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Private Detective Satomi  作者: 坂上聡美
11.カラオケ店殺人事件

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30/33

1.ヒトカラ殺人事件

 聡美は休暇を取ってカラオケ店でヒトカラを楽しんでいた。

 個室の中は閉鎖空間のようなもので、悲鳴なぞなにも聞こえない。

「あ……」

 催した。

 聡美は歌を中断して、女子トイレへ駆け込む。

「ん?」

 聡美は個室の前で腰を抜かして座り込んでいる女性を見つけた。

「どうされました?」

「あ……ああ……!」

 女性は個室内を指差した。

 聡美が中を見ると、カラオケ店の制服を着た女性が、苦しそうな表情で遺体となっていた。

「立てますか? 現場保存したいので、出てもらえますでしょうか」

 女性は覚束ない足取りで立ち上がり、トイレから出た。

 聡美は手袋をはめ、遺体を調べる。

(頸椎に小さな穴のような傷。死因はこれか)

 その時、誰かが呼んだのか、警視庁の捜査員がやってきた。

「おや? 坂上さんじゃないですか」

「え?」

 振り返ると小坂がいた。

「小坂さん!」

「これは他殺ですか?」

「遺体を確認しましたが、その線が高いですね」

「死因は?」

「頸椎損傷による窒息死かと」

 言いながら、聡美はダストボックスを開ける。

 ダストボックスの中には、ビンが入っていた。

 ビンを取り出し、蓋を開けると、ほのかに甘い香りがする。

(クロロフォルムか)

「あ、よかったらどうぞ」

 聡美は小坂にビンを渡した。

「聞き込み行ってきます」

あ!——と、何かを思い出す聡美。「小坂さん、早く遺体運んで。漏れる」

「緊急避難ってことで男子トイレ使ってもらえますか?」

「了解」

 聡美は男子トイレに入った。

 立小便をしている男性が驚いて言う。

「ここ男子トイレですよ!?」

「女子トイレ使えないので」

「何かあったんですか?」

「遺体が発見されたんですよ」

「え?」

「それより!」

 聡美は個室に飛び込んだ。

 用を足し、トイレを出る。

「坂上さん、カラオケ店の出入りを封鎖しときました」

 と、小坂。

「ありがとう」

 聡美は受付へ向かう。

 どうやら今の時間、店員は被害者一人だけのようで、他には誰もいなかった。

 聡美は警察に協力してもらい、店長と連絡を取り、急遽きゅうきょ出勤してもらった。

 被害者の名は、名取なとり 明子あきこ

 店長の証言では、明るくて優しい女性で、周りからも人気があった。誰かに恨まれるようなことはなかったという。

 聡美は小坂に聞く。

「死亡推定時刻は出ました?」

「詳しくは解剖の結果待ちだけど、鑑識の話では午後12時の前後30分ってところだそうです」

(私がトイレのため歌を中断したころか)

「……?」

 聡美は先ほど、男子トイレにいた男性を捜した。

 その男性も、個室でヒトカラを楽しんでいた。


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