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樹木転生生活  作者: シキシ
転生
21/30

閑話 施しの聖女 (4)

村を出て数週間が経ち、私の乗る馬車はようやく、王都に到着した。王都は高い壁で覆われており、外敵から王都を守れるように作られていた。王都の壁には、一ヵ所大きな門があり、そこには長い人の列ができていた。私達も、この列に並ぶのかと思うと少しげんなりとする。数時間待っていると、ようやく私達の番がきた。男が馬車を降り、門番達と話を始めた。


「お疲れさん。俺は通行証があるが、馬車に乗ってるお嬢ちゃんの分はないんだ。今作ってくれ。」


「はぁー?分かりましたが、身分を証明できるものはありますか?あれば、時間短縮できますが。」


「んー。これでどうだ。」


男は、鞄から一通の手紙を取り出して門番に渡した。

門番は手紙を受けとると、目を丸くして驚き、手紙と男と馬車を何度も見た。


「これは、教皇様のて紙じゃないですか!……それならあの馬車に乗っている方があの……。はっ、失礼しました。通行証はすぐにでも作れます。しかし、この手紙があれば門の列にならばなくても先に入れますし、通行証だって必要ないのでは?」


「あー。そうだった、そうだった。いつも列に並んでたからつい今回も並んじまった。通行証もせっかく並んだし、作ってやってくれ。……使う時が来るかもしれないし。」


「はっ、では今すぐ通行証を作成します。」


門番は、手紙を受け取るとすぐに詰め所に走っていった。

男は、馬車に戻ってきて私の隣に腰を下ろした。

私は、手紙の子とを知らなかったので男に聞いてみることにした。


「あの手紙は、なんですか?」


「あれは、教皇様があんたをここに連れてくるようにって、俺に渡した依頼書だよ。」


「そうですか。それとは別ですが、さっきの門番さんとの話、聞こえていましたわよ。直接門に来ていれば、そのまま通れてたんですね。私、すごく暇だったんですが。」


私は、頬を膨らませながら男をにらんだ。男は驚き私を見たが、私と目が合いすぐにそっぽを向いた。

男が驚くのも無理はない。私は馬車の中にいるうえに、門番と男が他の人に聞かれないように話をしていたのに、その話していた内容が私にばれている、普通は聞き取ることが不可能な話を私が聞いていたからだ。

確かに、普通なら無理だけど私には、それを可能にするスキルがあった。それは『動物会話』というスキルだが、本来の用途とは違う使い方をした。


私がある日動物達と話しているとき、私はふと思った。「動物達の話は分かるけど、声が聞こえないのはどうしてだろう。」と。その日から、動物達に協力してもらい、私は色々と試してみた。

話すときに口に葉っぱを近づけて見たり、水に顔を浸けてもらって話すように言ってみたりした。結果、私には聞こえていないだけで、実際は口から声が出ていて、それを『動物会話』のスキルが聞き取れるようにしていると()()した。

すると、動物達の今まで聞こえなかった声が聞こえたり、遠くの音や声も聞こえるようになった。私は驚いてステータスを確認したが、ステータスには新しいスキルが増えたりはしてなかった。

その時私は、スキルの可能性を知った。それで、いろんなスキルについて考え試しているうちに、『治癒』等のスキルが他の人より、効率良く使えるようになった。特に『動物会話』は、内緒話を聞いたり、家から脱走したりするときに重宝した。

そして、今回は手紙が気になり、こっそり『動物会話』で話を聞いたのだ。

私が、そんなことを思い出しながら男を睨んでいると、男は頭を掻きながら紙切れを私に私ながら話しかけてきた。


「はぁー。分かった、分かった。これをやるから勘弁してくれ。」


私は受け取った紙切れを見てみたが、紙切れには住所が書いてあるだけだった。


「何これ?ここに何かあるの?」


「ああ、そこには俺の家がある。お前がそこに来たら、どんな仕事でも一回だけ、ただで受けてやる。感謝しろよ。教皇様からも依頼を受ける俺に、ただで仕事を受けてもらえるんだからな。」


「分かったわ。これで手をうってあげる。」


私は貰った紙切れをポケットにしまった。

男は、


「可愛いげがねえぞ、お嬢ちゃん。」


と言い窓の外に目を向けた。

それから少し経つと、馬車を叩く音が聞こえ、男が馬車から降りた。先程の門番から、手紙と通行証を受け取ると、すぐに馬車に戻って来て馬車を発車させた。


門を潜ると、驚いた。村にある一番高い建物より数倍大きい建物が、そこらじゅうに建っていた。それも、乱雑に建っているわけではなく、きちんと整理されているようだった。その証拠に、目の前の道は、障害物がなく一直線に城まで延びていて、多くの馬車や人がその道を通っていた。しかし、一番大きく目立つはずの城は、少し古ぼけていて所々に蔦が生えたり、壁が風化して崩れたりしていて、人がが住んでいる様には見えなかった。

私が、城を見て首を捻っていると男が苦笑しながら話しかけてきた。


「あの城はな、幻覚なんだよ。この国の王様は少し偏屈でな、昔の城を作り替えるときにこう言ったんだ。

「この城は、由緒正しく例え風化しても美しい。だが、建て替えねば国として舐められる。だから、この城の外観を風景を幻覚として残し、城本体は建て替えよ。もし、他国の使者が来て、この幻覚の城を見てバカにしてきたら、この城の美しさも幻覚もどちらも分からぬ者だと笑ってやれ。」

と言って、今も特殊な魔道具で昔の城を幻覚として残してるんだ。本物と全く見分けがつかない幻覚なんで、王都の民の殆どは城を立て替えたことすら知らねえ。知ってても、幻覚を破るすべを知らないものでは、本当の城を見れない。全く他国の使者には同情するぜ。」


