





「そ…そんなに笑わなくても…」


「いやいやいや、今のは最高だったよ…ぷふ!これはもう満点でも良くね?」


「クフフ♪うん、うん!満点でしょ満点!ハハハハハ!!」


「サオリちゃん凄い顔だったよ、マジで…」


「…私今、スッゴい後悔してる…」





こうして、この日の部活は大爆笑で幕を閉じた。



ちなみに、SFとはサイエンスフィクションの略である。








帰り道…昨日の今日と言う事で、一真と梨紅は暖と沙織と一緒に下校している。



また襲われる可能性も否定は出来ないからだ。





「…今日も来るかな?」


「さぁ…まぁ来たら来ただよ、その時はダンが囮に…」


「おい」


「冗談さ、囮にもなりゃしない」


「余計に凹むわ!もうちょい歯に絹着せろよ!」


「ダン君って、ちょくちょく言葉をいじるよね…さっきも、(つまるつまらない)とか言ってたし」



「少しでも自分を知的に見せたいのさ…逆効果だけど」


「またオレ、ボロクソに言われてるし…今度は何の八つ当たりだ?」


「いや、夢を覚えてないことの…」


「まだそれ!?いつまでそれ引っ張るんだ!」


「馬鹿野郎…馬鹿野郎!」


「なんで2回言ったんだよ…」


「オレは…お前の(カルピス大盛り!)が、頭から離れないんだよ!気になって気になって仕方ないんだよぉ!」


「私もよ!」


「だから、悪かったって…」


「「このミジンコめ!」」


「言い過ぎだろそりゃあよぉ!」






「…!!」





突然…沙織が顔を青くして立ち止まった。





「?どした?サオリちゃ…!?」





沙織が見つめる先を見て、暖も固まってしまう。



二人の視線の先には…



…茶色いコートを着た男がいた。





「…」


「ダン、あいつが?」


「間違いない…昨日のやつだ」





一真と梨紅は、暖と沙織を後ろに庇い、茶色いコートの男を睨み付ける。





「…退魔士に、魔法使いか?」





一真達の手前、2mの地点で立ち止まった男は、ゆっくりとした口調で問いかけた。





「退魔士、今城梨紅よ」


「魔法使い、久城一真」


「お初にお目にかかります…私、バンパイアのブラッド・C・ピエールと申します。」





軽く会釈し、ピエールと名乗ったバンパイアは茶色いコートを脱ぎ捨てる。



服装は上から下まで黒で統一され、人間にしか見えない。





「魔族であるバンパイアが、人間界になんの御用でしょうか…」


「それはもちろん、美しい女性の美味しい血をいただきに…」


「…まぁ、そりゃあそうだろうなぁ…バンパイアだし」


「あんたは黙ってて」

「…」


「ピエール…でしたね?あなたは今日までに何人の人間の血を飲みましたか?」


「昨日、あなたの後ろにいらっしゃるお嬢さんの血を飲み損ねました…それ以外は、何も」


「本当に?」


「魔族、バンパイア一族の品位に誓います」


「…カズマ、どう思う?」


「…あ、しゃべって良いの?」


「良いから聞いてんでしょ!」


「あぁ…まぁ、一見…最悪の展開は免れたように見える。でも…」


「でも?」


「…お前、華颶夜は?」


「家の机の脇に…は!」





そう…今現在戦力になるのは、魔法使いの一真だけなのだ。





(…どうしよ?カズマ)


(バカ、逃げるしかないだ…)


「私が逃がすと…思っているのですか?」





ピエールは背中から4枚の翼を出して広げる。





「きゃぁ!」


「う…わぁ!」





4枚のうち、下側の2枚が沙織と梨紅を捕獲する。





「リク!」


「サオリちゃん!」


「お嬢さん方はいただいて行きますよ」





そう言って、残る2枚の翼で空へ舞い上がるピエール





「サオリちゃ…おいカズマ!逃げられちまうぞ!?」


「…逃がさねぇ」


「は…」


「"スカイ!"」





暖が「は?」と言う前に、一真はピエールを追って舞い上がっていた。





「きゃぁぁ!いやぁぁ!離してぇぇ!!」


「この…離しなさいよ!変態!」


「ちょっ…お嬢さん方、もう少し大人しく…」


「"フレイム・バースト"」





梨紅と沙織に手こずるピエールの背中に、一真は手の平に収まるくらいの火の玉を叩きつけた





「カズマ!♪」


「な…」


「…バン」





火の玉はその大きさとは裏腹に、ピエールの背で大爆発を引き起こした。





「がぁ!…はっ…!」


「"ウィンド・スラッシュ"」





一真は右手に風を纏い、ピエールの羽を風の刃で斬りつけた



…しかし、軽い金属音とともに弾かれてしまった。





「!?」


「うそ…カズマのそれで斬れないって、どんだけ硬いのよ!?」


「…くぅ…その羽は、血中の鉄分を…ぐ!…使って作られたものですからね…そう簡単には…」


「"フレイム・クロス!"」





一真はピエールの言葉を遮り、炎の剣で翼を焼き斬ろうとした。





「それだけはさせません…」





ピエールが右手で一真を凪ぎ払う。





「く…」


「恐ろしい…攻撃に躊躇が見られない…ここは本気で引かせていただきますよ」





ピエールが翼を羽ばたかせると、コウモリの大群が現れた。



コウモリは一真に向かって一直線に飛んでいく。





「…"レイジング・ファイア"」





一真は巨大な火の玉をコウモリ達にぶつけ、焼き払った。





「…」





コウモリの消えた後に、ピエールの姿は無く…もちろん梨紅と沙織も消えていた。





「くそ…リク…」





一真は悔しそうに顔を歪め、拳を握り絞める…





「ッ!!リクゥゥゥ!!!!!!」







(…何?)


「うぉあ!!」





一真の頭の中に、梨紅の声が響いた。




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