1.インターネット殺人事件
インターネット掲示板を閲覧している男性。その背後に、賊が立っていた。
賊は部屋にあった灰皿で、男性の後頭部を叩きつけ、殴殺した。
辺りに血が飛び散る。
「はあ……はあ……」
賊は我に返ると、被害者を殺してしまったことに焦る。
(捕まりたくない……そうだ……!)
とある朝。
新聞配達員がいつものように契約者の家に配達に来ると、昨夕の新聞が郵便受けに残っていた。
不審に思った配達員が警察を呼び、共に家に入って中を調べると、パソコンのデスクにうつ伏せになった状態で死んでいる男性・真中 智久を発見した。
遺体は後頭部を一撃で殴打されており、これが致命傷となったのであろうと推測される。
パソコンの画面には、某特大掲示板のスレッドが映っていた。
被害者が最後に書き込みをした時刻は午前三時三十二分だ。
警視庁の小坂刑事が鑑識に訊ねる。
「死亡推定時刻は?」
「詳細は解剖してみなきゃわかりませんが、午前三時から午前四時の間でしょう。掲示板の投稿も考えると、もう少し短くなるかもしれません」
「なるほど、被害者は亡くなる直前にインターネット掲示板に投稿していたのですね」
と、聡美が現れて発言する。
「おや、坂上さんじゃないですか」
「すみません。通り掛かったらパトカーが見えたもので。お邪魔でしたか?」
「いえいえ。坂上さんにはいつも助けられてますんで」
聡美は手袋をはめると、パソコンの画面をスクロールする。
「小坂刑事、これを見て下さい」
と、聡美が指差した投稿を、小坂刑事が見る。
「自作自演?」
「恐らく、これではないでしょうか?」
聡美が掲示板の投稿者のIDの部分を指差した。
「同じID?」
「この手の掲示板はIPアドレスを元にIDを生成し、日付が変わるまで同一IPで書き込んだものは、同じIDで投稿される仕組みになっているんですよ。気になりますね、このIDの持ち主」
「運営を当たってみましょうか」
聡美と小坂刑事は某特大掲示板の運営元を訪ね、問題のIDのIPアドレスを開示してもらった。そして、プロバイダーへ問い合わせ、その連絡先を得る。
連絡先は、被害者の友人でもある石動 慶太の現住所だった。
インタホーンを押すと、眠そうな顔をした石動が出てくる。
「こういうものです」
聡美が手帳を提示する。
「探偵?」
「はい。真中さんのことはご存知ですね?」
「真中がどうかしたの?」
「先ほど、遺体で発見されました」
「真中が?」
「現場の状況から見て、他殺の線が濃厚です。これは皆さんに聞くことなんですが、石動さん、午前三時から四時の間、どちらに?」
「部屋で寝てました。そんな時間に起きてる人なんてそうそういないのでは?」
「確かに。では、真中さんを恨んでいる人物にお心当たりは?」
「いえ、特には……」
「そうですか。どうもありがとう。では」
聡美と小坂刑事は石動の家を離れる。
「犯人、絶対逮捕して下さいよ!」
背後で石動が叫ぶ。
聡美と小坂はアパートの警備会社を訪ね、石動が防犯カメラの動画に映っていないか、確認した。
石動は午前二時五十分に帰宅し、それからは一回も姿を見せていない。
一応、アリバイは成立したようではあるが……。




