既視感あとの黄金劇場
すいません超遅れました(土下寝)
もっと速く書きたいけど、文体がなぜか安定しない(;´д⊂)
次はもう少し速く書けるよう、努力したいです(´・ω・`)
とりあえずマリアの暴走を止め、一息つくこと約二時間。
左腕を骨折していたスズちゃんも完治し、一番重傷だったポコ君もなんとか歩けるまで回復したので、いよいよ自分たちは、図書館地下最下層、三十階へと向かう事にした。
の、だが、
「待って下さい」
「んぅ?」
何故かメイドが、不満げな声をあげてそれを止めてきた。
「なに? どしたの?」
「納得いきません」
「? 何がよ?」
「この運び方がです」
左手に持ったメイドの首が、より不満げな声でそう言ってきた。
現在、自分たちはバラバラにしたメイドの体を、手足と頭、胴体と、二つに分けて運んでいる。
何でわざわざ運んでやってるかというと、ひとえにこのメイドの、ひいては魔導人形の仕組みに興味がわいたから。
あと、このメイドの言によれば、最下層の三十階、その一番奥の部屋には、メイドがいないと入れないとの事なので、頭と両手足は自分が持ち、残った胴体はマリアに抱えてもらっているのだ。
「なにか問題ある?」
「大ありです。何故よりにもよって彼女なのですか? 先ほどの行動から考え、彼女は適任ではありません。別の運搬方法を要求します」
ふむ、ようするにマリアに触られるのはイヤと、そういう訳か。
どうやら先ほどの盛大なセクハラ行為により、メイドはマリアに対して苦手意識が芽生えたようだ。
一見無表情に見えるが、よく見るとうす~く眉間にシワがよっているし、喋りも心なしか早口になっている。
「他に方法が無いのであれば、せめて代わりの方に運んでもらえるお願い致します。変態はイヤです」
「とうとう隠しもせず言い切ったよこの子。 ん~、代わりって言われてもね~……」
仮面越しに頬を掻きながら、すぐそばにいるスズちゃん達へと視線を移す。
だがそれよりも速く三人はそれぞれ別の方を向き、視線を逸らしてしまった。
「……いくらサヨリ様のお願いでも、それはイヤです……」
「その……えと……」
「すいません……オイラもちょっと……」
『ギャウギャウ!』
と、スズちゃんはちょっとむくれながら、チエちゃんとポコ君も少し気まずげに返答してくる。
まぁ、これに関しては仕方ないけどね。
何しろ、ついさっきまで殺りあってた相手だし。
文字通り五体解体して多少すっきりした自分とかと違い、まだ感情的に整理がつかないんだろう。
……マリアは別として。
「いや~他に運びたい人がいないんじゃしょうがないな! うん、しょうがない!! なぁに大丈夫!
この私が、がっしり! しっかり! ねっちょり! 安全に運ぶから、安心したまえ!」
「くっ、なんという事でしょう。こうして身動きのとれない私は、哀れ獣欲にまみれた変態の慰み者に……」
「いや、しないし、させないからね? ていうか、人聞き悪い事言わないでよ!」
いきなり年齢指定が入りそうな事をいうメイドに、思わずツッコむ。
マリアから助けた後、少し話してて気付いたのだが、このメイド、何故かこういう事を言う時だけ口調が流暢になる。
結局その後、マリアが抱えるのではなく、手を出せないよう布で背中に結わい付ける形にして、事なきを得た。
*
「そう言えばさ、君を作った【主】って、どんな人なの?」
最下層へ向かう傍ら、なんとなくメイドに聞いてみた。
自分たちが闘っていた本棚の乱立する場所から、歩いて十五分。
最下層へと続く階段を、のんびりと歩きながら進んでいる。
「どんな……と言いますと?」
「ほら、どういう人柄だ~、とか色々あるじゃない? 君のいう【主】って、この図書館の創設者の親子の魔術師、その父親の方でしょ?」
以前、マリアから最初に聞かされた図書館についての話を思い返す。
たしか、図書館創設者の父と娘、二人の魔術師のうち娘の方が戦争に巻き込まれて命を落とし、それを嘆いた父が、死んだ娘を蘇えらせる研究をするため、邪魔が入らないよう図書館自体に魔法をかけ、最深部に引きこもったっというのが、この図書館がダンジョン化した理由だったはずだ。
「魔導人形の開発者も、その父親の方なんでしょ? どんな人だったのかな~って……」
「……とりあえず言える事は、貴方方が知っている事実が、私達が知っている事実と比べ、だいぶ違っている事が見受けられます」
なぬ? 事実が違う?