「ふーん。そうなの。……どうして貴女はそれを知ってるの。

殆どの人が知らないはずでしょ。」


私が問うと男は顔に笑みを浮かべながら言った。


「それは、俺が城の関係者か、幻覚を破るすべを知っているか、情報を手に入れるのがうまいかのどれかだな。今度会うときにでも、正解を当ててみな。」


と言い馬車を城へ続く道へと走らせた。

私は男の問いについて考えながら、馬車の窓から王都の町並みを眺めていた。

30分程馬車が走ると、村の教会より大きく、派手で、私の趣味とはあまり合わない教会についた。馬車が止まると、男が私の手を引き馬車から下ろした。教会の前にはシスター達がいて、教会の周りを掃除していた。男が近くのシスターに話しかけた。


「おい、ちょっといいか。俺は、教皇様からユエレ・サリエラを連れてくるよう命じられた者だ。教皇様に取り次いでくれ。」


と言い鞄から手紙を出して、目の前のシスターに渡した。

シスターはそれを受け取り、手紙を見るとこう言ってきた。


「確かにこの字は、教皇様のものです。今確認して参ります。しばらく、ここでお待ちください。」


と、どこか不自然な声と不自然な作り笑いで言い教会の中に入って行った。私は、不思議に思いながらもその場で待っていると、男が私の荷物を馬車から下ろしながら話しかけてきた。


「俺は、教皇様にお前を会わせたら、すぐ帰るから頑張ってお願いしてみな。そうそう、これ、渡すのを忘れてたから渡しておくぜ。これがないと、王都から出られないから気をつけな。」


と言い私に通行証を渡してきた。

あれ、でも、元々私が()()()()()()()()()()()だよね。と思い、男に聞き返そうとすると教会の方から声が掛かった。私はなぜか、咄嗟に許可証をポケットに仕舞い、声のした方を見た。


「これはこれは、ユエレ・サリエラさんお待たせして申し訳ありません。私がこの王都の教会の教皇、マフル・タルマットです。今日からよろしくお願いしますね。」


と言い豪華な神官服を着て、お腹が異常に大きい人、マフル・タルマットが私に手を差し出した。私は躊躇しながらその手を握り、挨拶をした。


「こちらこそ、改めてユエレ・サリエラです。よろしくお願い致します。ついて早々なのですが、教皇様にお願いがあるのですがよろしいですか?」


教皇様は私から手を放すと、顎に手を当て考える素振りをして答えた。


「内容にもよりますが、貴女たっての願いです。検討してみましょう。さあ、今日までの長旅、さぞ疲れたでしょう。今日は、もう自室で休まれて旅の疲れを癒しなさい。シスターヤツリア、彼女を、部屋に案内してあげなさい。」


そう教皇が言うと一人のシスターが私の前に来て、


「ヤツリアです。これからよろしくお願いしますね。サリエラさん。貴女の部屋に案内するわね。」


と言った。……やっぱり、なぜか、シスターヤツリアの笑顔や声が不自然な気がした。

そう考えていると、シスターヤツリアが私の荷物を持ってくれようとした。私は、慌てて自分で荷物を持ち、シスターヤツリアのあとをついていった。

後ろでは、教皇様と男が話していたが報酬の話だったのでそのまま、シスターヤツリアのあとを追った。


教会の中も豪華で、廊下の壁一面のステンドグラスや天井の絵画何て初めて見た。ふと一つ気になり、シスターヤツリアに聞いてみた。


「あの、シスターヤツリア。一つ聞いてもいい?」


すると、シスターヤツリアは不自然な笑顔を浮かべながら振り返った


「はい、私の答えられる範囲でしたら大丈夫ですよ。」


「なんでそんな話しか、じゃなくて、この教会には教皇様以外は、男性の神官はいらっしゃらないの?」


ビックリした。話し方のことを聞こうとした瞬間、シスターヤツリアの雰囲気がピリピリした。昔、私が『守り神』様のことを少し悪く言ってしまって、動物達が私に喧嘩を仕掛けてきたときみたいに。よかった、もう一つ質問を考えてて。

シスターヤツリアは笑顔で答えた。


「それわね。教皇様が、王都の外は危ないからって、男性の神官に王都の外の作業をさせて、女性のシスターに町の中の作業をさせてるのよ。」


と言い私の返事を待たずに、再び歩き出した。

私は、シスターヤツリアの言葉が少し引っ掛かったが、シスターヤツリアが歩き出したので、急いであとをついていった。

それから、少し歩きシスターヤツリアが止まった。


「ここが今日から貴女の部屋です。トイレとお風呂はこの廊下を左に行った所です。明日改めて来ますので、それまでは自由にされて構いません。あ、食事も今日は私が持ってきますので、お気になさらないでください。」


「本当に至れり尽くせり、ありがとうございました。」


「いえ、新しい同僚のお世話ができて私わ幸せですよ。」


そう言い残し、シスターヤツリアは廊下を戻っていった。

私は荷物を持って部屋にはいると、部屋は掃除が行き届いていて綺麗だった。私は早速ベッドに飛び込むと、ポケットに入れている許可証のことを思い出した。許可証を見てみると、許可証の裏面の一部が盛り上がっていた。私はそれが気になり、許可証をじっくり見てみると、許可証の一部が剥がせるようになっていた。私はそこから許可証を剥がすと、種が一つ落ちてきた。種は昔、『守り神』様から貰ったものと同じような気がした。

