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狐の嫁入り  作者: 東京 澪音
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13/18

ノイズ


帰宅して僕らは家族揃って夕飯を済ますと、玉藻さんが淹れてくれた紅茶を啜りながら、僕らはシューキャラメルを食べる。


僕の隣でさっきから肩を震わせながら涙する父を横目に、だ。


「宗人はあれだね、父さんの事があまり好きじゃないんだね。」


悲しそうな目で僕のシューキャラメルを見ている。


「いや、だって父さん甘いものあまり食べないでしょ?だからね、ついコロっと忘れちゃって。」


そう言うと、更に恨めしそうに僕を見る。


「父さんだってたまには甘いものも食べたくなるさ!毎日煙たい上司に嫌味を言われ、靴底をすり減らして営業先を駆けずり回る。そんな疲れた身体に、たまには甘いものを入れたくなるさ。車で言うならハイオクだよ、ハイオク!レギュラーじゃないんだ!父さん、今じゃ20年落ちの中古車みたいだけどさ、そんな車体にたまにはハイオク入れたくなるさ!」


もう何を言わんとしているかさっぱり理解できないが、シューキャラメルを食べたいって気持ちだけはよく判った。


仕方ないので僕は包丁とお皿を持ってくると、シューキャラメルを半分に切り、父に差し出した。


「わーぃ!シューキャラGET!」


まるで小学生の様にはしゃぐ父。

なんだそのテンション。


初めて目にした父の新しい顔。

それを冷ややかな目で見る母。


「宗人は知らなかったかもしれないけど、父さんね、昔からこうよ。小遣い日と欲しいものを手に入れた時なんか毎回ね。」


知りたくなかった事実。


そんな一家団欒の時間、宴もたけなわとなり父はお風呂へ、母はドラマ。僕は玉藻さんを連れて部屋に移動した。


「玉藻さん、今日神薙さんの神社に顔出してね、神主さんに会ってきた。で昨日話した通り、玉藻さんの村に一緒に行こうと思う。ただし、僕と玉藻さんだけじゃない。神薙さんと晴秋も一緒だ。神主さんがね、神薙さんも連れてけって。」


若干難色を示したが、僕は今日話した事を玉藻さんに話して聞かせる。

それについて玉藻さんも納得してくれた様子で、最後には了承してくれた。


「明日7時半に神社に集合して、村の入口近くまで車で送ってくれるみたい。明日の朝、ここを7時には出るから、今日は早めに休んでおいて。僕も早めに休むようにするから。」


そう言うと、玉藻さんは小さく頷いた。


「宗人様の意思は変わらないのですね。一緒に村へ行って下さるのは大変嬉しいのですが、一つ約束してください。決して無茶はしないと。」


真剣な瞳でそう訴えかける玉藻さんに僕は静かに頷く。


僕は玉藻さんの目の前に小指を指しだす。

それを見て玉藻さんは首を少し傾げる。


「約束するよ。だからさ、げんまん!」

そう笑って見せると、それにつられて笑い出す玉藻さん。


彼女の白くて細いその指に、自分の小指を絡ませると、僕らは約束をする。


” ザーッ! ”


なんだ?今一瞬頭の中にテレビの砂嵐みたいなものが走ったけど。


”ザザッ!”


まただ、でもそのノイズとノイズの間に何か見えたような・・・。小さい頃の僕。それともう一人。誰?

急に目の前が回りだすと、僕はベットに倒れ込む。


「大丈夫ですか!?」

それを見た玉藻さんが僕を心配そうにのぞき込む。


2~3分すると目眩も収まり、僕はベットから身体を起こす。

頭を少し左右に振るって、異常がないか確認する。


「ゴメンね玉藻さん。急に目が回っちゃって。もう大丈夫。心配かけてすみません。特に身体を使うような事してないんだけど、疲れてるのかな?僕は普段から常に考え事ばかりしてるから、脳が休みを欲したのかも。」


玉藻さんはまだ心配そうに僕を見ている。


「すみません。ここ数日私が色々ご迷惑をお掛けしてしまったばかりに・・・。本当に大丈夫ですか?」


出会ってから今日まで、玉藻さんのこんな顔ばかり見ている気がする。

笑顔を2としたら、辛く悲しそうな顔が8。


こんな顔してほしくないし、させちゃいけないんだ。

そう思いつつも、彼女の悲しそうな顔を笑顔に変える魔法を僕は知らない。


僕は彼女の頭に手を置くと、優しく撫でる。


何故かな、どうしてもこうしてあげたくなってしまう。


少し恥ずかしそうに、でも少し嬉しそうで。はにかんだ顔は朱に染まって見えた。

それ位、彼女の肌は白く透き通っていて美しい。


「ゴメンね、なぜかこうしたくなっちゃうんだ。」


以前もそうだったけど、嫌がる素振りはない。


他に色々慰めようがあるんだろうけど、悲しいかな僕には恋愛経験もなければ、女性の扱い方もわからない。唯一出来る事は、幼い頃妹にそうしていた様にしてあげる事位しか思い浮かばない。


お互いにそれ以上言葉を見つける事が出来ないまま、僕らは明日に備える事にする。

僕はお風呂に入り終えると、部屋の電気を消して身体を横たえる。


さっき起こった一瞬のノイズ。

そこに見えた幼い頃の僕と誰か。


その誰かが誰なのかわからない。


それはまるでフラッシュバックのようで、頭の痛みと目眩を覚えた。

一体、何だったんだろうか?


幼い頃の記憶を辿ってみたが、答えは出ないまま。

気が付くと時計は12時を少し回っていた。


僕は手に残った彼女髪の感触を思い出すかのよう、もう片方の手で掌をなぞると、ゆっくりと眠りについていた。


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