中ノ中
ブクマありがとうございます!
短編連載はこれが初めてですが、頑張っていきたいです!
迷っていても仕方がない。
俺は死にかけの(今はもう死んでしまっただろうが)勇者とドラゴンが奈落に落ちていくのをただ呆然と見送ってから、やっと気持ちの整理が出来たところでそう考えるのであった。
俺は自慢じゃ無いが生前はなかなかのオタクだった。
よってこの手のゲームをプレイした事は数回では無い。
ずっと要らないと思っていたオタク知識がまさかこんなところで役に立つとは……。
やはり人生はわからないものだと感じてしまう。
っと、まずはこのステータスから見ていくか。
右下の人型のアイコン。
そこに[ステータス]と表示されていたので、とりあえずそれから見ていく。
カサハラ=ケンジ LV9999(MAX) ♂ (17)
[人族][神龍族]
○筋力:99999(MAX)
○防御:99999(MAX)
○魔力:99999(MAX)
○魔防:99999(MAX)
○体力:99999(MAX)
「…………ま、まぁなんかのバグだろ……ってかなんだよ、神龍族って……」
思わず言葉を失ったが、何とか整理する。
深呼吸、深呼吸。
よし、次は[スキル]ってのを見てみるか。
[固有スキル]
輪廻転生 勇者 死の略奪者
[一般スキル]
全属性耐性 全状態異常無効
「何じゃこりゃぁぁぁぁぁ??!!」
今更ながら気がついた。
何だ、このブッとんだチートは……。
そういえば、さっきまで立つのもやっとだったのに、今では体が軽い。
どこまでも飛んでいけそうだ。
そこで俺は[固有スキル]の説明文がある事にきがつく。
なになに……?
輪廻転生:神龍の固有スキル、不老不死や飛翔が可能。時間の枠さえ超越する。
勇者:勇者の固有スキル、聖剣が使えるようになり世界を闇から救う能力を得る。
……も、もう驚かされないぞ。
いや、驚く驚かないの話ではなくなぜ俺がこんなスキルやステータスなのかと言うことが、今一番の疑問だ。
「なんだってこんなことに……」
思わず声に出てしまった疑問は次の説明で全て明らかになった。
死の略奪者:カサハラ=ケンジの固有スキル。ありとあらゆるものにトドメをさし、そのものが死した時発動する。
全てのスキルとステータスとアイテムを略奪する。
「そういう事だったのか……」
これでこのチートスペックの理由が説明できる。
と言うことは、やっぱりあの勇者と神龍は……。
いや、考えてはいけない。
あいつらの分まで、俺が頑張れば良い。
とここで、一つの疑問が発生した。
これから何をするか、だ。
現状確認はとりあえず出来たし、スキルも思わぬ形で手に入ったのでまず死んでしまうことは無いだろう。(前の世界では死んでいるが)
……そうだ!
しばらく考えていた俺は忌々しいクラスメイトのことを思い出す。
俺がこの世界に来てるってことはあいつらも来てるのかも……。
いや、違うな。
あんな俺を散々いたぶった奴らに興味はない。
俺に残る一つの懸念。
それは酒見さんだ。
俺がとても酷いことをしてしまった酒見さんは一緒のクラスだ。
そのため時々目があって気まずいったらありはしなかったが、今はそうは言ってられない。
俺は強運だった。
たまたま目の前に死にかけの神龍と勇者がいて、たまたま持っていたスキルで偶然最強になった。
しかし、酒見さんがそうとは限らない。
今頃飢餓に苦しんでるかもしれないし、怪物に襲われてしまっているかもしれない。
最悪の場合だって……。
いや、今この瞬間から動くんだ。
「酒見さん、今助けに行くよ」
これが、最強になった俺の全身全霊の罪滅ぼしだ。
お読みいただきありがとうございました!
まさかの私が半年程連載していた物語にたった数話でこの小説が勝ってしまうとは……。
それだけ見ていただけたことに感謝です!
次も良かったらお楽しみに!