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異世界ドクロは自由がお好き‼  作者: 寿限夢
アルバス大図書館編
58/60

変幻自在の嘘吐き骸骨

 「ぬたぁん♪」


 倒れ込むのと同時に体をひねり、前後を反転させる。

 反転した視界がグルリと回り、うつぶせに倒れ込んだ姿勢から、ブリッジしたような姿勢になった。 

 上を向いた視界から、メイドの驚いた顔が見える。


 ーーいいね、その表情かお。そういうのが見たかったんだよ。


 反転した勢いのまま、下から短剣を突き出す。


 「っ!?」


 突き出された短剣を、メイドが首を振ってギリギリ避けた。

 だが、空振った短剣が髪飾りにぶつかり、まとめられた髪が解ける。


 「ちっ!!」


 メイドが右足で、自分の背中を蹴り上げてきた。

 見るからに重く、鋭い蹴りだ。

 凄まじい速さで繰り出された蹴りが、自分の背中にぶつかる。


 「ぬたぁん♪」


 それを自分は、さらに体を反転させ、まとわりつくようして避けてみせた。

 そこから勢いをつけ斧で一閃、メイドの足を狙うが、メイドが足を退いてコレを避ける。


 ーーけど残念、コレは囮だ。

 

 メイドの意識が足元にいったのを見計らって斧を引き、またブリッジの状態になる。

 そこから左手だけを地面に付け、右足でオーバーヘッド気味に上段蹴りを繰り出す。


 “すいはっせんけん”剣の套路とろ

 

 映画などで有名な中国武術“酔拳”の技だ。

 メイドのこめかみに、自分の蹴りがぶつかる。


 「がっ……!?」

 

 「あれぇ? 見切ったんじゃないの?」


 たたら踏むメイドに、わざと嫌味ったらしく挑発しながら、さらに追撃を仕掛ける。

 地面を這うように移動して、転がりながら短剣で足を突き刺しにかかる。

 が、メイドがその場から消え、短剣が空振る。

 だが、それは想定済み。

 だが、すぐさま【魔力感知】で周囲を調べ、現れる位置を特定。

 今いた位置から五メートル後方に、魔力の乱れを見つけた。


 ーー体勢を整えるつもり? あまいよ。


 「ふっ!!」


 特定するのと同時に呼吸を整え、全身の気血を身体に駆け巡らす。

 同時に膝や足首などの関節から力を抜き、全身を脱力させた状態から、自重を活かした歩法を使い、通常の倍の速さで移動する。


 “古武術・縮地法”。


 メイドが現れる位置まで一瞬で距離を詰める。


 「っ!?」


 「疾っ!!」


 正面に現れたメイドに、右手に持った斧を振り下ろす。

 メイドがギリギリで躱し避けるが、それも想定内。


 ぐにゃり。


 避けられるのに合わせて、手首を柔らかくし、腕を液体のようにする。

 振り下ろした斧を持つ腕と、短剣を持つ腕、両方を鞭のようにしならせ、メイドに向けて振り抜く。


 “短兵たんぺい峨眉剣がびけん


 「シュウッ!!」 

 

 「くっ、うっ!!」

 

 メイドが腕を振って防御するが、それを抜けて、短剣と斧がメイドに傷をつけていく。

 先程までと違い、こちらへ反撃してくる事もない。


 ーー思っていた通り、このメイド。初見の技には対応仕切れない!


 防戦一方のメイドを見て、あらためて確信した。

 というのも、戦いが始まる前、チエちゃんが言っていた 『鎧通ヨロイドウし』を使ったという発言。

 そこにまず違和感を覚えた。


 はっきり言ってこの世界での対人戦闘の技術は、お粗末としか言いようがないくらいレベルが低い。

 たまに外で見かける他の冒険者の動きを見ても、やたらと無駄が多いし、武器の扱いにも、どことなく素人くささが見てとれる。

 理由として考えられるのは、魔族が弱体化し、たいした技術が無くても、スキルや魔法の差で簡単に勝てるようになったから。

 そして、魔獣と戦うにあたり、悪魔で'対人'に特化した技術などは、あまり必要ではないからだろう。



 では、そんな中で何故、メイドが『鎧通ヨロイドウし』を使えたのだろうか?

 最初から使えたという線も考えられるが、おそらく違う。

 『鎧通ヨロイドウし』は素手でもかなり接近しなければいけない対人技なのに対し、メイドの戦闘スタイルは、前蹴り回し蹴りなどの蹴り技を主体とした、遠・中距離の格闘型。まったく噛み合わない。

 それに、『鎧通ヨロイドウし』自体、文字通り“鎧を着た人間”に対応するためのかなり高度な対“人”技術な訳だし、他の武術らしい技が失伝しているのに、それだけが残っているのなんて、理屈に合っていない。


 ならば考えられるのは、このメイドが見切った相手の技を模倣・・し、自分の物にする事が出来るという可能性。


 それなら『鎧通ヨロイドウし』を使えたのも、スズちゃんが使ったのを見て覚えたと納得できるし、異常に自分の技見切るが速かったのも、一刀か二刀の違いはあれど、同じエクスカリマの技術を使うポコ君の技を見たからだと説明がつく。


 転移で移動して相手を急襲、相手の技を見切って吸収。

 ヤバくなったら転移で逃げる。

 それがメイドの戦闘スタイル。

 

 ……ぶっちゃけ、かなりの反則技だ。

 格ゲーとかなら使用禁止が出て、次回作では絶対弱体化させられる。

 

 けど、なにも穴がない訳じゃない。

 先にも言ったようにこのメイド、相手の技を見切って攻撃するという性質上、どうしても後手になりやすい。

 ならば、こちらは初見の技で、一気に畳み掛ければいい訳で、自分にはそれが出来る。

 

 フフフフフ、伊達に長い間フリーターしてる訳じゃないんだよ。

 学生時代も含めた二十年以上の時間、古武術やムエタイ、中国拳法やCQCなどの、ありとあらゆる武術を囓りまくった自分の持ち技は、優に百を超える。

 ザ○とは違うのだよ! ○クとは!!