剥がした紙の裏面は、許可証の裏面と同じことが書かれていたが、剥がした面には効果いてあった。


「種を飲め、そして、食事に気を付けろ。」


良く分からなかったが、種には見覚えがあったので飲み込んでステータスを開いてみた。

……予想通り、スキルが一つ増えていた。それは『鑑定』だった。

聞いたことのあるスキルだったので、『隠者のローブ』に使ってみた。『隠者のローブ』の名前と効果が見れた。

私に種を渡した人は、何を考えているんだろうと思いつつも、考えても分からなかったので、荷物をタンスやクローゼットに閉まった。そして、なにもすることがないので、ベッドの上でゴロゴロしていると、ドアを叩く音が聞こえた。


ドアを開けると、食事を持ったシスターヤツリアがいた。


「はい、これ。今日の夕食ね。食べ終わった食器は、明日の朝食の時に持っていけば良いから。じゃあ、また明日。」


シスターヤツリアはそれだけ言うと、私に夕食を渡し急ぎ足で去っていった。私は、それを不思議に思いつつ、夕食を部屋に運んだ。そして、机に置き夕食一品一品に『鑑定』を使ってみた。

しかし、夕食は旅の疲れを取る為の料理だけだった。

私は、あの紙になんであんなことが書いてあったか分からなかったが、とりあえず料理を食べて早めに眠ることにした。明日、村のことを教皇様にお願いしなければいけないので、少しでも頭を使えるようにしておきたかったから。


次の日、私が起きて村で着ていたシスター服に着替えていると、ドアを叩く音が聞こえた。返事をして、着替えを済ませてからドアを開けると、空の食器を持ったシスターヤツリアがいた。


「お早うございます。良い朝ですね。さあ、食堂へ一緒に行きましょう。あ、もちろん昨日の食器は持ってきてくださいね。」


「お早うございます。分かりましたわ、すぐ準備します。」


私は、そう言い昨日の食器を持ってシスターヤツリアの後をついていった。食堂に向かう道中、多くのシスターと挨拶を交わした。食堂に着くと、すでに多くのシスターが自分の朝食を取って席に座っていた。……やっぱり、男性は一人もいなかった。

私は、シスターヤツリアと同じように食器を流し台に置き、朝食を取って席についた。朝食にも一様、『鑑定』を使ってみたが普通の食事だった。全員席に着くと、一人のシスターが立ち上がり話し出した。


「今日も我らにお恵みを下さる、『ニリア神』様に感謝して、食事をいただきましょう。」


え、私そんな事村ではやったことないよ。どうしよう。そう思いながら、隣の席のシスターヤツリアの真似をした。

シスターヤツリアは、両手を胸の前で組んで目を閉じていたので、それを真似した。目は少し開けていたけど。


「『ニリア神』様今日も我らに生きる糧を与えていただきありがとうございます。」

「「「「「ありがとうございます。」」」」」

「………ます。」


「我らは『ニリア神』様のご意向を今日も広めます。」

「「「「「広めます。」」」」」

「………ます。」


「我らの忠誠を受け取りください。」

「「「「「受け取りください。」」」」」

「………さい。」


とりあえず合わせて見たけど、少し遅れてしまった。冷や汗をかきながら、次の言葉を待っていると、シスター達が食事を始めた。ほっとしていると、シスターヤツリアが話しかけてきた。


「ふふ、ごめんね。説明してなかったわね。ここでは朝食前に、略式の祝詞をあげるの。今度からは、頑張って合わせてね。」


と言い朝食を食べ出した。私も頬を膨らましなが食べながら、『ニリア神』様への祝詞を知らなかったので、あとから調べようと思った。食事を終えると、シスター達はそれぞれの持ち場へ向かうようだった。私は、教皇様に願いしたいことがあったので、シスターヤツリアにその事を話した。


「あの、私、教皇様にお願いしたいことがあるので、教皇様に会いたいんですが、教皇様はどこにおられますか?」


「そう、でも貴女にはこれから10日間、『ニリア神』様へ祈りを捧げ続けないといけないの、そのあとだったら会いに行っても問題ないのだけど。」


困った様にシスターヤツリアは、頬に手を当て考え始めた。

だが、私にとっては最優先で最も急いでしなくてはならないことだ。こうしている間にも戦争が始まるかもしれないし、教皇様にお願いが通った後の準備も時間が掛かるかもしれないからだ。


「どうにか今すぐ会うことはできないのですか?」


「はっきり言って無理ね。これはこの教会の規則なの。昔、この教会に入り込んで、教皇様の命を狙う者が出てから、作られた規則だからね。」


シスターヤツリアの、私を見る目が一瞬険しくなった気がした。確かに今のは、ここの規則を違反して教皇様に会おうとした私が悪かった。気持ちを切り替えて私は話を続ける。


「でしたら、話だけでも伝えていただけませんか?」


「その程度、でしたら大丈夫よ。その代わり、教皇様からの返事は、貴女の祈りが終わってからになるけど良いわね。」


「はい、ありがとうございます。」


私は、今できることが出来たと思い喜んで頭を下げた。

シスターヤツリアは、それを見て頷き、


「素直でよろしい。じゃあ、祈りを捧げる為の部屋に案内するわね。」


と言い私の肩を叩き、私を連れて教会の地下に向かった。

向かった部屋は、石で覆われた部屋で、中にはトイレと十字架を飾った祭壇だけがあった。扉はは一つで、食事を出し入れする窓があるだけ、はっきり言って独房と同じような気がした。

