出会いは嫌い~刀工
いちわ
「むーちゃんはなんで私達と遊ぶの?お母さんが言ってた。むーちゃんの家は下の人を見下すので有名だって…むーちゃんはそうなの?」
「僕は…ぼ…くは……」
これは僕の夢…でも本当にあった記憶
あの時僕はどう返したんだっけ?
そんなことを思いながら三条宗近はゆっくりと目を開ける。
今日はこの学園の入学式で、校長の話を聞いていている途中に彼女は眠ったのだが、あれから数分経ったはずだが、校長の話は一向に終わっていない。
この学園には3つのコースがある
普通科というのは変わらないが、昔からある中高一貫コース、1年前からある男子だけの日歴コースという名の演劇を中心におこなうコース、そして新しく出来た女子だけの刀工コース
宗近はそのコース目的で入学したのだが、校長の話がこれほど長いとは思っていなかった。
周りは眠っている人、携帯を触っている人、こっそり話している人など様々で飽きているオーラが凄く伝わってくる。
もう一度寝ようかな…宗近が思い始めた時、横から声をかけられる。
「君は中から?それとも新しい人?」
「新しい人…かな?」
新しい人…高校からの人ということだろうか?
宗近は悩みながら質問に答えるとその回答に彼女は嬉しそうに微笑んで「私と同じだね」と言った。
その後2人はたくさん話をしていたが、名前を聞く事はなく、入学式は終わった。
教室にて
刀工コースは新しく出来たものなのに二クラスあり結構人気なのだと納得しながら宗近は、一つの塊を見る。
1人の席を囲むようにたくさんの人が集まっており、囲まれている人が誰なのかわかりづらい。
「なにぼーっと眺めてるの?」
「えっ?」
声をかけられた方…前の席を見るとそこには、入学式に話しかけて来た人がいた。
「同じコースとは思ってたんだけど、まさかこんなに近くなんてね。私は粟田口国綱よろしく!」
そう言って国綱は握手を求めるように手を出す。
宗近は小さく笑って
「僕は三条宗近よろしく」
と国綱の手を握り返す。
その2人の光景をたくさんの人に囲まれた隙間から眺めている人は、会いたくない人を見るような目で眺めていた。
HRも終わり寮に行こうと宗近は荷物をまとめて席を立とうとしたその時、
「三条宗近だよね?」
と声をかけられる。そこには見覚えのある懐かしい人がいた。
「大原安綱…」
「久しぶりだね…10年ぶりかな?あの時の日以来」
あの日とは多分変な噂を流された時だろう。宗近から見たら悪夢のような出来事が始まった日、どうしてそうなったのか、何故そんな噂を流されたのか未だにわからない。
「あの日、安綱は何で引っ越したの?噂の事だって聞きたか…」
「嫌いになったからに決まってるでしょ?」
「そう…だよね…」
宗近は少し苦笑いをする。今更ながら聞かなければ良かったと後悔した。
安綱はあの噂が真なのか偽なのかを知る前に引っ越した、宗近から逃げるように…
だから今更嘘でしたと、昔のように戻れるはずがない。10年も立っているのだから
「話はそれだけ?大原さん」
教室の出入口、いつから聞いていたのか国綱が立っていた。
「…粟田口家様が何の用?」
「ずっと話聞いてたけど、全部自分勝手すぎる。ただ単に悪口を言いに来ただけじゃないでしょ?」
国綱の言葉に安綱は溜息を吐いて
「粟田口の人間には全てお見通しという事ですかそうですか。では用件を一つ…三条宗近貴方には刀を打ってもらいたい。それも私の打った童子切を超えるほどのね」
「嫌だって言ったら?」
「その時は皆にこういうかな、勝負に逃げた最低な人ってね」
「期間はいつまで?」
「来週の朝、学校の食堂前にある刀剣認定所に刀を持ってくる。用件は言ったから」
安綱はそう言い残して教室から出て行く。
2人はその様子を眺めることしかできなかった。
寮の部屋にて、国綱は一人今日の事を考えていた。