 「……っ!!」


 「シュウッ!」


 「すごい……圧倒してます……!」


 「さすがサヨリ様です! あのメイドが、防戦一方です!!」


 チエちゃんとスズちゃんから、驚きと歓声の声が上がった。

 見れば二人共、既に回復薬で回復したらしく、すぐそばには、回収されたマリアとポコ君が横になっている。

 よしよし、全員回復したみたいだね。

 スズちゃんは折れた左腕にちゃんと添え木してるし、マリアに至っては、鼻ちょうちん出して寝てるし。


 「っ!」


 「おっと!?」

 

 余所見してる隙を狙って、メイドが反撃してきた。

 左の上段蹴り。

 しかも、これまでの蹴りとは違い、鉄棍を振り回すような力強い蹴りじゃなく、しなやかで、絡み付くような素早い蹴り。

 すんでのところで躱すが、そこからさらにしゃがみ込んでからの下段、跳ね上げるような前蹴りなど、今までとは明らかに違う攻撃を、メイドが繰り出してきた。


 ――むぅ、この動き、さっき見せた酔八仙拳の動きに似ている。

 どうやら、速くも見切り始めたみたいだ。

 

 「っとーー」


 繰り出されるメイドの連撃を、太極拳の動きでユラリユラリと受け流し、躱していく。

 さらに追撃で繰り出される旋風蹴りを後方へと飛んで躱し、距離を取った。


 「おや、曲芸はもうお終いですか? 残念ですね。せっかく興が乗ってきましたのに」


 距離をとる自分に、メイドが挑発気味に言ってくる。

 ……ってか、よく強がれるね?

 大きな傷こそまだないけど、胸元とか大きく開いて谷間がコンニチハしてたり、スカートに至っては裂け過ぎて、かなりきわどい事になってたりしてるのに。


 「まさか! そんな訳ないでしょ? でも、いい加減アレだし、そろそろ終わらせようかな?」


 言いながら武器を構え、メイドにあらためて向かい合う。

 まぁ、終わらせるって言っても、正直、このメイドを倒すだけなら一瞬で終わらせられる。

 スキル【腐食劣化】を使えば、触れた瞬間からその部分を中心に、問答無用で腐らせてグズグズに出来るし。

 そうしなかったのは単に、それだけじゃ自分の気が済まないのと、転移や模倣以外、メイドが何かしら隠し持っている事を楽しみ……もとい警戒しての事だったんだけど、ソレもなさそうだし。


 それに、もうメイドはにかかってる。

 これ以上長引かせる理由は、もうないからだ。 


 「疾っ!」


 構えた姿勢から“縮地”を使い、一気にメイドまで駆け抜ける。

 メイドも呼応するように構え、迎撃の姿勢をとる。

 先ほどの焼き増しのように互いの間合いが交錯する。

 その寸前で、


 「邪っ!」


 斧と短剣を、メイドに投げつけた(……)。


 「っ!?」


 メイドの顔に驚きの表情が浮かんだ。

 眼を大きく見開き、飛来する斧と短剣を凝視する。

 そうだろうねぇ、いきなり相手が武器を・・・てたんだから。

 でもそれこそ、自分の罠なのだよ!


 「くっ!」


 メイドが驚きつつも、飛んできた斧と短剣を両手で弾いた。

 弾かれた武器が宙を舞い、地面に落ちる。

 だが、メイドはまだ混乱から立ち直っていない。

 その隙に一気にメイドの懐に飛び込み、両腕で頭を抱え、腹部に膝蹴りを叩き込んだ。


 「くっぅ!?」


 メイドの体がくの字に曲がり、地面からわずかに浮きあがった。

 浮いた時間は、わずか数秒。

 だが、その数秒こそが、絶対の好機。

 浮きあがったその瞬間に、自分はあらかじめ(……)イメージしといた魔法を、発動させた。 


 『【風刃ふうじん裏鎌鼬うらかまいたち】』


 詠唱と共に、自分の両肘から、風の刃が発生する。

 目には見えない、不可視の刃。

 発動と同時にメイドの両肩が斬れ、地面に落ちた。

 そのまま両腕を振り、両足を切り落とす。


 そして――


 ぶつん、


 メイドの首を、切り落とした。


「やった!」


「倒した……!」


 メイドの体が、バラバラと地面に落ちる。

 その様子を見て、スズちゃん達が、歓声をあげた。

 その声を聞いて、自分もゆっくりと残心を解きながら、ホッと一息ついた。


 ……ふぅ、ようやくすっきりした。


 意外と強かったけど、コレでーー


 「……迂闊でした」


 「「「えっ?」」」


 「まさか、あそこで魔法を使うなんて……」


 残心を解いたのもつかの間、すぐ真下から、声が響いた。

 妙に平坦な、機械的な声。

 目線を下に向ける。

 するとそこには今しがたバラバラにしたメイドの生首がーー


 「てっきり、魔法が使えないとばかり思っていました。こんな初歩的なミスをするとは、私とした事が、詰めがあまい……」


 「「「……」」」


 「ん? 何ですか、人の顔をじろじろ見て」


 「「「……」」」


 「「「……っ!!?」」」


 「「「喋ったぁぁぁっーーー!!!?」」」


 


 




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