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下ノ下[最終話]

「よし、到着っと!」


酒見さんと俺は数分間闇の中を進んだのち、国の外れにある祭具殿の祭壇に到着した。

もちろん、日本に帰る為に。


ちなみにその間で俺がこの異世界で体験した事を一通り話した。

酒見さんは、

すごいね!

とか、

カッコいい!

とか、

可愛い反応をたくさん見せてくれた。


おっと、振り返っていては時間がなくなる。

今頃王城はひどい騒ぎになっているだろうしな……。


では、話を戻そうか。

ここは祭具殿といっても、円形のステージとそこに石碑があるだけで建物は無い。


しかし、とてつもなく幻想的な空間だ。


不思議な色を放つ祭壇に、桜の様な花が咲き乱れている。


それに空には吸い込まれそうな漆黒に色とりどりの惑星が間近に浮いている。


そんな現実離れしたこの空間。


「じゃあ時間もないし、日本に戻ろっか!」

「うん!ありがと!」


アイテムボックスから魔王の黑核(こっかく)を取り出す。


そして二人で祭壇へ。


ステージに上がると祭壇の石碑に丸いくぼみがあるのが分かった。

どうやらここに黑核をはめ込めば良いらしい。


「じゃ、じゃあ行くか……」

「うん……」


カポッ……


軽い音と共にピッタリ挟まった。


「な、何も起こらない……のか?」

「え……うそ!」


数秒間の沈黙、しかしその時は唐突にやってきた。


ゴゴゴゴッ!!!


突如光を発して形を変えて行く祭壇。

現れたのは……


「すげぇ……」

「ほんと……綺麗!」


不思議な煙が渦巻くゲートだった。


そこへ、声が響く。


『よくぞたどり着いた、勇者よ。元の世界への扉は開かれた』


あまりの衝撃に言葉も出ないまま、次の言葉が続く。


『さあ、今こそ元の世界に戻れる()()を決めるのだ』


「一人……だと……!?」

「……」


一人ってどう言う事なんだ?

俺と酒見さんのどっちかしか帰れないって事なのか……?


「そんなの嘘……だろ……」


思わず声に出る悲しみ。


とりあえず今は!


「酒見さん、こ、これは何かおかしくなったんだよ!ぜ、絶対二人とも帰れる方法があるって!酒見……さん……?」


あれ……振り返っても……誰もいない?

なぜ……?


ドカッッッ!!!


突如、俺の体が痛みに襲われる。

思わず、うつ伏せに倒れ伏してしまった。


「な……なんだッ!」

「チッ……一発で死ねよ!クソが!!」

「酒見……さん!?」

「あぁ?気安く呼んでんじゃねーよ」


朦朧(もうろう)とする中でそれを見た。


目つきと態度が180度変わった、()()()()()を持った酒見さんを。


「たっく、一人なら最初からそう言えよ!私が折角こんなクズ男に媚び売ってやったのに、無駄になったじゃねーかよ」

「どう…して…」

「あぁ?まだ意識あんのかよ。生身の人間にしたはずなのに」


生身の人間?

それに何で俺が奪った勇者の能力である聖剣を何で酒見さんが使えるんだ?


「不思議そうな顔だな……まじウケるw。いいよ、冥土のみあげに聞かせてあげんよ」


そういうと、本心を露わにした酒見さんが言った。


「これは私の固有スキル愛の略奪者(ラブスティーラー)、発動条件は相手の能略を私が生で見ること、それと相手を惚れさせる事」

「それで……俺から……スキルを?」

「ンフフーン、あ・た・り!」


そうおどけながら、魔王の能力を発動させる酒見さん。

魔王の能略まで、取られていたのか。


「でも、アンタチョロすぎww、まさか私に惚れてたなんて」


魔王の能略で、漆黒の槍を作りながら酒見さんは続ける。


「あともう一つ教えてやるよ。ちょっと前の告白、あれ()()()だから」

「えッ……?」


嘘だ……


「あん時アンタが言った事、全部正解!流石の私もビビっちゃったな〜。その場は涙の演技でなんとか切り抜けたけど、ムカついたからアンタいじめてやったんだよ!あのいじめの中心は私!!全部アンタのウゼェ態度が悪りぃんだよ!!」


嘘だ嘘だ嘘だ!!!





……。





いや……本当なのか……。


確かに、本物の告白だと勘違いしたのは俺だ。

それにあの時あの場には俺と酒見さんしかいなかった。

つまり酷いやり方で振ったと言うのは紛れもなく酒見さんが流した噂だったんだ。


「そう言う訳だから……」


漆黒に染まる槍が俺の方へ向く。


「死んでッ!!」







ッ……。








こうするしか無いのか……。

●スキル:輪廻転生(オーバータイム)を使用しました






俺が唯一酒見さんの前で使わなかった神龍のスキル。

これが最後の賭けだった。


「な、なに!?まだスキルを持っていたのか!?」

「ごめん、酒見さん。そして、さよなら……」

「……ッ!!!」


俺の体があの日見た神龍の如く真っ白に染まる。

ふわりと浮き上がる体、そして……


●魔法:神竜の咆哮(ブレスオブレクイエム)を使用しました。


ガガガガァァァァッ!!!!!


「え?嘘!何で私の魔法が効いてないのよ!!嫌だ!!私はまだっ!!!死にたくな……」


俺の使用した魔法は神龍のみに使う事を許されたまさに最強の一撃。

その光は全ての時を奪う。


死の略奪者(デススティーラー)の発動により、すべての能力を引き継ぎました

●死の略奪者の発動により、すべてのアイテムを引き継ぎました





●酒見月夜を殺害しました






『どうやら決まった様だな。勇敢なる真の勇者ケンジよ!!よくやった!!またどこかで会おう!!!』


全身が光に包まれる。

心地の良い脱力感と薄れゆく意識。


そして大きな後悔、それを抱きながら俺の意識は完全に途切れるのだった。







目がさめるとそこは真っ暗だった。


周りからはすすり泣きの声が聞こえる。

それに……お経!?


とりあえず体を起こして……


バキィ!!


「「「「………………」」」」

「え???」


俺はどうやら棺の中にいたらしい。


なぜだッ!!


まだ思考がまとまらない中、見慣れた黒スーツの母親と父親が詰め寄って抱きついてくる。


あたりが非常に騒がしい。


何があったんだろう?

何も覚えていない。


しかし、何故だろう。



今ならすごい力が使えそうな気がする。

それにとても清々しい気分だ。







そこからの俺は一躍有名人になった。


どうやら俺は記憶は無いが元通っていた学校の爆弾騒動に巻き込まれてしまったらしい。


そして死んだはずの俺が奇跡の生還を果たしたのだ。


なんかそらもうVIP待遇。


欲しいものは何でも手に入るし、国からは人間国宝?の候補になったとか言われたし。



でも、それだけじゃなんか物足りないんだよなぁ。


「あ、爆弾魔発見!」


これも一つの不思議な事なのだが、変な力が使えるのだ。


今はそれを使って俺を一度殺してくれた爆弾魔に復讐しに来ている。


●スキル:死の略奪者を使用しました

●爆弾魔を殺害しました


あぁ、これだ。


満たされる感じ。





と言うわけで、完結しました!


書きたかったものが書けて大満足です!


一応、ハッピーエンドも考えていたのですが、こっちの方が個人的に好きだったのでやらせて頂きました!


そして、ここまで付き合ってくださった皆さんありがとうございました!


心より感謝を!


意見、感想お待ちしています!

また次の作品で、お会いしましょう。


本当にありがとうございました!!!

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