極論男プレゼンス ~煽り運転必殺技~
真似しちゃダメよん(笑)
俺は煽り運転に対する必殺技を考えてみた。まずは煽られやすい車を運転する。煽られやすい車というのは軽自動車やスポーツカー、トラックだ。ターゲットとなりやすい。
俺はフルチューンのR32スカイラインGTRで行く。端的に言うと、ウサイン・ボルトみたいな車だ。
道路は厳選しなくていい。それなりの交通量があれば良い。高速道路はやめよう。死人が出てしまう。片側二車線の国道がいいだろう。
本音を言えば、煽り運転をする奴等を抹殺したいけど、善良な市民が悪事に手を染める訳にはいかない。汚れ仕事は俺に任せろ!
さて、作戦開始だ。日曜日の昼間、混雑する片側二車線の国道へレッツゴー。まずは本屋の駐車場で待機して品定めをする。こちらが狙うターゲットは〝自分が真面目だと勘違いしていて、高級車に乗ってるという事だけしかアドバンテージがない奴〟だ。自分が真面目だと勘違いしてる奴は他人のミスが許せない。煽り運転に走りやすい。高級車に乗ってるだけしかアドバンテージのない奴は、気が大きくなっていて排他的に陥りやすい。おまけにドライビングテクニックもない。
俺は左にウインカーを出し、その時を待つ。
「来た!」
混雑する車が少し途切れた後方に白い高級外車。追い越し車線を走ってる。俺はやや強引に国道に飛び出る。
パァー! 白い高級外車はクラクションを鳴らした。こいつぁ大物が釣れたぜ。
すぐ先の交差点の歩道が赤信号になる。道路はまだ青信号だが、俺はGTRを停車線に停める。パァー! 白い高級外車はまたクラクションを鳴らす。すぐに信号は黄色、赤色となる。
30秒ほどで信号は青色になり、俺は少しアクセルを吹かして、クラッチを繋げ、GTRを発進させる。後ろの高級外車は車間距離を詰めて追いかけてくる。隣の車線はトロいババアが軽自動車を運転してる。オーバーテイクは不可能だ。かかったな? はっはっは。
後ろの高級外車はクラクションを鳴らしたり、パッシングしながら車間距離を詰めて走行しているが、俺には効かない。左足ブレーキを踏んで挑発する。ブレーキランプが点くだけで実際には減速しない程度に。俺はルームミラーで後方を確認すると、高級外車のドライバーが怒り狂ってるのがよく分かる。アハハ。
俺は法定速度60キロメートルのところを40キロメートルで走り、マキシマムプレッシャーを与える。
「おい! ちんたら走ってんじゃねえよ! 退け!」
高級外車のドライバーは堪らず、ウインドウを下げて怒鳴る。40~50代の男だ。それなりの社会的立場もあるだろう。俺は構わず、また左足でブレーキをチョン踏みする。
「ふざけんじゃねえぞ! テメー、ぶっ殺してやる!」
高級外車のドライバーはヒートアップする。
すると、隣の車線を走っていたババアが左折した。高級外車のドライバーは、その隙を逃さず、俺のGTRをオーバーテイクする。そして、高級外車は二車線をまたぐようにしては停車した。
俺もGTRを停める。下手くそだな。二車線を塞いだつもりだろうが、通り抜けようと思えば行けてしまう隙間が空いてる。高級外車のドライバーが降りてきた。俺はドアロックがかかっている事を確認する。そして、GTRのウインドウをガツガツとノックされた。
「降りろ!」
仕上げだ。俺はウインドウを少し下げる。男はGTRの中に右腕をねじ込んだ。男は俺の首を掴もうとしたのだろう。しかし! 俺はウインドウを上げる。
グシッ。
「いってー! 放せ、クソガキ!」
ロックオンした。男の腕をウインドウで挟んだ。
俺はGTRのアクセルを吹かす。
「おい、オッサン。GTRの加速力を見せてやるよ」
バコン! GTRのマフラーからアフターファイアーが鳴る。そして、俺はGTRを急加速させる。男をウインドウに挟んだまま。二車線を塞いだつもりの高級外車をすり抜けて、40キロメートルまで加速させる。
「やめろ! 痛い痛い!」
「そんなんじゃウサイン・ボルトを超えられないぞ! ちゃんと走れよ!」
「許すから! 許すから! やめてください! 足が痛いよー!〝骨が骨折した!〟」
「ナードだな。〝骨は骨折しない〟折れたり、ヒビが入ることがあっても! 煽り運転は極刑だ! それが嫌なら、自走で煽り運転をしろ! そのために、ウサイン・ボルト超えだ! 人類一、速い男に鍛えてやる!」
「意味が解らないよー!」
ーー俺は200メートルほど男を引き摺ってから解放してやった。当然、警察沙汰だ。
俺は警察署の取調室で尋問される。
「何であんな事をしたのかな?」
「ぶっ殺してやるって言われて……。ドライブレコーダーに音声が入ってるかもしれません。俺、怖くて」
「大変な目に遭ったんだね。引き摺った事はおそらく正当防衛になるだろう」
「煽り運転してきた男はどうなりますか?」
「暴行罪で起訴されるだろう。あれでも内科医だよ。たっぷりと慰謝料を取るといい」
「悪は滅びろ!」
こうやって俺は〝お小遣い〟を稼いでいくのであった。