「まず始めに、この図書館を作ったお二方は親子ではなく、恋人です」
「「「「「恋人ッ!?」」」」」
『フギャウ!?』
「はい。そして、魔導人形を開発し、私を創り上げたのは、貴方達が亡くなられたといった娘、つまりは奥さま――リエット・ヴェローナ様です」
メイドのいう事実に、思わず面食らった。
自分だけでない。マリアやチエちゃん達も驚いた顔している。
「まぁ、その二つに関しては、勘違いがそのまま伝わったものと思いますが。お二人共、歳がだいぶ離れていらっしゃいましたし、魔導人形の発表に関しても、リエット様ではなく、旦那様が代わりに立ちましたので」
「……その様子だと、まだ何かありそうだね?」
「はい。ですが、ここから先は、直接本人に聞いてみてはいかがでしょう?」
メイドがそう締めくくるのと、ちょうど同時に階段を下り終えた。
下りきった先には、繊細な彫刻のなされた重厚な扉が鎮座しており、まるでゲームのラスボスの間へと続くかのような、独特な雰囲気を醸し出している。
「この扉の先が、我が主の研究室となっております。残りの質問は、主から直接お伺い下さいますよう……」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 主から直接? だが彼は、五百年前に……」
「生きていますよ? そう簡単にくたばりませんよ。仮にも【賢者】の称号を得た魔術師なんですから――音声認証」
『――音声認証、作動』
「「「「「っ!?」」」」」
「スール・ナンバー、ゼロ・ゼロ・イチ。個体名、ユリ・ヴェローナ」
『――音声確認……スール・ナンバー、確認……個体名、……確認……一致シマシタ』
「入室を申請」
『承認シマス』
がごんっ、
天井から鳴り響く声にメイドが応えると、扉から大きな開錠の音がした。
目の前の巨大な扉がひとりでに動き、扉が開いていく。
そして――
「んぅ?」
「へっ?」
「えっ……?」
「なっ!?」
「はぁ?」
「……」
メイド以外、その場にいた全員の口から変な声が出た。
開いた扉の向こう、そこにあった物を凝視する。
というか、これって……。
「紙、ですね……」
「紙だねぇ」
「紙です」
「紙っすね」
「うん、まごうことなく紙だね!」
他のみんなも口を揃えて言う。
どうやら幻覚ではないらしい。
開かれた扉の向こう、その向こうにあったのは何千何万もの紙束で形成された、白く巨大な壁だった。
あれ、なんかデジャヴ?
「はぁ……またですか……」
目の前の白い壁を見て、メイドが深くため息をついた。
澄んだ湖のような瞳には、半ば呆れたような色が見え隠れしている。
「申し訳ありません、少々お待ち下さい……ミ・オーレ様! また入り口が埋まっています! 速く道をお開け下さい!」
メイドが声を張り上げて扉に向かい呼び掛けた。
だが、なんの反応もない。
その様子を見て、メイドがまたため息をこぼした。
「はぁ……仕方ないですね。では、皆さまをお待たせしている間、余興として以前ミ・オーレ様がお書きになられました自作小説『美しき薔薇の君、百合の少女と背徳の味』の、主人公が幼なじみの親友に、思いの丈をぶつける一面を、この場で朗読……」
『ちょっちょっちょっ、ちょっと待ってっ!? 今開ける! 今開けるから!! だからお願いそれだけはやめて!!』
扉の内側から悲痛な叫びが聞こえると共に、紙束の壁が動いた。
マリアの研究室とは違い、内側に向かってゆっくりと開いていく。
……それはそれとしてメイド。やる事えげつないなぁ。
自作小説の朗読とか、なにそれどんな拷もおオォおおっ!!?
「わぁ……っ!」
「綺麗……!」
開かれた光景を目にし、思わず息を飲んだ。
目に飛び込んできたのは、まさに芸術と呼ぶにふさわしい美しい内観。
白を基調とした壁面は、職人が一つ一つ丁寧に造りあげであろう豪奢かつ繊細な金の装飾が、至る所に施されている。
床には質の高い、色鮮やかな艶のある絨毯が敷かれており、吹き抜けになった天井には、なにかしらの聖書や神話の一場面を描写したフラスコ画が描かれているなど、まるでフランスのヴェルサイユ宮殿もかくやと言わんばかりの、絢爛豪華な造りとなっていた。
「おぉ……これは……」
「ス、スゴいっす……! どこ見ても最高級クラスの品質っす! 全部で一体いくらかかってるっすか!?」
スズちゃん達に続いて、マリアやポコ君も声をあげる。
特にポコ君はスキル【鑑定眼】も発動させているのであろう。
素人目に見ても分かるほど作り込まれた内観を目の当たりにして、気を失いそうになっている。
「確かに……これほど見事な内装だと、値段も相当なものだろうな……。それはそうと、さっきの声の主――君の主はどこかな? 姿が見えないのだが……?」
「あぁ、それは……」
「なっ、なんだ君達はっ!? 一体どこから入って来たんだ!?」
メイドの返事を遮るようにして、室内に妙に低い、独特の声が響いた。
声のした先に目を向ける。
すると其処には、品のいい上品な青い礼服に、たなびく金髪を靡かせた年齢十八歳くらいのいかにも“王子さま”なイケメン……
……いや、
イケメンな“女性”が立っていた。
……宝◯?
『ギャウギャウ!』