あの出来事の後、宗近は1人になりたいらしく先に寮に行ってしまい、結局国綱は一人で帰ることになった。
「はぁ……宗近…大丈夫かな…」
国綱はため息を吐きながらベットの上で転がっていた、そんな時外からドアをノックする音が聞こえる。
「国姉!国姉!居るの?居ないの?」
その声にはっとして国綱は急いで時間を確認すると時計は5時を指していた
今日、国吉と食堂に一緒に行こうと約束していたのだ
国吉とは、国綱の従妹で…と言っても誕生日違いなだけで、国綱の方が早いから国姉と呼ばれている。
今年2人は一緒にこの学園に入学し、一緒の部屋で生活することになった。
国綱が思うに、ここの寮はマンションに近い。一人用ならリビングと部屋が1つ、二人用なら部屋が2つ、更には浴場にキッチンなど、引きこもるなら最適な設備である。
彼女がこの学園を選んだ理由の一つはこんな寮があるという事で…もう一つは、成績によっては学校にある設備がほとんど無料という事。
その事を親に言ったところ、即決だった。
と言っても学費が無料になる訳では無い。
この学園に大原がいるという噂は前から聞いていた。
中学成績トップで、2年の時反りのある日本刀を作った天才、先生達にはそう言われている。
刀工コースが出来たのも彼女の…安綱の刀剣を見た先生達が安綱が教える前提作ったもので…コースと言っても先生が教えるわけではなく大体は独学になるだろう。
一つの疑問といえば、そんなすごい人が何故、宗近にあんな事を言ったのかという事だ。
昔の知り合いと言えど刀作りは私と同じで初心者のはず、そう国綱は思っていた
ただ、あの時…『刀を打ったことある?』と聞いた時、宗近は一瞬悲しそうな顔をしていた。
それと今回の事が関係あるかは分からないけど…
「国姉遅い!」
その声と同時に、扉が殴られる音がした。
国綱はあっ…やばい と思いながら急いで部屋を出る。
「国姉、出ると言って5分が経過しました。何か言うことは?」
「すみません…今度同人誌買うから…ね?」
「許す!」
国綱はため息を吐いて国吉の隣を歩く。
彼女はウキウキしながら、どれを買ってもらおうかな〜などと言って嬉しそうに歩く。
その真横で国綱は何をかわされるんだろうと内心ビクビクしていた。
国吉は周りから見てもわかるthe腐女子である。物から人外何でもいけるらしい。
国綱は前に1冊見せてもらったが、次元が違いすぎてあれ以来見ていない。
『国姉はこれを読んで視野を広げるべきだよ!』
『私は別ジャンルの方で視野を広げさせていただきます!』
と土下座をしながら言っていた。
「よし国姉!」
「な…何?」
「食堂まで走ろう」
「急?!ちょっとまっ…」
国吉は私の静止の声も聞かず1人走って行く。
自由すぎるのは変わらないな…と国綱は思いながら歩いていると前に安綱の姿を見つける。
壁を背にもたれがかかり、あの時の勢いはどうしたのかと思うほどくらい表情をしていた。
「何してるの?今にも消えそうですみたいな顔して」
「あんたには関係ない」
「はぁ……小学の時、前の学校に唯一の友達が至って言ってなかったっけ?放課後に言ってたこと本気には見えなかったし、何があったの?」
国綱は気になっていたことを安綱に質問する。
小さいとか気から、気になってしまったことをすぐ聞こうとする国綱の悪い癖で、言った後またやってしまったと顔が少し赤くなる。
その光景に安綱はふっと笑い
「昔のことだし、別にいいよ」
安綱はそう言って話し過去のことを思い出そうとする。その顔は嫌いと言っておきながら楽しそうで、嬉しそうな顔だった。
そんな顔に微笑んでいると「何微笑んでんの?」と安綱に突っ込まれる。
「な…何でもない」
国綱は首を左右に振って否定し、小さく深呼吸をする。
彼女の話で、お節介かもしれないが何か宗近に役立てたらいいと思い国綱は安綱の話を聞くことにした。