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現代の文明に生かされた人間では、異世界では生存すら厳しい。

目が覚め、まだ眠気が覚めぬ目をかすかに開くと青空が広がっていた。

また、感覚が戻り、背中にはごつごつとしたものが感触された。

しばらくしてから俺は青空を見ていることに違和感を感じ始めた。

というのも、俺は自宅で友人らと泊まり込みでゲームパーティーをしていたはずだ。

であるなら見えるのはいつも見慣れた掃除をさぼり小汚くなった天井のはずである。

俺は眼球を左右上下に運動させ周囲を見渡す。

眼前に広がるのは見慣れたゴキブリの楽園ではなく鬱蒼と木々が生い茂り、おそらく雑草と呼ばれるであろう者が不作法にのびのびと生えている様子であった。

俺は上体を起こした。

背中に衣服が引きつく感覚が俺を完全に目覚めさせた。

嫌々背中に手を伸ばす。

湿ってやがる、気持ちわりー。

クソ、なんでこんなことになってんだよ。

思考する。

ここはどこであるのかと。

思考しても分かるはずがないのであるが。

答えの導くためのピースの欠けた問題をグズグズと考えているうちまた疑問がわいてきた。

あ、そういえば、友人らはどうしたのであろうか。

その疑問は俺を不安にさせた。

どこかわからない場所で独りぼっちはの孤独と恐怖を自覚させたからである。

それゆえに俺は前問のことは頭の片隅に追いやり友人らを探すことにした。

友人探索は想像以上に困難が転がっていた。

まず歩くだけで足が痛い。

これがつらい。

現代社会の靴という文明に20年以上守られた足は石など踏もうものなら激痛が走る。

肌が露出していれば当然のように葉っぱなどで切り傷ができる。

気温がほどほどにあり、体温が奪われないことは幸いであろう。

「ロリコーン、ホモー、BBA好きー、顔面崩壊野郎ー」

と俺は友人らの特徴を大きな声で呼びながら周囲を探索した。

起きてから今までにどれだけの時間がたったのだろうか、時計がないからわからない。

恐怖心のせいで時間の経過がゆっくりに感じられていることを鑑みれば数分程度なのかもしれないが。

現代社会の文明の利器に頼り、インドア派の俺からすれば山がどんな場所であるのか知らない故に、今にもその草むらから何かが飛び出すのではないかという妄想が俺の恐怖心を撫でまわした。