私が、部屋の様子を見てその異様さに一歩下がると、シスターヤツリアにぶつかった。

シスターヤツリアは、にっこりしているだけだったが、私はそれが少し怖かった。


「あ、あの。本当にここで祈りを捧げるのですか?」


「ええ、トイレと祭壇があるのはこの部屋だけなの。でも大丈夫よ、この教会のシスターは皆この部屋で過ごしたことがあるから。」


「そ、そうですか。じゃあ今から言うことを教皇様に伝えてもらって良いですか?」


「分かったわ。必ず伝えるわ。」


私は、シスターヤツリアに村のこと、戦争のこと、お願いのことをすべて伝えた。シスターヤツリアは、相づちをうち、しっかりと私の話を聞いてくれた。

そして、部屋を出て、扉を閉めて、こう言ってきた。

「じゃあ、鍵を閉めるわね。貴女と10日後に会うときを楽しみにしているわ。()()()()()とね。」


ガチャンと音をさせ扉に鍵が掛かった。

私はおとなしく祈りを捧げ始めた。

……飽きた。元々ちゃんとしたシスターをやっておらず、『ニリア神』様を信仰していない私には、10日間のお祈りは辛かった。3時間で飽きた私は、新しく手に入れた『鑑定』をいろんな物に使ってみた。鑑定の範囲を広げてみたり、狭めてみたりして、効果の欄が変わるのを楽しんだ。

色々鑑定していると祭壇に気になるものを見つけた。

そこは一見なにもないが、なぜかそこだけ薄く削り取られていた。

鑑定の範囲を狭めると、一文字づつだが文字が分かった。続けて読むとこう書かれていた。


() () () () () () () () () ()


私は寒気を感じた。ここでも食事に関して書いてあり、誰かがこれを消していたからだ。

私は何か恐ろしいことに巻き込まれてるのだろうか。シスター達の様子が変だったのはなんでなのだろうか。私はこれからどうなるんだろうか。そう思い私は震えだしそうになった。


コツコツコツコツ


外から誰かが階段を降りてくる音が聞こえた。私は急いで祈りを捧げ始めた。そうしている間は、なにもされない気がしたからだ。私は震えをどうにか押さえながら祈り続けた。足音は部屋の前で止まった。


ギィー、カチャカチャ、ギィー。


何か扉の方で、音がした。私は懸命に祈り続けた。すると、足音は部屋から離れ、階段を上がって行った。

私は一息付き、音のしていた方を見る。食事が用意されているのを見て、一瞬だけほっとした。

そして、ゾッとした。今まで、二つも食事に気を付けろと書かれているものがあったのだ。警戒しないわけにはいかない。

私はそっと、食事を見てみる。……見た目は普通だった。『鑑定』を使ってみた。

パン以外が食べられないことが分かった。

サラダに使われている野菜は、媚薬効果の有る物や、依存効果が有る物で作られていた。

スープは、幻覚、幻聴効果や中毒依存効果、興奮効果の有る物が、溶かされていた。

パンだけは、疲労回復効果が有るだけだったが、慎重に少しずつちぎって食べた。すると、中から『契約の種』が一粒見つかった。効果は、分からなかったがろくなものでないと思った。

なので、サラダとスープ、そして種をトイレに流した。

食べていないと、怪しまれる可能性があったからだ。

私は、はっきりここにいたら不味いと思った。だが、もし村を救えるならという希望も少しあった。私は、現状をどうすることも出来ないので、仕方なく『動物会話』で情報収集をした。

範囲を教会内に絞るとあっさりすべての会話が聞こえた。普通は、こんな広範囲の音を全て聞き取るのは無理だが、この教会は普通でなかったので可能だった。この教会には、シスターしかおらず、そのシスターも参拝者と話す者以外は、必要最低限の会話しかしないからだ。シスター達は、与えられたことをするだけのゴーレムみたいに、感情を出さず仕事だけをコツコツとしていた。

そして夜になった。私は、持ってこられた食事を慎重に食べ、改めて『動物会話』を使った。食べたものを全てぶちまけた。聞こえてきたのは、その、何て言うかシスター達による、自慰行為の声だった。シスター達は私と同じ食事を取って、火照る身体で自慰をしていた。私は急いで、『動物会話』を切って眠った。

そんな日々が続き、ついに最終日の朝になった。

あれから分かったことだが、全ては教皇によるものだった。教皇は、気に入ったシスターをこの教会に集め、私が今受けていることをして精神のバランスを崩し、『契約の種』で自分に都合良くして、シスターを弄んでいた。私は正直、教皇を許せなかったが、村の皆を救ってくれるなら、黙っていても良いと思った。

私は、何より村が大切だったから。しかし、私が聞く前に話していたのかは、分からないが私が聞いている中では、私の村のことは話していなかった。あとで聞きに行かないとと思っていると、階段から誰か降りてくる音が聞こえた。音は扉の前で止まり、扉を開けた。


ガチャン、ギィーー。


扉を開けたのは、シスターヤツリアだった。


「おめでとう、これで貴女もこの教会の人間よ。」


そう言いシスターヤツリアは両手を広げてきた。私は、食事をしっかり食べてないのをバレないように演技を始めた。


「はぁ、はぁ。あ、ありがと、ごさいます。」


「そういえば、貴女の村のこと聞きたい?」


「はぁ。えっ、そんなことより、き、教皇様に、お、あっ、お会いしたいのですが。」


「貴女は今日は自室で休みなさい。教皇様には明日会えるよう、私からもお願いしておくから。」


シスターヤツリアは、顔を笑顔にしながらそう言ってきた。

私は、シスターヤツリアに連れられ、自室へ戻った。

昼食、夕食は、普通の料理か出てきた。

どうやら、飢えた私が教皇に襲いかかるという体裁を取ろうとしていたようだ。……半分は、今から行うが。

私はシスター達が、部屋に籠るのを待ち作戦を行動に移した。

顔に布を巻き、『隠者のローブ』を被り、自室の物を全て一ヶ所にまとめた。そして、部屋を出て真っ直ぐ教皇の部屋に向かった。途中見回りがいたが、『動物会話』で見回りがいない道を選び、私は教皇の部屋についた。教皇の部屋の扉に鍵をかけ、用意した包丁を片手に持ちながら、寝ている教皇を蹴飛ばした。

