ー4話逃避行
ー第4話逃避行
頭をよぎったのは、米軍の推進派が最高の殺人マシンを送り込んできた………だった。
普通の部隊ですら、逃れられないかもしれない。
桑畑の道を全力で走った。カメラは捨てられない。画像がなければ凍結停止派の要請に応えられない。そして、二度とここには来られないだろう。そして生きて帰らなければならない。
渡辺のコンビニに、許せる?と聞く為に。
桑畑の道は、天神川に突き当たる所でアスファルトの道に出る。堤防に斜めの上がり口が有り駈け登る。
前方に熊野橋が見える。僕と渡辺が居た。渡った所に熊野天神が有る。
そこに赤いセリカが走って来て、ブレーキを軋ませた。
セリカダブルエックス リフトバック。リアが斜めに降りている。
年代が合わない気もするが、時代と違和感はない。
バラバラと軍靴の音を響かせて、背広の男達が降りてきた。男達は僕を見つけているらしく、渡辺達には見向きもしない。
しかし、男達の背後で二人はセリカに乗り込んだ。
「何を?」
セリカは急発進した。親父のカローラを内緒で走らせた記憶が甦った。
バックしてこちらに向きを変える。男達が慌てて堤防下に跳ぶ。
セリカはこっちに走って来た。
「ムチャすんな!」
運転席のクソガキは笑っている。
「足届いてんのか?」
運転席を覗き込むと、ペダルは渡辺が担当していた。
「降りろ!無免許運転だ!あ~っ俺が運転する!」
ペーパードライバーだが、中学生のカップルが二人羽織で運転するセリカには乗ってられない。
「よしっ。右足の親指の先にセンターラインが来るようにと…」
「ホントに免許有るの?」
ギアを入れて、クラッチ合わせしながらアクセルを踏む……が唸るだけで動かない。
そこで渡辺がサイドブレーキを戻した。カタパルトの戦闘機のようにセリカは跳びだした。バックミラーに取り付いていた男が振り落とされるのが映った。