足が何か突起物に当たれば、他えば蛇なんかが生い茂った草の下でとぐろを巻き、俺に噛みつこうとしているのではないかと思いお尻の穴が収縮する。

背中など目に見えない部分が過敏になり何もないのに何かに触れているかのように感じ、例えば毒虫が張り付いたんじゃないかと体を縮こませたりする。

そのうち足を滑らせ俺はこけた。

膝から地面に着地した故にすりむき血が出てくる。

「いてぇ、いてぇよう」

自分が情けなさ過ぎて涙が出てくる。

友人たちが見当たらず一人の孤独が心の傷を悪化させる。

鼻を啜り、体操座りでその場に蹲った。

涙と鼻水が地面に潤いを与えた。

何かが草とこすれる音がした。

友人かもしれないし、やばい獣かもしれない。

期待9割恐怖1割でそちらを振り向く。

そこにいたのは身長は平均を多少上回る程度ではあるものの、肩幅がでかくがっしりとした上半身。

そしてはちきれんばかりに肥大した太ももを持った顔面が崩壊した男であった。

「どょう”……」

「おい一成かずなりクゥン↑、てめぇ、なんで俺だけ内面じゃなく外見を貶してんだ、死ね」

俺が鼻が詰まり濁音気味の声を遮って遼太郎りょうたろうは口を開いた。

その声色はお互いにふざけあっている時と全く同じで、特にクゥン↑なんて、アニメとかで影響をうけた痛さが前面に出ていた。

顔は口角緩やかにが上がっていた。

いつも細い目がさらに細くなっていた。

「どょう”だろ”う”う”う”う”」

友人を見て安心した俺はたまっていた涙と鼻水の洪水をおこしながら遼太郎に抱き着いた。

「うえ、キモ、やめろ、近づくな、俺の服で鼻水を拭くんじゃねぇ、バカ、死ね」

「う”う”う”う”う”」




「お恥ずかしいところをお見せしました」

俺は遼太郎に会えたうれしさでキモイところを見せてしまったことを謝罪した。

「おう、気にすんな、とりあえず直人なおとに伝えるから、安心して掘られていいぞ」

「安心できないんですけど、やめてよ、やめてくださいオナシャス」

「それはお前の今後の態度次第やろなぁ」

「そんなぁ、酷い!、童貞、非道、顔面崩壊、ゲロ、ウンコ、ブタ野郎」

「お前はお願いする気があるのか。というかお前も童貞やんけ」

「俺はオナホで卒業したので童貞じゃないです」

「ええ、ええんか、お前、それで」

と、俺はそうなたわいもない会話を延々と繰り返し笑い心の平穏を取り戻した。




「そういば他の奴は?」

おふざけにも飽きてきたので遼太郎聞く。

「いや、知らん。俺はお前にあったのが初めてだぞ、というか周囲に俺しかいなかったから俺一人だと思ってたし。お前と違って僕ちん心弱くないからな」

「うっさい、いつまでもぐちぐち言うな禿」

「禿げてねーよ、殺すぞ」

「ま、いいわ。じゃ、ほかの奴も探すか。」

「いや、ほかの奴を探すより水と食料を見つけるべきだと思うぞ。」

「なんで?」

「あいつらが見つかっても食べ物と水がなければ結局困るやろ。だから、まず水と食料を最優先で集めて、

もしそのついでに奴らが見つかれば一緒に行動すればええやろ。」

「まあ、そうかもしれんけど。水と食料のあてはあるのか?」

「あー、水、というか川は見つけたんだ。」

「じゃああと食料だけか。」

「いや生水を飲むのはなぁ。できれば煮沸したいんやけど」

「生水ってやばいんか?」

「まあ、いろいろ雑菌とか微生物とかその他いろいろ山盛りだと思うぞ。昔のピロリ菌とかも井戸水が原因だったと思うし。まあ、最悪生水で飲むしかないが、現代でのきれいな水をもむ俺たちにはかなりやばかったと思うで」

「煮沸すればいいなら煮沸すればいいじゃん」

「薬缶も、鍋もないのに?どうやって?」

「あ、っそっか、どうしよう。あ、なんか砂漠ではラクダの血を飲んだりするとか聞いたことあるけどそれは?」

「いや、その方法は初めて聞いたけど、わざわざ水のない砂漠限定での話で水がある場所ならそんな話がないならふつーに水飲むより危険があるんじゃないか。水があればラクダの血を吸わなくてもいいんだろ。というかそもそもその話だとすでに生き物を殺せる状態じゃないと取れない手段だし。」

「うーん、じゃあダメか。」

「きついな。というかお前生き物殺せるんか?」

「あ、うーん。自分の命かかってるから頑張って、うん、何とか、いける、かな?」

「まあ、俺も微妙なんだけどさ、あ、言い忘れてたけど、投げるのに手ごろな石があったら拾っといてくれ。俺が投げるのに使うから。」

「え、まあ、いいけど。というかお前なんか適応してない、この環境に」

「いや、まあ俺ミリオタだったし異世界もののラノベ好きだったから。」

「え、ここ異世界なんか?」

「いや、知らないけど。まあ地球のどっかでも擬似異世界みたいなもんやろ。もうそろそろ話すのはやめにしないか。時間は有限だし。異世界ものとか開拓とかのゲームって初期の動きがめちゃくちゃ大事になるし。その話は夜しようぜ」

