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狐の嫁入り  作者: 東京 澪音
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二人の親友


なんだろう?もの凄く誰かに見られているような・・・。

どこからか視線を感じる。


それに気が付いたのは駅のホームに立っていた時だ。

最初は線路を挟んだ反対側のホームから感じた視線だったが、電車に乗ったらとても近くで見られているような感じがした。


気のせいかと思ったが、間違いない。

例えるなら敵意に近い様な、殺気立った感じと言った方がいいかもしれない。


自分で言うのもなんだが、人様から恨まれたりするような行いをした覚えはない。

隣の父は気が付いているのだろうか?


僕は父に尋ねてみる。


「父さん、さっきからもの凄く誰かに見られているような視線を感じるんだけど、僕の気のせいかな?父さんは感じない?」


そう尋ねると、父はニコニコしながら答える。


「おぉ!ひょっとして宗人を想う異性の視線じゃないのか?流石は父さんの息子だけあるな!いやぁ~若いっていいね!」


流石は僕の父さんだ。天然と言うか、緊張感と言うものがまるでない。


「そう言うのじゃなくてさ。うーん、例えるなら着けられているって言うか、見張られてるって言うか。うまく言えないけどそんな感じ!」


そう言うと父さんはまたニコニコとしながら答える。


「まぁ、この狭い車両にこれだけの人達が鮨詰め状態になっていれば、誰かの視線が刺さったとしても不思議はないよ。周りを見てごらん。視線なんて皆様々だから。父さんだってさっきから斜め右のOLさんに釘付けさ!」


そんなカミングアウトはいらなかったが、確かのそうかもしれない。

これだけ込み合っていれば尚の事。


僕自身も視線が定まらず、どこへ向けたらいいのか判らないでいるし。

人間変な事に気になったりして、それに視線が釘付けになる事だってある。


そう、父さんみたいに。

気にし過ぎなのかもしれないな。


電車は駅で止まった。

僕が降りる駅だ。


「じゃ、父さん行ってきます!」

そう言うと僕は込み合う人ごみをかき分けて駅のホームに降り立った。


ここから学校までは徒歩で20分位。

僕は改札を抜けると、西口ロータリーの北条早雲の像付近で待つ友達の所へ走る。


「やぁ、おはよう!二人とも。」

僕は2人に声をかける。


「おはよう宗人。」

僕の挨拶に二人とも返事を返してくれる。


一人は小学生から一緒で、同じクラスの晴秋”はるあき”。

とても気のいいやつで、みんなからとても好かれるタイプ。

何かのイベント時には結構中心にいる事が多い。


もう一人は中学から一緒の神薙さん。因みに神薙さんは、顔立ちがとても綺麗で、学校で1・2を争うくらいの美人さんだ。実家は神社で、彼女はそこで家の手伝いをしている。

正直彼女の巫女服目当てで神社を訪れる男は多く、噂だとそのおかげで神社はとても繁盛しているとか。


僕ら3人はとても気が合う事から、一緒に行動する事が非常に多い。

実は来年から行くであろう大学も、3人一緒の大学を受験予定。


僕らは通学路を歩きはじめた。


「そう言えばさ、昨日急に大雨降ってきたけど、宗人も神薙も大丈夫だったか?俺はコンビニに避難したから平気だったけどさ、降るなら降る!晴れるなら晴れるでさ、はっきりしてもらいたいよな。」


晴秋の言葉にクスクス笑う神薙さん。


「私は本屋で雨宿りしてやり過ごしたわ。宗人は大丈夫だった?」


僕は苦笑いを浮かべる。


「僕はびしょ濡れ。途中で諦めたよ。雨宿りするとこもなかったし、濡れて帰ったよ。」


びしょ濡れだったのは僕だけで、二人とも無事だったみたいだ。

ちょっと不公平だとも思ったが、その分素敵な出会いもあったからいいか。


そうだ、昨日の事をどうしよう?

二人は親友だしな。でも信じてくれるだろうか?


そんな事を考えていると、神薙さんが小声で尋ねる。


「ねぁ二人とも、そのまま聞いて欲しいんだけど、気が付いている?誰かがこちらを見ている。それも普通の視線じゃないよ。あ、晴秋、振り向いちゃ駄目だ。」


さすが神薙さんだ、鋭い。

まぁ、凡人の僕が気が付くくらいだから、彼女が気がついても不思議じゃない。


僕は今朝の事を二人に話した。


「ふーん。って事は、見られているのは宗人って事になるのか?宗人、何か心当たりあるか?」


うーん・・・やっぱあれかな。


思い浮かぶ事としたら、やっぱり昨日の狐の嫁入りだ。

それ以外考えられないしな。


玉藻さんは逃げて来たって言ってたし、正直それを追いかけてきても不思議じゃない。

で、昨日もしくは今朝二人でいる所を見つかった。

そう考えられる。


でもどうする?この事をやっぱり二人に話すべきだろうか?

僕は少し考えて、彼らに話す。


「心当たりがあるって言ったらあるんだけどさ、信じてもらえるかどうか。簡単に話せる話でもないし、二人とも今日学校終わってから時間ある。ここじゃ何だし家に来てくれるとありがたい。詳しくはそれからって事で、どうだろうか?」


二人は快く了承してくれた。


「ありがとう。じゃあ詳しくは僕の家で。」


学校に着くまで視線は感じたものの、、校舎に入るとその視線は消えてなくなった。

という事は、学校関係者じゃないんだろう。


僕らは教室に着くとそれぞれの席へ散っていく。


さて、玉藻さんの事彼らにどう話そうか。

そんな事を考えていると、担任が教室に入ってきてホームルームが始まった。


取り敢えず昼にでも軽く、それとなく話すか。

僕は視線を窓の外に移すと、流れていく雲を目で追いながらそんな事を考えていた。





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