教皇は床に転がり、やっと起きたが状況が分からず、周りをキョロキョロ見回した。私は、そんな教皇の髪を握り、後ろをとり首もとに包丁を当てた。教皇がパニックしだしたが、私には関係ない。「うるさい」と言い包丁で薄皮を切った。


「おい、この前来たシスターが頼んだ件はどうなった。」


「ひ、ひいい。だ、誰か、誰かいないか。」


「黙って私の質問に答えろ!」


私は逃げ出そうとした、教皇の頭に包丁の柄を叩き込んだ。


「わ、分かった。なんでも話す、だから殺さないでくれ。

この間来たシスター、ユエレのことじゃな。確か、あのシスターは明日会う予定のはずだが。」


ザクッ、


「痛い、痛い!」


私は包丁で教皇の右胸を薄く指した。教皇は痛がり、床に転がろうとしたが、私は教皇の髪を握りそのまま立ち上がらせた。


「それだけか?伝言とかは、なかったか?」


「っつ、で、伝言?あ、ああ、ありました、ありました。確か、村が戦争に巻き込まれるかもしれないから、村の住人を避難させてほしいと言われていました。」


「それで。」


私が聞くと教皇は、ニヤリと口許を緩ませて答えた。


「なにもするわけないでしょ、欲しかった女は手に入った。その女がいない村など、少しも救う価値がない。違いますかな、ユエレ・サリエラさん。」


私は教皇の言葉のショックと、正体がバレていたことに驚き、教皇の髪を握っていた手を少し緩めた。教皇は、その隙をつき私から距離をとり、自分の右胸に手を当て『治癒』を使いだした。


「いや、驚きましたよ。ユエレさん、美しいだけじゃなくそんなこともできたんですね。貴女の有用価値が更に上がりましたよ。どうです?今なら、私の右腕として私の側に侍ることを許しますよ。」


教皇は、余裕の笑みを私に向け、異常な速度で『治癒』を終わらせ、私に聞いてきた。私はそれを見ながら聞き返した。


「それで私の村を助けてくれるなら、貴女の下についてもいいわ。」


「?……はっはっはっはぁー。それはありません。私は、貴女の言うことを聞く必要が有りませんから。」


「じゃあ、私は貴女を殺して村に帰らせてもらうわ。」


私は、包丁を両手で持ち教皇へ向かって走り出した。しかし、教皇は避ける素振りはなく、ただにやけながら口を開いた。


「崇めなさい。」


教皇がそう口にした瞬間、私は包丁を手放しその場で膝をつき、両手を胸の前で組み始めた。私が自由に動かない体に驚いていると教皇が近づき話しかけてきた。


「どうですか?私は、ただ貴女に話しかけていただけではないのですよ。貴女は、どうやってかは分かりませんが、教会に入った後『鑑定』を手に入れ、教会の食事がおかしいことに気づいている。そして、そのような認識を阻害する魔道具を使い、私の部屋まで辿り着いている。恐ろしいことこの上ない。だから、私は貴女に対して一切の手加減はしません、私の奥の手で相手をしてあげます。

そう、この資格スキル(クオリフィケーション) 『信仰』でね。」


「な、にを、言って、そんなスキル、貴女には、ないはず。」


「おや、まだ貴女。喋れるとは、余程信仰心がないか、それとも邪教徒なのか。貴女には驚かされますね。良いでしょう、このスキルが貴女に馴染むまで話してあげましょう。」


そう言い、教皇は椅子に座り肘を付きながら話した。


「まず、このスキルは自分が資格スキルを所持していないと、『鑑定』を使っても視ることができません。普通のスキルとは、違うスキルなのです。このスキルは私を神、又は信仰対象と視ている者の行動を強制できます。」


「私は、貴女なんかを、信仰してない。」


「まだ、話の途中ですよ。私は教皇です。目に見えない神より民衆は、目に見える者を信仰するものです。そして、『ニリア神』様を信仰する教会のトップが私。つまり、私を視て神への信仰を私へ注ぐのです。貴女も『ニリア神』様を、信仰しているのではないのですか?その信仰こそが私を強くして、貴女を縛るのです。どうですか?()()できましたか?それでは私自らこの『契約の種』を食べさせてあげましょう。

さあ、口を開けなさい。」


教皇が、机の引き出しから種を取り出し、私へと近づいて来た。私の体は動かず、私の意志に逆らって、教皇の言葉通りに口が開いた。私は怯えながら、教皇が近づいてくるのを見ていることしかできなかった。教皇が、私の顔を掴み種を入れようとしているとき、声が聞こえた。


『諦めないで!』


その言葉を聞いた瞬間、何かが私の中に入ってくるような気がした。すると、体が動くようになった。私は、落ちていた包丁を拾い、そのまま無防備な教皇の左胸に突き刺した。それは、何時もより力が入っていたようで、包丁の柄元の部分まで教皇に刺さった。教皇は、ヨロヨロと後ろに下がりながら呟いた。


「ば、ごほっ、な。神よ。これが私へのバツで、か。」


そう言い、教皇は血を流し倒れた。私は、初めて人を殺したことで呆然としていたが。外から奇声が聞こえてきたことで、我に帰った。部屋を出て見ると、外は半裸のシスター達が奇声を上げながら、走り回っていた。中には教会に火を放っている者もいて、地獄のようだった。私は訳が分からず、『隠者のローブ』を深く被り、自分の部屋へと走った。部屋に着くと纏めていた荷物をとり、教会を出るために走った。私が教会から出ると、教会は半ば炎上していた。

