いつもこんな感じ。
「なぁ、ディー帰ろー」
「いや、一人で帰れ」
「じゃ、教室で待ってるわ」
「話を聞け」
「早く終わらせろよーそ・れ」
「……」
図書委員の仕事なめてんだろ、あいつ。今日は書庫整理の日。そんな早く終わらないんだから、先に帰ればいいのに。というか、一緒に帰る必要があるのか。いや、ない。
親が親友同士で、家が隣ってだけで、一緒に帰る必要はあるのか?そんなに親密な関係というわけでもないのに、なぜ…え?隣人って親密な関係なのか?いや、そうではないと私は思う。反論は認める。うん、何を考えているのか自分でも意味は分かってない。何の話だったっけ?
「委員長~」
思考を遮るように後輩から声がかかる。えぇ、これでも図書委員会委員長です。
「んーなにー」
「さっきの人、噂の彼ですか?」
「君は何を見ていたのかな?ん?」
「えーと、仲の良いカップルがイチャついていると・こ・ろ」
「あそこと、そこの棚もよろしくね、ナディー」
「げぇ!」
なぜ、あいつと噂にならなければいけない。……ん?いや、待て。
「ナディー、噂ってなに?私、初耳なんですけれども、え?簡潔に答えなさい」
「風は火を助け大きくする」
「はい?」
「もう先輩ったら鈍いんだからー。風はアレクサンダー先輩のこと、火は先輩のことですぅ」
「ん?……確かに魔法の属性はそうだけども、なぜそれが噂になる…」
「この間の演習時のコンビネーションといったら、もうっあれは!えぇ、そう!夫婦ですよ!」
「……あれか…」
ふと、先日の魔法実技演習の事を思い出す。まぁ、たしかに助けてはもらった。
「あ、認めましたか?じゃあそーゆーことでー棚の整理行ってきますぅ、うふふ」
「おい、ちょ、待て、え、置いてきぼり?…って、認めてないから!!!そこのところ間違えないで、大事だから!ねぇ!聞いて、ないですね、あはは…」
棚の整理に戻った後輩の背中を見つめながら考える。なるほど、あれが噂に繋がったのか。
「ちっ」
おっと、失礼、つい舌打ちが。
しかし、あれは、しょうがないじゃない。と、開き直ってみる。
最後に頼ってしまうのは、やっぱりあいつなんだ。…って、何を考えている自分。これでは、あいつしか友達がいないみたいじゃないか。落ち着け自分。友達ならいるぞ。ナイスバディーな悪女…性格のよろしい美女が、えぇ。
『やーっぱ、俺しかいないでしょう?お前の力を支えるのは。ん?』
って、なんで浮かんでくるんですか、アレクサンダーくんや。あいつの、右頬を軽くあげる笑み。まぁ、似合ってますよ?悪ガキぽくて。悔しいが、あの時は助けられた。これは認めよう。だがしかし。
「夫婦って何。そんな哀愁漂っていたのか…」
少し俯き、考えている様子の先輩を本棚に隠れて窺う。ふむ、なるほど。
アレクサンダー先輩報われねぇ…呼吸も相性もピッタリ抜群って意味わかってなさそぉ。あんなに想われてるのに気づいてないとか…。私は心配ですよあなたの未来が、先輩。
しかも、顔良し、性格も良し(ちょっとやんちゃがgood)、ましてや魔力も強いアレクサンダー先輩だぜ?行動したら学園中に噂が広まるアレクサンダー先輩だぜ?なぜ振り向かないのだ、先輩。ナディー、悲しい。早くくっつけ、このやろー。そして、私を楽しませ…んん!えぇと、協力は惜しみませんので、とっととこの鈍感美人な先輩をよろしくです、アレクサンダー先輩。と願うことしかできない、今は。…はぁ、本どれだけあるんですか。終わりません。
「遅い」
「いや、帰れって言いましたよね?聞いてませんでしたか?」
「聞いたような気がしないでもない。ただ、ディーと帰りたかった」
「……夕飯目当てだと私は知っている」
「ばれたらしゃーない、ほら、帰るぞ」
「…はいはい」
小さい頃からずっと一緒の所謂、幼馴染。
無自覚で萌えさせてくる無警戒のあいつに、幾度のなく悶えてきたか…。
なになに、幼馴染は恋愛対象に入らない?
ノンノンノン、そんなのアプローチ次第でしょ?俺はガンガン攻める気全開だけど?
だって、ねぇ?俺しかいないでしょ、あいつを守れるのは。
赤い糸は縄より太く小指に巻き付いていると思うけど?え?待って。ちょっと今のは気持ち悪かったわ。まー、運命の相手って言いたかったんですよ。はい。
「おい、ちょっと待て。なんだこの左手は」
「なーにー?きーこーえーまーせーんー」
「なぜ手を握っている」
「んーー?」
「…離さないと家にあがらせない」
「さぁ、行きましょう、ディアナさん」
「……よろしい」