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下ノ中

●スキル:闇の帝王(ダークエンペラー)を使用しました


まず俺が今回の酒見さん助けよう作戦で、夜に行動するのを選んだ理由を簡単に説明させてもらおう。


まず一つ目だが、王城の警備が弱まるらしいからだ。

酒見さんを含めたクラスメイトの奴らは今、王城の地下牢で仲良く過ごしているらしい。

その王城なのだが、一部の貴族と王家の人間しか立ち入れない。

もちろん俺もだ。


そこで、二つ目の理由。

魔王から奪った『闇の帝王』が非常に便利になってくる。

このスキルはありとあらゆる闇を自由に操れる。

もちろん、影の中に忍び込んで普通の人が入れないようなところにも侵入できる。

その発動条件である闇が一番多いのが夜だからだ。


つまり魔王の力が最大限に発揮できる夜のうちに、警備が手薄になった隙をついて酒見さんを助ける。

もっと言えば魔王を倒した時に手に入れた魔王の黑核を、使って一緒に日本へ帰ろうと言う作戦だ。


というわけで、いっちょやりますか!





よしよし、良い感じだ。


闇の帝王はかなり使い勝手がいい。

イメージでいうと闇の中を音もなく泳げる感じ。


よって、ここまでだいぶ余裕を持って来れた。

それに、[マップ]の今まで知らなかった能力に『三次元化』と言うのがあり、今まで平面しかわからなかったがそれによって地下牢まで迷わず進めている。


ん?どこからか声が聞こえるな……。

こっちの方か?


こんな夜遅くに話し声がするのはおかしいと思い声のする方へ潜っていく。


すると、かなり開けた空間の中で地面から数段上がった所に王の玉座と、それに威厳深く腰掛ける王っぽい爺さん。

その下で酒見さんほどではないが可愛らしい女騎士が、立っていた。


その顔を見るとどうやら泣いている様だ。


「お父さん……勇者様は帰って来られるのですよね!」

「案ずるでない、心配なのは私とて同じだ」


家族なのか。

という事はあの爺さんが王ならあの女騎士は姫さんって事か。


ってか勇者だって……?


「ですが!あの者たちがやったに違いありません!!」

「あの者たち?」

「ええ。いきなり王城に現れたあの者たちです!あの者たちが勇者様を!そうでも無ければあのお強い勇者様が負けるはず!!いえ、勇者様は勝っておられますよね……」


……なんか、俺のクラスメイトが迷惑してるみたいだ。


「確かに、彼奴らは怪しい。しかし我が娘よ、お前は冷静では無いのだ。彼奴らと勇者殿が帰って来ない理由に因果関係があるとは、到底思えん」

「しかし!……で、ではなぜ……勇者様はお戻りになられないのですか……」


いよいよ本気で泣き出してしまった。


貴方の好意を寄せる勇者様は魔王に返り討ちにあって死んでしまいましたなんて、口が裂けても言えない。


「う……うーむ……」

「勇者様はおっしゃったのです!帰ったら結婚しようと!!!」

「わかっておる、お前の悲しみも……。」


それ、フラグですよ。お姫様。


おっと、口から出そうになった。


しかしどう考えても可哀想だ。

可愛い女の子が泣いているところは見たくない。


っと、そうだ。


確か勇者の持ち物に、明らかに女物の指輪があったっけか。

もしかしたら婚約指輪だったのかも……。


俺が持ってても仕方がないか。


そう考え、[アイテムボックス]から指輪を取り出す。


そーれッ!!


カランカラン……。


軽い金属音とともに、今尚泣き止もうとしない姫様の足元に、指輪が転がる。


「……ッ!?こ、これは勇者様のマナ!!という事は、この指輪は……」

「し、信じられんッ!あの奴はわしの呪いで……いや、何でもない…………」


小さな指輪を抱くように抱える姫様。

王のクソジジイが何か言ってた気がするが、とりま一件落着。


そろそろ俺も、酒見さんのところへ行かなくちゃな。





ここか。


案外簡単に着いたそこは、いかにも地下牢っぽい金属質の扉と、固そうな南京錠がお出迎えしてくれる。


そう、この先に忌々しいクラスメイトの奴らと酒見さんがいるのだ。


んーーーどうやって入ろうかな?