「あ、うん。わかった。」

「んで、食料の話なんだけどさ」

「うん」

「俺は動物を仕留めたいんだ。」

「火もないのに?生で食べるの?」

「火はある」

「え。」

「中二病をこじらせて持ち歩てるかっこいいライターがポッケに入ってたから」

「どうせなら中二病こじらせてかっこいい鍋も持ち歩けばよかったのに」

「どういう状況?頭おかしいやろそいつ」

「ライターも十分頭おかしいで。」

「中坊のころはナイフも持ち歩いていたんだが今はさすがに持ち歩いてなくてすまんな」

「ここで頭おかしいアピールいらないぞ」

「あ、まーた脱線した。話し戻すぞ。」

「あ、すまんな」

「川を下ろうと思うんだ。」

「なんで?」

「動物だって水を飲むし川での遭遇率は高いだろ」

「いや分からんけど。まあ確かに高そうだね」

「あとできれば海に出たい」

「?なんで」

「日本人なら海藻が食べれるやろ。あれ逃げないし多分楽に捕まえられるから腹のかさましにはなると思ってな」

「まあいいんじゃない、ミリタリーとか、サバイバルの知識がないからお前に従うわ」

「ん、じゃあ、いこっか」

「うん、遼太郎さんと一緒ならどこまでも」

「キモイわ、死ね、直人に言えば喜ぶぞ」

「あいつは本間シャレにならんから勘弁してください、ネタじゃなくなるじゃん」

「せやな」



幸か不幸か、俺らは海岸に直ぐに着いた。

海岸には多くのものが流れ着いている。

そして俺たちは予想していなかったことだが、砂浜に打ち上げられたいくつもの生物の死骸がありそこに多くの鳥たちが集っていた。

いや、現実逃避はよそう。

あの死骸は、恐らく、人間のものであろう。

俺たち二人はしばらく無言でたたずんでいた。

高度に発展した現代社会では滅多に見られない死という現実が我々にまじまじと突きつけられた瞬間である。

それが俺の危機感を逆なでした。

俺は愚考する。

遼太郎は運動のできるやつである。

高校、大学ともにスポセン入学である。

現実的な推理をすると運動ができず、食料や水の確保もできない俺は役立たずである。

故に遼太郎にとって切羽詰まったら俺を切り捨てることが可能なのである。

その可能性を下げるためにも自分が役に立つところを示す必要がある

「死体の持ち物とか使える、よね」

「あー、そうだな。まぁ。でも……きついなぁ」

思いどうりの答えが変ええてきた。

きっと遼太郎ならそういうと思っていた。

遼太郎は優しい人間であるから。

人間の死体を触りたいとは思わないだろうと。

「うん、あ、じゃあ役割分担しようぜ」

そう、なるべく喜びが前に出ないよう努めていった。

「え」

遼太郎はそう答えた。

「いや、正直言って俺体力もないし、サバイバル技術もないし、正直役立たずだからさ、遼太郎が食料採集で俺が死体あさりするよ」

先に俺の懸念事項を、つまり俺が役立たずであるという事実を言うことで、まだ健全な遼太郎の思考に俺が役立たずであることを気にしていることを植え付けそこを指摘されることを抑制することを期待して俺は言った。

まあもちろん遼太郎がそれを否定することを前提での話であるが。

「え、別にお前が役立たずだとは思ってないぞ。それに死体あさりなんて、きついと思うしそれこそ分担してやるべきだと俺は思うぞ。」

きついことを俺に押し付けない遼太郎はやはり根元から善人なんであろうなと思う。

俺みたいに善人ぶった言動をするくせにいじめを見て見ぬふりをすることなんてないのだろう。

ああ、やだな、嫌なこと思い出した。

「いや。思ったんだけどさ。夜多分冷えるよな。それで、火の近くで暖を取る必要があるけど。そのためにはよく乾いた枝とかが必要だろ、ライターがあっても。それを取ってきてほしいのもある。最悪食料は無くても熱を奪われるのを防げば、カロリーは節約できるし空腹はある程度我慢できると思うんだ。できれば雨風もしのげる場所を見つけてほしいし」

とっさに思いついた理屈を俺はごねた。

正直、今はどっかに行ってほしい、嫌な思い出がよみがえる。

「あ、そっか確かに。衣食住っていうし、住のこと軽視してたわ。でも大丈夫か、一人で死体あさりなんて」

「俺ができることはそれしかないのだから仕方なかろう。」

「分かった。お前がそこまで言うなら、そうしよう、時間は有限で今日を乗り越えるのも大変だってあの死体を見て実感させられたしな。」

「じゃあ、後でどこに合流する?」

「まあ夕方までにここに来るでいいでしょ」

「分かった」

そういってお互いじゃあなと言って別れ、彼が山へ行くのを見送った。

さて俺も役割を果たすか。

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