第2王子レノーワ
今日は、第2王子レノーワ=アルバースの誕生会が行われていた。レノーワは今年で16歳、結婚適齢期を迎えて、貴族たちの娘を売り込む動きが活発になっていた。
「レノーワ様ってとても凛々しくて素敵ですわ。」
「瞳も宝石のように光り輝いていますわ。」
そんなことを思っていないだろうなと令嬢からの顔で察したが、顔には出さずに談笑を続ける。
レノーワの周りには、結婚適齢期の令嬢だらけだ。おそらく、側室として売り込む動きがあるだろうなと動きを察知して、逃げるように庭園に向かった。
レノーワ=アルバースはこの国と自分の家族が嫌いだった。兄である皇太子は心配していないようだが、自分や弟は気を抜けば殺されてもおかしくない。まぁあのきちがいの兄のことだとも思う。
舗装されていて中心には女神の像が飾られている庭園から、男女の声が聞こえる。逢い引きかと思うが、王宮の庭園でそんなことをしていたらつまみ出されているはずなので違うだろう。衛兵に目を向けると、彼らはただ苦笑いするだけだった。
そして、少し歩いたところで、苦笑いの意味が分かってしまった。兄である皇太子と侍女がそこにはいた。彼らの噂は聞いている。かぼちゃの亡霊にとりつかれた、夜な夜な侍女を襲う。バリエーションの多い噂はもう笑うしかないだろう。
兄と侍女は戯れていた。兄が侍女に怒ったり、さまざまな表情を見せていた。
アルバースはもう終わりを迎えるのももうすぐだろうな、あんな兄が王になることを考えるとそう思った。けど、レノーワはそれもいいかもしれないとも思っていた。
(なぜだ……)
だけど、レノーワはあの兄を見て、胸の奥底から黒い炎がわき出るような感覚に苛まれる。
(兄を妬んでいる?)
バカな……あんな馬鹿丸出しな兄は嫌いだし、あの性格も嫌悪感しかなかった。なのになぜだ?
「ちっ……」
自分らしくもない、おそらく酒の飲みすぎか…そう結論して彼は自室に戻ることにした。
「下らない。」
目を閉じて、数秒立ち止まると再び歩き始めた。
侍女はケイコさんのことです




