06話 兎達の事情
『村には、兎しかいないのか?それとも他の種族と共生しているのか?』
一応、弾丸白兎達の村にはどんな人(生物)がいるか聞いてみた。
全員兎だったらニンジンだけで良いけど、他の生物がいたらそれに合わせた食べ物を用意しようと思ったからだ。
『私共の村には私共含め、150名が住んでおります。種族は多彩で、内訳は私共元兎がここにいないものを含め30名、元鼠が50名、元猿が20名、元梟が10名、元熊が10名、元狐が6名、元狸が6名、元鷲が5名、元狼が5名、元鹿が4名、元蛇が2名、元虎が1名、元牛が1名になっております。』
結構多くの種族がいるなあ。
肉食獣が居るけどそこは大丈夫なのだろうか?
気になり、そこを聞いてみると、
『ああー。そうですね。普通の動物ならそこはまずいですね。でもそうならないのには2つ理由があります。
1つ目は、村の全員が家族だからです。
村に居る者は、何年前かにメソナン森林が戦火に見舞われた際に、森の一部の者が協力しあい、穴を掘って地下に逃げたもの達、その生き残りです。
なので、皆で協力しないと生きていけないと知っていて、誰も裏切ることのないと信じているので、村の皆で家族に成ろうと誓ったんです。
2つ目は、私共が魔物に成ってしまったからです。
種族名の前に「元」を付けたのはこれが理由です。
原因は、戦火により濃い魔力を浴びてしまったためだと思います。魔物に成ってしまったことは後悔していますが、魔物になったお陰で思考力と、生命力が上がり、肉食獣でも魔力を帯びている植物を食べると、お腹が膨れるようになりました。それで肉食獣達は、家族を食べないで生きていけるようになりました。』
そうか、家族かー。なんかいいなーそれ。
俺も早くその家族の一員に入れて貰えるよう、ニンジンだけじゃなく他の植物もあげようと決め、その事を伝えようと話し掛けてみる。
『ニンジンだけじゃなく、他の植物も村のみんなにあげようと思うんだけど、何か食べたいものはある?大抵のものは作れると思うけど。(『補助人格』作)』
『いいえ、とんでもございません。
私共は食べ物をいただけるだけで満足なのです。村の皆もそれだけでないて喜ぶでしょう。』
俺は弾丸白兎に気圧されながら返事をした。
…俺、兎に気圧されてカッコ悪い。
『そ、そうなのか。』
『そうです。今、村にはほとんど食べ物が残されていないのでそんな贅沢を言うものはおりません。』
えっ、そんなにやばいの?
『そ、そこまで大変なら、もっと用意しようか?それと今まではどうしてたんだ?』
『いいえ、そこまでしていただくわけにはいきません。
それと1年前までは、逃げ込んだ時に持ち込んだ食べ物を食べていたのですが、それが底をつき始め、私共がやっているみたいに、穴を掘って外部に食べ物を探しに行ったり、地上が安全になったかの確認に行ったりをしていました。
しかし、穴を掘ってもなかなか食べ物は見つからず、地上を確認しに行った者達も、地上の濃い魔力で死んでしまいました。
そこに現れたのがあなた様なのです。
あなた様のお陰で、食べ物が手に入り飢え死にする心配もなく、進化させて貰ったこの体なら短い時間でしょうが、地上の濃い魔力の中でも動き回ることができるでしょう。死を待つだけだった私共には、これ以上の喜びはありません。なのであなた様はなにも気にされずとも大丈夫です。』
そんな過酷な状況だったのか。
さらにいろいろしてあげたくなったんだけど、その事を伝えたらまた断られるだろうなあ。
村の様子が詳しく分かれば、こっちで準備して「もったいないから」で押し付けられるんだけどなあ。
≪『領域支配』の効果で『魔魂』になり、弾丸白兎達についていくのはどうでしょう。≫
あ、それがあったか。で、その『魔魂』ってなに?
≪『魔魂』とは、貴方の魂の分身体です。魔魂を貴方が使用している場合は、貴方の本体は『補助人格』が操作します。魔魂の大半は魔力で出来ているため、本体から離れていても『魂の絆』を結ぶことが可能です。ただし、魔魂に使用している魔力が一定値まで下がると、魔魂が消えて本体に吸収されてしまいます。あと、魔魂の形は貴方が今までで得た情報できまります。≫
分かった、今から村までついていって、村の皆と『魂の絆』を結んでも消えないように、魔力の量を調整してくれ。あと、魔魂の形は人の形にして欲しい、将来人と話す機会があるかもしれないし、食事とかも出来るようになるかもしれないし。
あと、弾丸白兎達にもついていくって伝えとかないと、
『おーい。俺も村までついていっていいか?』
弾丸白兎達は驚きながら、
『はい、皆も喜ぶと思うのですが、どうやってこられる予定でしょうか?』
『ああ。それは、俺のスキルでついていくから大丈夫だ。』
俺が話終えると同時に、意識が切り替わった。どうやら丁度『補助人格』が魔魂を作り終えたようだった。
体を確認してみると、人の形をした毛玉になり、光ながら浮いていた。目、鼻、口などもなくただ人の形をしているだけだった。今はこれで良いけど、人と会うときは不便なので、『補助人格』に文句を言った。
これ、全然人じゃないじゃん。ただの毛玉じゃん。
≪参考資料をもとに作成しました。
植物が人の姿で他の生物の前に現れるときはほとんどこの姿です。追加情報があれば、後一度のみ訂正できます。≫
いやもう良いよ、今回はこれで行くから。
これじゃ人間と話せないよなー。はあー。
そう思いながら弾丸白兎達に視線を向けると、弾丸白兎達は頭を下げて泣いていた。
何をしているのかと話し掛けると。
『あなた様の今のお姿を拝見でき、皆嬉しくて泣いているのでございます。申し訳ありませんが村に向かうまで少々お待ち下さい。』
と答えが返ってきた。
どうしてこの姿を見て、こんなに泣いているんだろうと、思いながら弾丸白兎達が泣き止むまでおとなしく待つことにした。