パターンその1


扉を砕いて


「助けに来たよ、酒見さん!(イケヴォ)」


いや、違うな。


パターンその2


こっそり闇の中から近づいて


「私は名もなき闇の支配者、ケンジだ!酒見さんを助けにきた!」


いや、これではキャラ崩壊もいいとこだ。

それに魔王と被る。


それから俺は、ああでもない、こうでもないと数分間考えた末、普通に入って酒見さんをたすけ、それとなく退出する事にした。


じゃ、開けるか。


こころの準備はいいな、俺!


バキンッ!


その音と共に南京錠が破壊され、


ギギギ……


ゆっくり開かれる扉。


久しぶりのクラスメイトとの対面だ。




中に入ると、かなり薄暗くしかしそれでも分かった。


あいつらだ。

俺を散々痛めつけてきたクラスメイトがいまは見るも無残な様子で右手首を拘束されて、檻の中で項垂れている。


着ている服もみすぼらしいとかそんなんじゃなく、女子は見えてはいけない所まで見えてしまっている状態だ。


そんな中、俺が立てた物音で、皆こちらの方を向く。


なんだ、こいつら空腹で寝れもしなかったのか。


「お前……クソ健二か?テメェ!俺らを放り出して逃げやがったな!」


あぁ、懐かしき友の声。


ではなく、進のうるさい声が俺を迎えてくれた。

あんな姿になってよくもまだピンピンしてられんな。


「テメェ!!ぶっ飛ばしてやる!!殺す!だから今はさっさと助けろ!!ぶっ飛ばすぞ!」


周りの奴らは静かに俺と進のやり取りを見ている。


「進君、ぶっ飛ばされるって分かってて誰が助けると思う?」


思った事をそのまま言ってやった。

そして祝、俺人生初のいじめっ子への仕返し。


「はぁ?調子乗ってんじゃねぇ!」


やっぱり口だけじゃ何言っても無駄か。


それに返された言葉、聞きました?


