下ノ上
俺は今西の帝国の外壁、その数百メートル離れた所に着地した。
[マップ]で確認したところ、この国の王城らしき所に酒見さんがいるらしい。
あの忌々しいクラスメイト供もセットで。
まず、この国に進入する前にこの西の帝国がどんなところか、ざっくり説明しよう。
高ささ30メートル程の外壁に包まれたこの国は、中心にある王城から栄える豊かな国だ。
どうやら、日本で言ううなぎの様なものが名産品らしい。
そして、よく『勇者召喚』と言うのが行われるらしいのだ。
これは、ここに来る途中で見つけた商売屋みたいな男に聞いた事だ。
俺は最初これを聞いて、もしかしたら俺たちはこの『勇者召喚』に当たるのではないかと考えた。
しかし今回はどう考えても召喚ではなく、クラスみんなで仲良く死んでからの、転生だ。
その点も踏まえて俺は早く酒見さんを助けに行かなくてはと、少し焦っていた。
まずは帝国入口の入場門にたどり着いた。
そこで、
「すみません!誰かいらっしゃいますか?」
と言うのと、
「旅の方ですかい?」
と、入場門の隣にある小屋の中から兵士っぽい中年の男が顔を出した。
「はい、この国に入国したいのですが」
俺がそう返すと、兵士は活力のないそぶりで手招きし、
「では、中にお入りください」
そう言って来た。
ちなみにさっき侵入すると言ったが、あくまで正規方で入国するつもりだ。
なぜかと言うと、一つはリスクを最大限に減らしたいこと。
そしてもう一つは情報を引き出したいからだ。
俺は小屋に入り、勧められるまま椅子に腰掛けると、何語かよく分からない文字が書かれた紙と羽ペンが机の上に置かれた。
「では入国審査書を書いてください。それと入国料で銀貨3枚もお出しください」
兵士はそうだけ言って、自分の作業に戻ってしまった。
俺はここで賭けに出る。
アレを使う時が来たのだ。
「あの、私実は立場上こう言ったものが書けなくて……」
(字が読めないからなんですけど)
「それは困りすよ」
俺の発言虚しく、こちらを見向きもせず兵士がそう返してきた。
やっぱりアレを使うしかないか。
「それなんですがコレで手をつけてはくれませんか?」
軽くこちらを振り向く兵士、しかし俺の手の上にある物を見たらいきなり興味を持ち始める。
「ほ、本気……何ですかい?」
やっぱり食らいついたか。
そう、俺が用意したのは金だ。
元々は勇者が持っていたものだが、今は俺の何だから自由に使っていいだろう。
手にのったざっと20枚の金貨をみて兵士は興奮気味だ。
俺はすでに勝ちを確信しつつ言う。
「全て差し上げますよ、しかし入国審査書の免除と少しの情報は必要になりますが」
「こ、この額なら安いもんでっせ!」
完全に落ちたな。
こうして俺は情報も手に入れつつ安全に入国する事に成功したのだ。
◆
今俺は、この国の名産品であるうなぎのかばやきっぽいのを食べつつ、今後の予定を練っていた。
ちなみにあの兵士からはかなり有力な情報をいくつも手に入れることが出来た。
まず、この国には3日前程に予期せぬ『勇者召喚』が起こったという事だ。
これは、俺のクラスメイトの事だろう。
といっても何故予期せぬ勇者召喚なのかと言うと、普段この国で『勇者召喚』をする時には多くの魔導師を使って、数日ががりでやるらしい。
しかし今回はいきなり俺のクラスメイトが現れたのだ。
これは俺の憶測に過ぎないが、あの高校での爆弾騒動で死んでしまった俺らは、偶然にもこの世界に転生を果たしたのではないだろうか。
まぁ、いきなり王城ないに知らない人達が30人くらい一気に現れたんだから、それは騒ぎにもなりあいつらは捕らえてしまったらしい。
今は地下牢にいるんだとか。
とにかく生きているっぽいので一安心だ。
これはわりかしどうでも良いが、あの兵士は召喚されてから3日だと言っていた。
俺は一瞬にかじてしまったが、どうやらこの世界に来てもう3日も経つらしい。
そうと聞いても頷けるだけの事はあったのだが……。
話が逸れてしまったが次の情報だ。
これはわりかし重要なのだが、王城には限られた貴族と、王家の人間しか入れないらしい。
酒見さんを含めてあいつらが召喚されたのは王城のなかなので少し面倒になりそうだ。
あとの情報は、この国で最低限常識のあるやつと思われるものだったのでひとまず省く。
とりあえず、今後の方針は決まったな。
そう心の中で言いつつ、食べ終わったかばやきの串を、近くにあったゴミ袋に捨てる。
そして決意した。
今夜助けに行くよ。
酒見さん!
こうしてこの世界での最後の一夜が始まろうとしていた。
次回はいよいよあの忌々しいクラスメイトとの再会です!
お楽しみに!
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