私は振り返らずに道を走り抜けた。体が軽かったり荷物が軽かったりしたが、それどころではなかった。

あの、体が動く直前で聞こえた声は、シスターマリの声にそっくりだったからだ。私は、嫌な予感がして走った。紙切れに記された住所に住所に向かって。


私は数時間走り、目的の場所についた。

私がドアをノックしようとすると、ドアが勝手に開いた。


「そろそろ、来る頃だと思ったよ。さ、とりあえず中に入りな。」


と言い私を王都に連れてきた男が話しかけてきた。

私は、少し驚いたがすぐ家の中に入った。今はこの男の協力がどうしても必要だったから。私は、男に促されるまま椅子に座った。男は、紅茶を作りながら話しかけてきた。


「あいつを、殺してくれてありがとな。俺じゃあいつを殺すことはできなかったからな。」


「っつ、なんでわかるの。私が教皇を殺したって。」


「分かるさ。それが分かってて、嬢ちゃんを教会に送ったし、教会が火事になって血の匂いをさせている嬢ちゃんがここに来たんだからな。」


男はそう言いながら、私に紅茶の入ったカップを渡した。

私は呆然としながら、その紅茶を受け取ったがすぐに男に聞き返した。


「どうして分かったの。貴女何者なの。」


「おいおい、お前はそれを聞きにここへ来たのか?他に急ぎの用事が有るんじゃないのか?」


とはぐらかされた。でも、確かに私には、それより重要なことがあったのでそれを聞いた。


「今、戦争はどうなってるの。」


男は紅茶を飲みながら答えた。


「3日前に始まっている。」


私は、紅茶を落とした。手が震え出したからだ。そして、男の肩を掴み依頼した。


「私を村に連れて行って。これは依頼よ。お願い。私を村に。」


男は肩から手をどけると言った。


「お前は行けば、必ず後悔することになる。本当にいいのか?」


私は、頷いた。一刻も早く、村へ戻りたかったから。


「私は、村へ戻らなくちゃいけないの、後悔をすることになっても、ここでなにもしないなんてできない。」


「…分かったのそこまでの覚悟があるなら止めはしない。だが、俺が連れていけるのは途中までだ。戦争のど真ん中には行けないからな。」


「それでも構わない。」


男はため息を付きながら私に言った。


「通行証を渡して、裏に有る馬車に乗れ、すぐに村へ向かってやる。」


「ありがとう。」


私はそう笑顔で言って裏口へ回った。

だから、その後の男の独り言は私には聞こえなかった。


私は男と馬車に乗り門へ向かった。火事騒ぎがあるから、門を通るには時間がかかる、最悪の場合は捕まると思ったがすんなり門を通れた。私が男に聞いても、「通行証があるからだ」としか答えなかった。……男と門番の会話を聞く限り、絶対それだけではなかったが。気になったが、私は男の機嫌を悪くしないようそれ以上追及しなかった。男は、王都に来たときの倍の速度で馬車を走らせ、半分の旅路で村の近くまで着いた。私はその間、ずっと祈りを捧げていた。教皇が死んだことで、神様に直接願いが届くと思ったから。


「おい、嬢ちゃん。俺が来れるのはここまでだ。ここらはすまないが歩いていってくれ。」


「いいえ、ありがとう。ここまで送ってくれただけで十分よ。」


私は馬車を降りながら男に言った。

男は頭を掻きながら私に言ってきた。


「嬢ちゃん、もし困ったら俺のところに来な。話くらいは聞いてやる。嬢ちゃんは可愛いから依頼も格安で受けてやるよ。本当は伝えちゃダメだが、俺の名前を伝えてやるよ。俺の名前は、エヒラ・トイカンナ。覚えておきな。」


「ありがとう。エヒラさん、覚えておくわ。」


「おう。……じゃあな。」


男はそう言うと馬車で今まで走って来た道を帰っていった。

たぶん、あの人は分かっているのだろう、私が帰ることがないことを。

道すがら軍とはすれ違うことはなかった。私達は、王都からの最短の道を走って来た。なのに、軍とすれ違わなかったと言うことは、まだ戦争が続いているということだ。私は、そこにいこうとしている。死ににいくようなものだ。

時間はもう、だいぶん経っている。誰ももう村にはいないかもしれない。

でも、私は確かめないといけない。胸騒ぎがするのだ。

私は走った。足は重い気がしたが、走る速度はむしろ早かった。荷物も重い気がしたが、軽々と持つことができた。

私は、見たくないと思う気持ちを払いのけながら村へ走った。


村に着いたと思う。

私の目の前には、焼け爛れた教会が写っていた。私は、足を小鹿のように震わせながら教会へ入った。中もひどい状態だった。屋根は一部が崩れ長椅子の上に落ち、ステンドグラスは熔けたように爛れている。そして、中央の講壇の前には、シスター服を着た誰かが倒れていた。私は、違ってあってくれと思いながら近づいたが、現実はそうはいかなかった。近づき顔を見ると、少し顔が爛れているがそれは、シスターマリだった。私はシスターマリを抱き上げ泣いた。そして、後悔した。私が王都に行ったことを、お金を貯めていなかったことを、誰も救えなかったことを。私はひとしきり泣くと、シスターマリを床に置いて、村へ向かった。


村の家は殆ど壊れていて、原形を留めていなかった。私が建て直した建物も、遊具も同様に。村には多くの死体があった鎧を着た者もいるので、兵士だと思った。村人の多くは剣で刺されて一ヵ所に纏められていた。私は生き残りがいないか一件一件家を探した。……本当はそんなことをしなくても『動物会話』で分かっていた。なんの音も聞こえないことを。しかし、認めたくなくて、スキルを疑って、自分を騙して探し続けた。