あーあ、前言撤回だ。


流石の俺もムカついた。


今までの恨み全部ぶつけて、


復讐してやる。


「あーあ。 クソウザかったけど皆んなには手を出さないでいようと思ったのに……」

「は、はぁ?」


俺の言葉は止まらない。


「だから、せっかく助けてやろうとしたのにって言ったんだよ」

「は?グズで弱いお前が?だれがお前の助けなんかになるか!!」


さっき助けろって言ってたのに。


全く、惨めな奴らだな。

いっちょ驚かせてやりますか。


「進君、これを見てもまだそんな事言える?」


●スキル:勇者を発動しました

●聖剣を召喚します


おれは魔王を(ほふ)った聖剣をぐいっと前に出す。


「俺は、お前らとは違う!勇者としてこの世界に呼び出された!」


うそだけど。


「この剣で魔王も殺してきた!」

「で、デタラメだろ!」


まだ言い張るのか……。

ここまで来るともはやすごいと感心してしまうな。


しかし、他のクラスメイトからは驚きや感嘆がうかがえる。


よし。

ここは最終兵器を出そう。


「これが証拠だ!」


そう言って俺は最終兵器、魔王の黑核を取り出した。


禍々しいオーラを放つ黑核を手に掲げつつ続ける。


「これは魔王の黑核、言わば心臓だ。そして何とこのアイテムを使えば……」

「な、なんだってんだよ……」

「元の世界に帰ることが出来ます!」


クラスメイトの顔色が変わった。


だいぶ食らいついている様だな。


「まぁ、ここまで見ても信じないって言うならそれでも良いけど……藁にもすがりたいいまの君たちならなにをしなければいけないのか、わかるよね?」


完全に決まった。


そして、クラスメイトと一緒に来ていた先生が、立ち上がって先陣を切った。


「健二くん、さっきはスマホ取ったりしてすまんな、あれはすぐに返す、単位も好きなだけやろう、点も与える、だから、だからどうか、先生をたすけてくれ!!」


あー、良い眺めだ。

大の大人が土下座だよ。


すると、先生を見習い周りの生徒も一緒に土下座。

こいつらにはプライドがないのかよ。


ちなみに土下座ではなく、全裸になって俺を誘惑してくる女や、一生肉奴隷になりますと言っているビッチまでいる。

まぁ、俺を虐めていた彩花(さいか)来夢(らいむ)なんだけど、彼氏持ちなのに良い度胸だ。

ちなみにその彼氏達であり俺をいじめていたグループの残りの男子ふたりは、さっきから金金うるさい。

まだ、肉奴隷のほうがマシだろう。


でもまぁ、ひとりまだプライドを捨ててないやつがいるな。


それはいじめグループの中心、俺の最高の恨み。

進だ。


しかし、彼の心も次の俺の発言で折れた。


「いやぁー、みんな悪いんだけどね、俺と一緒に戻れるのは一人だけなんだ。あ、あと俺かなり強いけど、だいぶ魔王を倒すのに時間がかけちゃったなー。ま、かりに俺くらい強くなったとしても次魔王が現れる保証はないし、これが最後のチャンスかも……」


え、ちょっと嘘が入ってるって?

一人な訳無いだろって?

気にしない、気にしない。


っと、面白いものがみれそうだ。


ゆっくりゆっくり膝をつき、頭を土に擦らせ土下座する進だ。


「いままで、本当にすみませんでした。どうか私めをお助けください!健二様!!」


なんて爽快感だろう。


追い詰められると人はここまで弱いのか。

頭をこれでもかと下げて懇願するいじめっ子。

今や立場逆転も甚だしいといったところか。



ん?言い争いし始めてるな。

中には暴力沙汰になっているところもある。


内容?

聞かなくてもわかるだろう。


誰が俺と一緒に帰れる一人になるかの争いだ。


よし、復讐のメインディッシュといこうか。


「あーゴホン!その俺と一緒に帰れる一人なんだけど……」


ピンッ!

と指を弾き、こいつらを拘束していた腕輪を破壊してやる。


そして、トドメの一撃だ。


「いまからお前らで殺しあって、最後に残ったやつにする。あと、制限時間は3分な、それ以上経っても決まらなかったら一人で帰るから」

「…………」

「何ぼさっとしてんだよ、もう始まってんぞ」


瞬時、この空間は悲鳴と叫び声と血に染まった。


先生は手頃な女子から嬲り殺しに、男子は全力の殴り合い、女子は奇声をあげて、仲の良かった友達を自分が助かる為に殺し回っている。


また一つ、また一つ。

屍が増えて行く。


あー気持ちがいい!!!!


え?サイコパスだって?

いや、当然の報いと言う奴だろう。


それに……


見つけた。

酒見さんだ。


俺はもとより酒見さん以外助ける気は無かった。

よし、これでやっと助けられる。


おっと、いけない。

酒見さんが女子に襲われている。


「月夜ちゃん、私たち、友達だよね?」

「凛ちゃん?どうしたの?変だよ!」

「私のために……死んで」


凛とか言うやつが、手に持った手錠の残骸で、酒見さんに殴りかかろうとしたその時。


酒見さんの体を闇が覆う。


そしてそのまま引き摺り込む。


俺の闇の中へ。








危なかった。

しかし助けられたのだ。


腕の中で、怯えている酒見さんをそっと抱き寄せ、俺は闇の中を祭壇へ向かう。


その異変に酒見さんが気づき、俺の顔を驚いた様に見ている。


「え、えぇ?健二くん?ってここどこ!」

「助けに来たよ、酒見さん」

「え、わ、私を?」

「前は悪いことしてごめんね、これで許されるとは思っていないけど……」


次の言葉を発しようとした時だった。


力強く抱きつかれた。


「え?ちょ、酒見さん!?」


しかし返事はない。


それに、服のせいで色々当たる感覚げ限りなく生でする……。


い、いや考えるな、俺。


なんとか平然を保ち俺は言った。


「じゃあ、帰ろっか酒見さん!」


その返事はもっと強く抱きつかれる事で、返された。










かなり長くなってしまいました……。

それでも読んでくださった皆さん、ありがとうございました!

そして、今作のブクマ10人突破と、1000pv突破誠に感謝です!

そして、次回はいよいよ最終回です!

お楽しみに!

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