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Private Detective Satomi  作者: 坂上聡美
6.消える薬剤

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3.麻酔科医

 麻酔科。

 万丈目医師はいない。

「万丈目さんがどうかされたんですか?」

「いや、ちょっとね。万丈目さんにお会いしたいので、連絡先を教えていただけないでしょうか?」

 聡美は万丈目医師の連絡先を入手した。

「どうもありがとう」

 聡美は万丈目医師の家へ向かった。

ピンポーン──インターホンを鳴らす。

 すると、男性が出てきた。

「どちら様で?」

「こういうものです」

 聡美は手帳を提示した。

「探偵?」

「モルヒネ紛失の件でお話を伺えないでしょうか?」

「モルヒネ? あんた俺をうたぐってんのか? 逮捕したきゃ証拠を持ってこい」

「わかりました。そうさせていただきます」

 聡美は頭を下げると、病院に戻った。

 院内で聞き込みをしていると、万丈目医師が当直明けの時にスーツケースを持って帰ったという目撃証言が得られた。

 聡美は、万丈目医師がスーツケースにモルヒネをぶち込んで持ち去ったと推測するが。

「さて……」

 聡美は万丈目医師が当直の日を狙って、病院を張り込んだ。

 夜明けと共に、万丈目医師がスーツケースを手に出てくる。

 聡美は万丈目医師をカメラで撮影した。

 追跡する聡美。

 万丈目医師は聡美に気づくこともなく、家まで辿り着く。

 やがて、万丈目医師が家から出てきて、どこかへ向かう。

 辿り着いたのは、磯貝組の事務所だった。

(まずいな……)

 そこに川本が現れた。

「坂上さん?」

「吉田さんじゃないですか」

「こんなところで何を?」

「万丈目さんを追いかけてきたんですよ」

「万丈目医師ですか?」

「知ってるの?」

「薬事法違反でマトリが動いてますよ」

「モルヒネ?」

「どうやら万丈目医師はここにモルヒネを運んでるみたいです。あ、自分が言ってたってのは内緒で」

 川本はそう言って事務所に入っていった。

(あの人、まだ潜入してるんだ)

 入れ違いに、万丈目医師が出てくる。

 聡美は見つからないよう物陰に隠れ、その場をやり過ごした。

 病院に戻る聡美。

「院長、万丈目医師は磯貝組にモルヒネを運んでるみたいです」

「磯貝組?」

「はい。理由はわかりませんが、麻薬捜査官の情報なので確かかと」

「それじゃ、真相を知った横川さんは口封じに?」

「恐らくは。しかし、証拠がありません。薬事法で立件は可能でしょうが、殺人の立件は難しいかと」

「遺体の解剖をしてみてはいかがでしょうか? 幸い、ここは病院ですし、遺体安置室があります。横川さんのご遺体はそこで保管されてますよ」

「それじゃ、お願いしてもいいですか?」

 聡美は手術室へ移動した。

 医師が横川の遺体を解剖する。

 解剖の結果、遺体からモルヒネが検出された。

 被害者は眠らされて落とされたのだろう。

 聡美は万丈目医師を訪ねた。

「またあんたか。証拠はあったのか?」

「あなた、磯貝組にモルヒネを運んでますね?」

「なっ……!?」

「それだけじゃない。横川さんという方を口封じに殺しています」

「そんな事件記者の男なんて知らない」

「事件記者の男?」

「あ……」

 聡美は手錠を取り出し、万丈目医師の手にかけ、中野署へ連行した。

 中野署での取り調べで、犯行の全てを自供する万丈目医師。

 殺人と薬事法違反で送検される万丈目医師だった。


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