辺りが暗くなったので、私は自分の家に行ってみることにした。

家に着くと、家は半分倒壊していた。私は玄関が潰れていたので裏口から家に入った。台所にいくと母が弟を庇ったまま、剣で貫かれていた。その剣は、弟にも届いていて、弟も死んでいた。家を散策したが、父は見つからなかった。私の部屋は多少無事だったのでそこで眠りに着いた。


夢でシスターマリや家族、村の皆が殺される夢を見た。私の声は、届かずなにもすることができず、皆が殺されるのを永遠と見せられた。私がそれを見て嘆いていると、私の肩にてが置かれた。誰の手かと手の主を見るとシスターマリが私を見ていた。私は恨み言を覚悟していると、シスターマリは口を開いた。


『ユエレは頑張ったよ。苦しまなくてもいいんだよ。ユエレのせいでこうなったんじゃないんだから。』


そう言い私から離れていった。私が否定しようとすると、シスターマリが向かった先には、私の家族や村の皆がいた。

私は近づこうとしたが、足が思うように動かなかった。皆に手を伸ばし叫ぼうとしたところで、夢から覚めた。私はしばらくそのまま泣いた。泣きつかれて、荷物からエヒラから貰っていたパンを取り出して、遅い朝食をとり森へ向かった。

森も焼けていて、原形を保っていなかったが、どうにか動物達とお茶会をしていたところに着いた。だが、やはり誰もいなかった。死体はそこらじゅうにあったが、生きてるものは誰もいなかった。私が諦めて村へ戻ろうとすると、微かな音が聞こえた。私は急ぎ、音がした方に向かうと、そこには私のバスケットがあった。私がバスケットを開けると、そこには衰弱した鼠のような生き物が一匹入っていた。私は呼び掛けた。


「大丈夫!ねえ、返事をして、お願い。」


私が手に乗せて鼠に話しかけていると、鼠の目が少し開き喋りだした。


『う、うぅ。ユェ、レ?『施しの聖女』さま?』


「どっちでもいいわ、意識をしっかり!」


私は、鼠に『治癒』を使った。しかし、鼠の様子は良くならなかった。


「なんで、なんで直らないの。」


『無理だ、よ。知って、でしょ。じゅうぶ、んに食べてないと、それはき、ないって。僕、なにも食べてないか、無理だよ。』


私は急いで、鞄の中を探した。しかしなにもなかった。

なので、


「ねえ、わ、私の手を食べて、私はしっかり食べていたから、すぐ治療できるから。お願い。」


『そんな、できないょ。』


「いいから食べなさい。」


私が叫びながら左手を鼠の口許に当てると、嫌がっていた鼠が目を見開き、私の手をかじり始めた。私は痛みを我慢しながら、空いている右手で、鼠に『治癒』を使った。すると、鼠は回復し怪我等が治っていった。その間も鼠は、私の手を齧っており私は話しかけた。


「もういいよ。ごめんね。辛いことをさせて。よく頑張ったね。」


そう言うと鼠は、私の手を齧るのをやめた。そして、申し訳なさそうに話しかけてきた。


『ご、ごめんなさい。急に体がいうことを聞かなくなって、『施しの聖女』様の手を食べ始めて、止めることができなかったんだ。』


鼠がそう言い泣き出してしまった。私はそれを聞き、手首から先が無くなった左手に『治癒』を使いながら、ステータスを開いた。そこには、『資格スキル:信仰(小)』があった。


その後、バスケットに鼠を入れ村に帰った。鼠は最初バスケットに入ることを拒否していたが、満腹感や安心感、それに泣きつかれたこともあり話してる途中で眠ってしまった。

私は鼠にも『鑑定』を使ってみた。すると、鼠の種族は、『火炎鼠』に変わっていた。たぶん、今のこの森の濃い魔力を浴びてしまったせいで、魔物になってしまったんだと思った。私には、魔力による影響はなかった。村にいた頃の私だったら、耐えられないと思うので、この資格スキルのお陰で影響がないと思う他なかった。あの教皇も特別なスキルだと言っていたし、きっと何かあるのだろう。

そう考えていると村に着いた。最初に村の人を祈りを捧げて一人一人埋葬した。村も魔力が多く漂っていたので、早くしないとアンデットになると思ったからだ。村の皆は埋葬したが、流石に兵士を全て埋葬するのはきつかった。なので、起きてきた火炎鼠に協力してもらい、火葬して骨だけにして纏めていた埋めた。


それから私は火炎鼠と教会で暮らした。魔物をつれて村や町にはいけないし、何より私はこの村から離れたくなかった。食事は、探すのが大変だったが、エヒラがこっそり荷物に入れていた種を育でて食べ、飢えをしのいだ。火炎鼠は魔物になったことで寿命が延びていて、私と一緒に暮らしてくれた。時折、兵士等が来たが私は教皇を殺した身なので、『隠者のローブ』を使い、身を隠した。そして、私は毎日殆どの時間を使い、祈りを捧げた。森の『守り神』様に、動物達の死後の安らぎを、『ニリア神』様に村の皆の死後の安らぎを祈り続けた。




村に帰って来て、数十年が過ぎた。もう、自分で歩き回る体力もない。今では、火炎鼠が全ての家事や畑仕事をやっている。私は講壇の前でずっと祈りを捧げていた。火炎鼠が頑張っているが、寿命はどうにもならないだろう。火炎鼠を残していくのは辛いが仕方ない。私は、そう考えながらその日も祈りを捧げていた。

