05話 兎達の進化
ウサギ?達が仲間になったけど、これで『支配領域』が使えるようになったのかな?
≪いいえ。『支配領域』の説明の仲間というのは、『魂の絆』を結んだ仲間のことを表しています。この仲間になるには、自身と相手の魔力を少量ずつ交換する必要があります。
仲間になると階級の『主人』『同胞』『眷属』『奴隷』のいずれかが魂に刻まれます。
『同胞』は対等の関係、『主人』は『眷属』『奴隷』を従えることができ、『眷属』は『主人』の意向には従うが自由がきく、『奴隷』は、『主人』に絶対服従で自由はほぼありません。階級は与える魔力の対比で決まります。
ちなみに交換する魔力の質により、相手が進化さすることがあります。貴方の魔力の質でしたら、目の前の『白岩兎』達を進化させることが可能です。≫
あ、今まで話してたウサギ?達って『白岩兎』言うんだ。
早速やってもらおうと白岩兎達に視線を向けると、涙を流し感激しながらニンジンを食べていた。
…仲間になった後、とりあえずお試しで渡したんだけど、こんなに喜ばれるとは思ってなかった。
これ、話しかけて大丈夫かな?そう思いながら白岩兎達の会話を少し聞いてみた。
『うまいな、これ!もうこれからはこれしか食えないぜ。』
『確かに、今まで食べたことのない味でうまいな。』
『この甘味、堪らないな。いつまでも齧っていたくなる。』
『うまい、うまい。もっと、もっと。』
この勢いなら、すぐなくなりそうだしもう少し待っとくかな。水を指すのも悪いし。
でも、目の前であんなに美味しそうに食べられると俺も食べてみたくなるな~。
…植物だからお腹すかないけど。というかお腹ないけど。
あ、さっきの『補助人格』の話だけど、俺は進化できないの?
≪貴方は、既に中の上の生物なので、自身より上位の生物の魔力を吸収するか、自身より下位の生物の魔力を数百種類分吸収する必要があります。≫
…そうか、だいぶん長い道のりだな。
ここからも移動できないし、森は焼けてて生物いないし、はあー、進化は諦めるか。
そう説明を受け、俺ががっかりしていると、ニンジンを食べ終わった白岩兎達がこちらをみていた。その目は先程の仲間宣言の時の感謝や尊敬ではなく、期待や信仰の眼差しになっているような気がしたが、気にしないでおこう。
とりあえず俺の『魂の仲間』になるか聞いてみた。
『えーと、俺のスキルのじっけ、関係で俺とお前らで『魂の絆』を結びたいんだけどいい?もちろん階級は、『同胞』でいいから。』
白岩兎達は驚き、少し間をおいて仲間宣言した時の白岩兎が前にでて来た。
『本当に私共のようなものと『魂の絆』を結んでいただけるのですか。』
『うん、嫌なら別にしなくてもいいけど。』
『いえいえ、そんなことはございません。私共全員、あなた様と『魂の絆』を結べることを嬉しく思います。』
そう言うと後ろの白岩兎達が一斉にうなずいた。
『ただ、私共の階級は『奴隷』にしていただけないでしょうか?』
『いや、別に『同胞』でいいと思うんだけど。』
『いえ、私共のようなものは、本来ならばあなた様のような方と『魂の絆』を結ぶ資格すらありません。なのでどうか、『奴隷』にしていただけないでしょうか?』
うーん、元人間として言わせてもらうと、奴隷ってあんまり良いイメージがないから嫌なんだけどなあ。それにただスキルを試してみたかっただけだし、別に『同胞』でもいいと思うけど、あそこまで言われると断りづらいなあ。
とりあえず、『奴隷』ではなく『眷属』を進めてみるか。
『俺は『奴隷』があまり好きではないんだ。どうしてもと言うなら、『眷属』にならしても良いけど。』
白岩兎達は少しざわついたが、直ぐに結論が出たようだ。
『分かりました。慎んで私共一同、あなた様『眷属』に成らせていただきます。』
そう言うと、白岩兎達は頭を下げた。
そうして、1羽ずつ俺の根っこに触り、『魂の絆』を結んでいった。
全員で15羽いた白岩兎達と『魂の絆』を結び、魔力が体に馴染むのを待っていると、1羽ずつ体が光だした。
どうやら本当に進化したようだった。
光が収まるとそこには、普通のウサギ達がいた。
間違って退化させちゃった?と思い眺めていると『補助人格』が答えてくれた。
≪いいえ、しっかり進化しています。種族名は、『弾丸白兎』といい、体は小さくなりましたが、進化前の『岩白兎』より全て能力が高く、中でも素早さと攻撃力が段違いに上昇しています。≫
と言われた。なんか前より見た目が弱そうだけど、進化してるなら良いかと思い、あらためて弾丸白兎達をみてみる。
1ヶ所に集まって互いの体を確認しているところだった。
あ、柔らかくて凄くもふもふしてそう…、そうじゃなくて、進化前は、あんまり手入れされてなかった毛が、進化の影響かブラッシングされた後みたいになっていた。あと、白色だけだった毛の色が、1羽1羽に違う色の模様?がはいっていた。
弾丸白兎達が落ち着くのを待って話しかけた。
『体の調子はどうだ?』
『はい、とても良いです。『魂の絆』をしていただいたうえに、進化までさせていただいたのです。これで体の調子が悪くなる訳がないでわないですか。』
『そ、そうか、それはよかった。それで、ニンジンはここにおいておけば良いのか。』
『はい。それは良いのですが、あなた様が最初に言っておられた、お願いとはなんでございますか?』
『ああー、それは…。今、地上では目立ったことはしたくないから、地下で植物を育てる実験をしてみようと思ってたんだよ。だから、お前らはある程度広い場所を掘って、『地下農場』を作ってくれるだけでいい。どうだ?できそうか?』
『その程度でしたら、ここにいるものだけでも可能です。』
『分かった、よろしく頼むね。ニンジンはここに置いておくようにするから、『地下農場』が出来たら、俺の根っこを触って呼んでくれれば良いから。じゃあまた今度。』
俺が意識を別の場所に移そうとすると、先程から話していた弾丸白兎が話しかけてきた。
『お、おまちくだい。どうか私共、いいえ村の者全員であなた様を手伝わせていただけないでしょうか。そ、そうでないと、このニンジンを受け取る資格が私共にはありません。どうかお願いします、私共にあなた様を手伝わせてください。』
『『『『『どうか手伝わせてください。』』』』』
と言い弾丸白兎達が頭を下げてきた。
自由に動けないこちらとしては、場所を作って貰うだけで十分助かるんだけど。
んー。『補助人格』、質問なんだけど、村にいるやつらがコイツらと同レベルだったら、『魂の絆』で進化させられる?
≪可能だと思われます。≫
分かった、ありがとう。
そう『補助人格』にお礼を言い、弾丸白兎達に話しかけた。
『分かった。だがその代わりに、新しい条件をつけさせてもらう。その条件とは、「村の者達全員に俺と『魂の絆』を結ぶこと」だ。それでよければ、俺の手伝いをすることをゆるそう。』
それを聞くと、弾丸白兎達は泣きながら、『何て慈悲深き方なんだ。』『神様のようだ。』『一生ついていきたい。』など、様々なことを言っていた。
ただ1羽、俺と話していた弾丸白兎だけは、体を震わせるだけに留めていたが、目は俺を崇拝しているように見え、俺は背筋がないのに背筋がむずむずする感覚に襲われた。
でも、弾丸白兎達が喜ぶ姿をみるのは、微笑ましかったので、そのまましばらく眺めていた。