このまま死ぬのだろうと。

しかし、私はこのまま死ななかった。


ドーーン。ドーーン。村の方から大きな音が聞こえた。私は『動物会話』でその正体を探った。

村に現れたのは、家よりも大きく重く、一対の大きな羽と尻尾を持つ生物だった。私が知っている中で、そんな生物は一種類しかいない。それは、ドラゴン。

体は固い鱗で覆われており、遥か高みからブレスや魔法を使用してくる。どんな環境にも適応する可能性がある最強種族。

人間も魔族手が出せない、この世の天災の一つ。

それが村に現れた。それも五頭も。

私は『隠者のローブ』フードを被り、様子を探った。

ドラゴン達は、壊れた家をあさってなにかを探しているようだった。私から見れば、壊れかけの家を崩壊させているようにしか見えないが。

ドラゴン達は、どんどん家を壊していき、この教会にも近づいて来た。私は自分の人生を諦めたが、教会を壊そうとしていたドラゴンの動きが急に止まった。

その原因はすぐに分かった。火炎鼠が、教会の前でドラゴンを威嚇したからだ。火炎鼠は、ドラゴンに『火炎操作』で口から出した火を浴びせて、先制攻撃をしたがドラゴンには全く効かなかった。ドラゴンは、火炎鼠を爪を振り回しながら追いかけ始めた。火炎鼠は、ドラゴンの攻撃を、体の小ささを利用して避けながら、教会から離れていった。私のことを思って、囮をしたのだろう、私は火炎鼠をどうにか逃がすために。教会の床をはって扉の方に向かった。私が扉までたどり着く頃には、火炎鼠は四頭の赤いドラゴンに追い詰められていた。私が声をあげて注意を引こうとすると、教会の上から声が聞こえた。


『おい、何時まで鼠と遊んでいる。そいつは囮だろう。

こっちにも一匹猿がいるぞ。』


声のした方を振り向くと、そこには黒いドラゴンがいた。その黒いドラゴンは、赤い眼差しでこちらをにらんでいた。私は驚いた、五頭いるのは分かっていたが、目の前のドラゴンが何時からそこにいたか分からなかったからだ。それに、私は今『隠者のローブ』を被っている、ドラゴンがいる位置からは顔は見えてないはずなのに、私を認識できるということは、このローブが通用しないということだからだ。私は冷や汗を流しながら、火炎鼠を助ける策を考えた。

赤いドラゴン達は、火炎鼠を逃がさないよう囲みながら黒いドラゴンに返事をした。


『兄貴そんなこと言わないでください、この鼠を捕まえて妹にお土産として渡したいんですよ。このくらいの火花だったら、怪我もしないし、いいペットになると思うんですよ。』

『そうそう、そんなことも分からないから、兄貴モテないんですよ。せっかく、漆黒竜になったのに。』

『あ、こら。ちょこまかと。こっちが殺す気がないからって、調子にのりやかって。』

『兄貴なんですか、猿って。そんなのどこにもいませんよ。暇だったら手伝ってくださいよ。』


どうやら、火炎鼠を殺す気は無いようだった。私が安心すると黒いドラゴン、漆黒竜が問題発言をした。


『お前の妹、こないだもペットを細切れにして、断末魔を聞きながら食べてただろ。だったら、どんな動物でも一緒だろ。それに、』


漆黒竜が私を再び睨み付けて言った。


『この猿の方が面白い。お前らに見えないってことは、俺と同系統のスキル持ちか?珍しいし持ち帰ってから喰うか。』


漆黒竜は、舌で口の回りを舐めながら私に手を伸ばしてきた。私は、老いていないときでもドラゴンから逃げれると思わなかったので目を閉じた。何かが私に向かって来る音が聞こえた。

私は嫌な予感がして、目を開き飛来物の方を向いた。飛来物は、やはり火炎鼠だった。私は叫んだ。


「来ちゃだめ、これは罠よ!」


しかし、遅かった。漆黒竜は、口角をつり上げると爪で火炎鼠を弾き飛ばした。弾き飛ばされた火炎鼠は、壁に激突しピクピクと痙攣して倒れた。漆黒竜はそれを見て高笑いした。


『はっはー。鼠を捕まえるときはこうするんだよ。鼠は下等だから、餌に迷わず突っ込んでくるんだ。さあ、そいつも持ってこい一緒に運んでやるから。』


そう言うと、漆黒竜から黒いモヤが出てきて、一ヶ所でまとまり小さな家が一軒入りそうな、四角くて黒い物ができた。

赤いドラゴン達は、『やり過ぎ』『傷物になった』とか言いながら、火炎鼠を拾ってきた。私は漆黒竜に叫んだ。


「火炎鼠だけは放して、私だけを連れて行って。そうしないと私、自爆するから。」


私は、自分の命を盾に漆黒竜を脅した。『治癒』を限界値を超えて使うと、細胞が異常活性化して、肉体がそのエネルギーに耐えきれず、肉体の爆発を起こす。

それを踏まえて、漆黒竜を睨むと漆黒竜は笑いだした。


「我らの言葉すら理解するか。面白いぞ猿、いや人間。ますますお前を食いたくなった。だが、お前の指図は受けん。」


そう言うと漆黒竜からまたモヤが出てきて、私が何かするより先に私に巻き付いてきた。モヤが放れると、私の体は自由が聞かなくなった。漆黒竜は、私と火炎鼠を掴み黒いモヤの中の入れた。


『今は殺さんよ。しばらくその『黒霧結界(ブラックボックス)』の中でおとなしくしてるがいい。』


漆黒竜がそう言うとなにも見えず、なにも聞こえなくなった。

何もなく、何も聞こえない中、私は考えた。

これが私へのバツなら、甘んじて受けよう。だけど、この火炎鼠だけは、どうやっても逃がして見せると。少し離れたところにいる火炎鼠に、通常より多い魔力を使いながら『治癒』をかけそう誓った。

大変遅くなり申し訳ありません。


次話は11/8に投稿になります。


これからもよろしくお願いします。

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